がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202208036A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究
課題番号
21EA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(青森県立中央病院)
  • 佐川 元保(東北医科薬科大学 医学部)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学 医学部 産婦人科学)
  • 松田 一夫(福井県健康管理協会・県民健康センター)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院 乳腺外科)
  • 中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
  • 加藤 勝章(宮城県対がん協会がん検診センター)
  • 祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 小川 俊夫(学校法人常翔学園 摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 立道 昌幸(東海大学医学部)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院予防医学センタ-)
  • 森定 徹(慶應義塾大学 医学部)
  • 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター国際連携研究部)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 町井 涼子(国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援部検診実施管理支援室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
住民検診においては、これまでの住民検診の精度管理体制を見直し、チェックリストおよびプロセス指標の改定を検討する。また、地域保健・健康増進事業報告の項目や利活用法をわかりやすく整理する。職域検診においては、平成30年にとりまとめられた「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の精度管理に関する指標を見直し、実施主体である保険者や事業者の実情を踏まえた改定を提案する。さらに、レセプト情報を用いたこれまでの検討をもとに、がん検診に関するデータの利活用を検討する。
研究方法
〇住民検診
1. 住民検診における精度管理体制の検討
がん検診の精度管理は、「がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究」(平成30年~令和2年度、代表者:高橋宏和)においてこれまで検討されてきたが、精度管理の指標となるチェックリスト実施率やプロセス指標のモニタリングおよび評価・改善への取組を継続することにより、その体制を整備している。本研究では、これまでの検討を継続しつつ、実施主体となる自治体が受診者に対してより適切な受診行動を提供できる方策を、また不利益よりも利益が上回る検診を提供できるような方策を検討する。
2. 地域保健・健康増進事業報告の項目および利活用法の検討
地域保健・健康増進事業報告は、毎年市区町村から都道府県を通じて国に報告され、がん検診などの現状を把握し、適切な対策を検討するための資料となるが、項目が多く複雑であるなど問題点が指摘されていることから、簡素化することががん検診のあり方に関する検討会において求められている。また、自治体における利活用が進んでいないことから、わかりやすい利活用法が望まれている。本研究では、これらに対する解決策を検討し、自治体の精度管理機能の向上を目指す。
上記の検討は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で推奨されている、5つのがん種の検診に精通している分担研究者を中心に実施する。具体的な役割は次の通りとする。(胃がん:加藤、大腸がん:斎藤・松田、肺がん:佐川・中山、子宮頸がん:青木・森定、乳がん:笠原、アセスメント:細野、マネージメント:町井)
〇職域検診
1. 「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の精度管理に関する検討
職域検診における指針として、平成30年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が示されたが、解釈が難しく利活用は進んでいない。特に、チェックリストやプロセス指標に関する項目については、現状と乖離している箇所が指摘されている。これらの改善点を検討することにより、実施主体となる保険者や事業主の利活用を促し、職域における精度管理の水準が向上するよう検討する。
2. レセプト情報を用いたがん検診に関するデータの利活用に関する検討
がん検診の精度管理が整っている欧州の国などでは、がん検診に関するデータは一元管理され、即時性が高く、有事における対応や研究への利活用が進んでいる。日本では、がん検診データは主にそれぞれの実施主体が管理していることに加え、個人情報保護の観点などからその運用は限定的である。一方で、レセプト情報によるがん患者の特定などにより、職域におけるがん検診の精度管理への応用が期待されている。本研究では、レセプト情報のがん検診への活用に関するこれまでの検討を踏まえ、妥当性の評価や具体的な利用法を協力保険者において実施し、実装化に向けた検討を行う。
上記の検討は、レセプト情報のがん検診への利活用に精通している分担研究者(祖父江、小川、立道、雑賀)を中心に実施する。具体的な役割は次の通りとする。(抽出ロジックの検討:小川・祖父江、妥当性検討:小川・祖父江・立道・雑賀)
結果と考察
班会議の議論において、平成4年度はがん対策推進基本計画の改定時期となったため、今後の日本におけるがん検診の提供体制の課題が多く取り上げられた。がん検診による死亡率減少効果を高めるために、組織型検診に向けた整備が必要であり、現状では乖離の大きい住民検診と職域検診の統合に向けた議論は引き続き検討する必要がある。また、職域検診と住民検診の連携による、受診しやすい体制の構築や職域におけるがん検診に関するマニュアルの周知および、医学生教育・医師会教育プログラム・産業医教育におけるがん検診教育の導入・拡充についても、関連学会・団体などと連携して取り組む必要がある。
結論
第4期がん対策推進基本計画においては、がん検診の精度管理はその充実が掲げられている。来年度は引き続き専門家や関係者の多くの意見を集約し、より良い体制整備などに関して検討し、成果については適宜がん検診のあり方に関する検討会などに報告する 。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202208036Z