文献情報
文献番号
200908017A
報告書区分
総括
研究課題名
人工赤血球の臨床応用を目指した至適投与法の策定とGMP製造技術の確立
課題番号
H21-政策創薬・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堀之内 宏久(慶應義塾大学医学部 外科)
研究分担者(所属機関)
- 小林 紘一(慶應義塾大学 医学部 )
- 土田 英俊(早稲田大学理工学術院 総合研究所)
- 高折 益彦(東宝塚さとう病院)
- 池田 久實(北海道赤十字 血液センター)
- 小田切 優樹(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
- 高野 久輝(ニプロ㈱ 総合研究所)
- 甲斐 俊哉(ニプロ㈱ 医薬品研究所)
- 酒井 宏水(早稲田大学理工学術院 総合研究所)
- 大鈴 文孝(防衛医科大学校 循環器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
28,042,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヘモグロビン小胞体(以下HbVと記す)の臨床応用を目指し、投与の至適条件の検討ならびに、GMP製造技術を確立することを目的とした。
研究方法
生体適合性評価では①挫滅症候群に対する投与効果、②持続出血時の大量・急速投与の安全性と効果、③HbV投与による免疫抑制機序の解明、④肝機能障害時のHbVの体内動態の検討、⑤皮弁内の虚血部位の創傷治癒の検討、⑥豚における疑似アレルギー反応の評価、⑦虚血心筋の保護回復効果について検討した。物性面では⑧臨床検体中の電解質測定への影響、⑨水溶性高分子溶液中でのHbVの分散状態、⑩微小管内のHbVの配位子反応を解析した。製造法について、⑪β-プロピオラクトン(BPL)を用いる製剤の無菌化と、⑫製造試料の脂質成分の分析法を検討した。
結果と考察
生体適合性について、①挫滅症候群に対し安全に投与可能、②HbVの急速輸液、大量輸液が安全で蘇生効果あり。③HbV投与により惹起される免疫抑制担当細胞を特定。またT細胞増殖抑制にはiNOS、Arginaseが関与。④ HbVのクリアランスは肝障害の程度と負の相関、AST値がHbVの代謝を予測。⑤皮弁モデルへの投与で、創傷治癒促進効果を認めた。⑥ HbVと同構造の空小胞体は、ブタに対する疑似アレルギー反応が従来型より低減。⑦虚血心筋の機能回復はnitroso-redox balanceの破綻を改善するためと考えた。物性面では、⑧ドライケミストリー法でHbVが40%混合でも電解質濃度が測定可能。⑨水溶性高分子の排除体積の総和が溶液全体の体積を超えるとHbVは溶液中で凝集。⑩HbVの配位子反応速度は、Hbよりも遅く赤血球と同等であった。製造法については、⑪HbVの無菌化に対するBPLの効果をHb溶液で検証、殺菌能を確認。⑫試料製造過程の脂質構成の分析法を開発した。
結論
HbVの生体適合性試験では挫滅合併例への投与、急速輸液、大量投与の安全性、HbV投与後の免疫抑制状態、肝代謝異常におけるHbVの血中及び臓器中のクリアランス、ブタでの反応、虚血臓器(心、皮膚)での効果を検討し、得られた知見は臨床応用の際に有用と考える。物性面では、臨床検体の測定、配位子反応、水溶性高分子溶液との相互作用が解明され、細胞型HbVの詳細な特徴が明らかになった。また製造における滅菌法の見通しがつき、GMP製造へ向けて重要なステップとなった。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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