文献情報
文献番号
202208037A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線療法の提供体制構築に資する研究
課題番号
21EA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大西 洋(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部医学域放射線医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 霜村 康平(京都医療科学大学 医療科学部 放射線技術学科)
- 岡本 裕之(国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
- 古平 毅(愛知県がんセンター中央病院 放射線治療部)
- 内田 伸恵(東京都済生会中央病院 放射線治療科)
- 宇野 隆(千葉大学 医学研究院)
- 大野 達也(群馬大学)
- 櫻井 英幸(筑波大学人間総合科学研究科)
- 高橋 健夫(埼玉医科大学 医学部)
- 生島 仁史(徳島大学 医歯薬学研究部)
- 東 達也(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部)
- 荒尾 晴惠(大阪大学大学院医学系研究科)
- 草間 朋子(大分県立看護科学大学)
- 井垣 浩(国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
- 溝脇 尚志(京都大学 大学院医学研究科)
- 永田 靖(広島大学 大学院医系科学研究科 放射線腫瘍学)
- 中村 和正(浜松医科大学 医学部)
- 絹谷 清剛(金沢大学医薬保健研究域医学系)
- 細野 眞(近畿大学 医学部)
- 谷 謙甫(ユーロメディテック株式会社 医学物理室)
- 河原 ノリエ(東京大学先端科学技術研究センター 「総合癌研究国際戦略推進」寄付研究部門)
- 茂松 直之(慶應義塾大学医学部 放射線科学教室)
- 篠原 亮次(山梨大学大学院 総合研究部附属 出生コホート研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,368,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急速な高齢化が進む日本のがん治療において、QOL重視と治療方法の自己決定の潮流も相まって、低侵襲で臓器の機能と携帯温存が可能な放射線療法の重要性が増している。近年放射線療法は高度化が進み、コンピュータ制御による強度変調放射線治療、定位放射線治療等が発展普及し、さらに陽子・炭素を用いた陽子線治療、重粒子線治療も保険適応拡大され、2021年にはホウ素中性子捕捉療法も保険収載された。核医学治療は従来のβ線薬剤に加え、新たにα線薬剤が保険収載された。密封小線源治療も新たなデバイスや治療計画の進歩により高精度化が進んでいる。
一方、高度な照射技術の専門性から放射線治療専門医、核医学専門医、診療放射線技師、医学物理士、放射線療法認定看護師などの不足と地域遍在性等が問題化している。2017年第3期がん対策推進基本計画では「標準的な放射線療法の提供体制の均てん化、高度な放射線療法の都道府県を越えた連携体制や医学物理士等の必要な人材のあり方」を取り組むべき課題とされているが、実際には本課題は十分に進んでいないのが現状である。そこで、本研究では以下の内容を目的とした。
1)第3期がん対策推進基本計画に沿った「標準的な放射線療法の提供体制の均てん化」を進めるための適切な方策を提案する。
2)強度変調放射線治療、定位放射線治療、陽子線治療、重粒子線治療、ホウ素中性子捕捉療法、密封小線源治療、核医学治療などの「高度な放射線療法の都道府県を越えた連携体制や医学物理士等の必要な人材」育成のための適切な方策を提案する。
一方、高度な照射技術の専門性から放射線治療専門医、核医学専門医、診療放射線技師、医学物理士、放射線療法認定看護師などの不足と地域遍在性等が問題化している。2017年第3期がん対策推進基本計画では「標準的な放射線療法の提供体制の均てん化、高度な放射線療法の都道府県を越えた連携体制や医学物理士等の必要な人材のあり方」を取り組むべき課題とされているが、実際には本課題は十分に進んでいないのが現状である。そこで、本研究では以下の内容を目的とした。
1)第3期がん対策推進基本計画に沿った「標準的な放射線療法の提供体制の均てん化」を進めるための適切な方策を提案する。
2)強度変調放射線治療、定位放射線治療、陽子線治療、重粒子線治療、ホウ素中性子捕捉療法、密封小線源治療、核医学治療などの「高度な放射線療法の都道府県を越えた連携体制や医学物理士等の必要な人材」育成のための適切な方策を提案する。
研究方法
日本放射線腫瘍学会が中心となり、各種治療法を推進する学会や日本診療放射線技師会、日本医学物理士会、日本看護協会と連携して、令和3年度に調査内容と方法を検討した各種アンケート(患者数、受療状況、待機状況、対応している人材等の現状把握、均てん化、適切な連携体制や機器配置、人材育成、安全管理などについて)を令和4年度に実施・分析し、本研究班で議論した。会議や議論は、コロナ禍のためすべてリモート(令和4年度は合計3回の全体会議とメール会議)にて行った。
