文献情報
文献番号
200908016A
報告書区分
総括
研究課題名
H12(ADP)リポソームの人工血小板としての前臨床評価(効力と安全性)
課題番号
H21-政策創薬・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法センター)
研究分担者(所属機関)
- 池田 康夫(早稲田大学理工学術院)
- 武岡 真司(早稲田大学理工学術院 )
- 木下 学(防衛医科大学校)
- 丸山 徹(熊本大学薬学部)
- 鈴木 克彦(早稲田大学スポーツ科学術院)
- 後藤 信哉(東海大学医学部)
- 村田 満(慶應義塾大学医学部 )
- 鈴木 英紀(東京都臨床医学総合研究所)
- 鎌田 徹治(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
29,999,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
H12(ADP)リポソーム(フィブリノゲンのγ鎖C末端アミノ酸配列(HHLGGAKQAGDV: H12)をその表面に担持させ、アデノシン5’-二リン酸(ADP)を内包させたリン脂質小胞体)の効力と安全性について、当該3カ年研究は、従来の輸血/血栓止血学的アプローチに加え、侵襲防御学、薬物動態学、免疫学等の見地から、集学的なマクロ評価を行い、人工血小板としての適格性を検討する.
研究方法
ブスルファン惹起血小板減少症(ラット、ウサギ)の出血時間を指標に、リポソームの止血機能と投与量の関連を評価した.ADPに加え5HTを内包化し、止血機能の増強効果を検討した.アスピリンによる血小板機能異常症をラットで、大量出血に合併する希釈性血小板減少症モデルをウサギで検討した。リポソーム投与で惹起される抗体をラットで検討した.リポソームの炎症系への作用を、ヒト好中球の活性化酸素産生能(ルミノール反応)等を指標にin vitroで評価した.リポソームの血栓症誘発作用を塩化鉄惹起マウス精巣動脈血栓症モデルで評価した。リポソームを投与されたラットやウサギの臨床検査値を測定した.遺伝子変異体を用い、2価イオン依存性の活性型αIIbβ3インテグリンの構造解析を行った.
結果と考察
リポソームには至適用量が存在し、それ以上の投与量ではむしろ効果は減弱した.5HTの共封入によりリポソームの機能強化が達成された.人工血小板の適応である血小板機能異常症と大量出血に合併する希釈性血小板減少症の動物モデルが構築できた.リポソームの膜脂質成分へのIg M抗体が惹起され、薬剤の連続投与によるクリアランスの亢進が危惧される.好中球への直接作用や活性化酸素産生能への影響は認められず、動脈血栓症の増強作用もみられなかった.単回投与で血清脂質濃度の一過性の上昇以外臨床検査値の異常は認めなかった.H12の標的となる活性型αIIbβ3インテグリンへの構造変化はβ鎖の2価イオン結合ドメインで制御されていることが明らかとなった.
結論
3年計画の1年目の研究で、種々のin vitro in vivo評価系を用いて、H12(ADP)リポソームの人工血小板としての適格性を、効力と安全性の面から評価することができた.また、ニーズの高い適応症(血小板機能異常症や大量出血に合併した希釈性血小板減少症)を評価するうえで不可欠な動物モデルが設定された.
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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