文献情報
文献番号
200908018A
報告書区分
総括
研究課題名
レチノイド関連化合物の消化管免疫疾患への治療応用
課題番号
H21-政策創薬・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
土肥 多惠子(国立国際医療研究センター研究所 肝炎免疫研究センター 消化器疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
- 首藤紘一(財団法人乙卯研究所)
- 日比 紀文(應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,739,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究はAm80をはじめとする合成レチノイドの炎症性腸疾患をはじめとする免疫疾患への応用を促進することを目的としている。研究期間中の目標は、1)ヒト免疫系細胞へAM80の作用の解明、2)消化管上皮への作用の解析、3)投与方法の検討、4)Am80以外の合成レチノイドで抗炎症作用を持つ化合物の合成、探索とその効果の検証である。
研究方法
1)健常人由来の末梢血CD14陽性単球を (GM-CSF)とIL-4 を用いて培養し樹状細胞(DC) を分化誘導する系において、レチノイド化合物であるAm80の与える影響につき検討した。2)Am80を腹腔内投与したマウスにγ線を全身照射し、回腸、空腸、大腸の傷害を非投与群と比較した。3)自己免疫疾患モデルNODマウスを用いてAm80の投与法についての検討を行った。4)Am80以外の抗炎症作用を持つ合成レチノイドを探索するため、ケモカイン受容体からのシグナル時のCaイオン流入阻害活性を測定した。
結果と考察
1) 健常人の末梢血単球由来を樹状細胞に分化させる過程でAm80を添加しておくと、通常の炎症惹起性の樹状細胞とは異なり、炎症抑制性マクロファージに類似した性質の細胞へと分化した。単球系細胞の過剰免疫反応が病態に深く関与するクローン病におけるAm80の有用性を示唆する成績であり、次年度以降も、in vitro, ex vivoの研究を続行する。2) Am80投与群の小腸で対照群に比べて分裂細胞数が多く、粘膜保護作用のあることが明らかとなった。3)Am80の慢性疾患への投与方法に関してのデータがなかったため長期あるいは慢性の自己免疫疾患モデルでのクローン病治療のための投与計画のための動物試験をすすめた。4)レチノイド関連化合物ライブラリーのスクリーニングの結果、8種の候補化合物を得ており、その作用機序を詳細に検討中である。
結論
1)合成レチノイドAm80は消化管粘膜保護作用を有していた。抗炎症作用を有する可能性のある新規候補化合物8種を得た。2)投与計画を判断するためNODマウスを用いた投与法の検討をすすめ、臨床における投与計画に考慮すべき結果を得た。3)AM80存在下で分化誘導されたヒト樹状細胞はLPS刺激時にIL-12低産生であり、またナイーブT細胞をTh1に誘導する能力も抑制されていた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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