結果と考察
結果
多岐にわたる研究項目があるため、個別の結果はそれぞれの分担研究者・研究協力者の報告書を参照されたい。
結果の一部(放射線治療施設の機器やスタッフの要件や、「治療方針について患者と共に考える体制(Shared decision makingの概念の実施)」の導入など)は、2022年8月に公示された「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」に反映された。また令和6年診療報酬改定に向けた医療技術評価提案書の基礎資料として活用される予定である。
考察
日本では、がん患者に対する放射線治療の提供率が諸外国より低いが、その原因として、医師と患者双方における放射線治療の知識の不足が挙げられる。医師に関しては医学教育や国家試験における放射線治療分野のウエイトを増やすことが課題であり、患者に関しては学会による広報とともに、患者団体による啓蒙活動など、一般社会での認知向上と、治療法選択の際に放射線治療が候補に挙げらるような適切な情報提供が望まれる。
粒子線治療やホウ素中性子捕捉療法が十分に普及するためには、保険適応の拡大や適切な施設配置といった将来的な課題がある。一方で、既に成熟した技術である強度変調放射線治療の普及が立ち遅れているのは大きな問題である。診療報酬上の施設要件の制限もあるが、これを改善するためには、放射線治療医不足を補うための公的な放射線治療計画支援者によるタスクシフトの導入と、施設間の指導や安全と質の担保のための遠隔放射線治療計画システムの普及が効果的と考えるが、コストやセキュリティの問題が未解決で、今後の課題である。ますます高齢化の進む日本において、低侵襲ながん治療の理解と十分な提供体制の構築は喫緊の課題である。
多岐にわたる研究項目があるため、個別の結果はそれぞれの分担研究者・研究協力者の報告書を参照されたい。
結果の一部(放射線治療施設の機器やスタッフの要件や、「治療方針について患者と共に考える体制(Shared decision makingの概念の実施)」の導入など)は、2022年8月に公示された「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」に反映された。また令和6年診療報酬改定に向けた医療技術評価提案書の基礎資料として活用される予定である。
考察
日本では、がん患者に対する放射線治療の提供率が諸外国より低いが、その原因として、医師と患者双方における放射線治療の知識の不足が挙げられる。医師に関しては医学教育や国家試験における放射線治療分野のウエイトを増やすことが課題であり、患者に関しては学会による広報とともに、患者団体による啓蒙活動など、一般社会での認知向上と、治療法選択の際に放射線治療が候補に挙げらるような適切な情報提供が望まれる。
粒子線治療やホウ素中性子捕捉療法が十分に普及するためには、保険適応の拡大や適切な施設配置といった将来的な課題がある。一方で、既に成熟した技術である強度変調放射線治療の普及が立ち遅れているのは大きな問題である。診療報酬上の施設要件の制限もあるが、これを改善するためには、放射線治療医不足を補うための公的な放射線治療計画支援者によるタスクシフトの導入と、施設間の指導や安全と質の担保のための遠隔放射線治療計画システムの普及が効果的と考えるが、コストやセキュリティの問題が未解決で、今後の課題である。ますます高齢化の進む日本において、低侵襲ながん治療の理解と十分な提供体制の構築は喫緊の課題である。
結論
高齢化の進む日本におけるがん診療を支えるために、低侵襲な放射線治療の適切な普及とその提供体制構築は非常に重要である。放射線治療の提供体制構築に資する研究」として、日本放射線腫瘍学会が中心となり、各治療法を推進する各学会や診療放射線技師会、医学物理士会、看護協会とも連携して研究体制を構築し、研究を進めてきた。その中で、均てん化や専門職の偏在などの状況や患者側の視点での放射線治療提供の課題などについて各種アンケートを行い、現状について集計、解析を行った結果、様々な放射線治療技術別に実態と課題が明らかになり、適切な放射線治療の提供体制の脆弱性が示された。
本研究によって明らかになった諸問題については、それを解決するための手段や戦略の構築については検討や実施が不十分であり、今後、これからの課題を解決するための具体的な手法やロードマップの検討が必要となるため、今後の継続課題とする。
本研究によって明らかになった諸問題については、それを解決するための手段や戦略の構築については検討や実施が不十分であり、今後、これからの課題を解決するための具体的な手法やロードマップの検討が必要となるため、今後の継続課題とする。
公開日・更新日
公開日
2023-07-04
更新日
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