文献情報
文献番号
202208030A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がんの子どもに対する充実した在宅医療体制整備のための研究
課題番号
21EA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大隅 朋生(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
- 前田 浩利(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野)
- 紅谷 浩之(オレンジホームケアクリニック)
- 長 祐子(松川 祐子)(北海道大学病院 小児科)
- 名古屋 祐子(宮城大学 看護学群)
- 荒川 ゆうき(埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科)
- 荒川 歩(国立がん研究センター 中央病院小児腫瘍科)
- 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科)
- 横須賀 とも子(神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科)
- 倉田 敬(長野県立こども病院 血液腫瘍科)
- 岩本 彰太郎(三重大学医学部附属病院周産期母子センター)
- 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科)
- 古賀 友紀(九州大学医学部小児科)
- 岡本 康裕(鹿児島大学医歯学総合研究科小児科学分野)
- 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
- 余谷 暢之(国立成育医療研究センター総合診療部緩和ケア科)
- 中村 知夫(国立成育医療研究センタ- 周産期診療部 新生児科)
- 西川 英里(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院 小児がん治療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児がん在宅診療の主な役割は終末期緩和ケアである。我々は令和元年度よりがん対策推進総合研究事業の支援を受け、「小児がん患者に対する在宅医療の実態とあり方に関する研究」を実施した。本研究班の目的は第1に上記の研究班の調査を継続・解析し、さらに新規研究も加えて発展させ、公表することである。第2に、そこから得られた課題を議論し、必要あれば統合した上でその解決法あるいは改善法についてのモデルケースを医療者に対して共有することである。第3に、小児がん終末期の患者、家族に対して、療養場所の選択に関する意思決定支援につながる情報提供を行うため資料作成をすることである。
研究方法
1.終末期調査の完結
【終末期の現状調査】
小児がん診療施設から600例以上の死亡症例について、療養場所の選択肢が提示されたか、死亡場所、死亡前の医療処置などの情報が収集された。日本小児科学会、日本緩和医療学会での成果発表を行い、その後論文化を進めている。
【在宅移行の障壁調査】
小児がん診療医師200名以上から、在宅移行を含めた終末期の障壁に関する情報が収集された。日本小児科学会で成果発表を行なっており、論文化を進めている。
2. 分担研究の継続・発展
【在宅輸血】
小児では終末期に輸血需要がある場合が多く在宅移行の障壁となる。前研究で小児がん診療病院を対象に在宅輸血の全国調査を実施した。赤血球は指針が整備されそれに添った好事例が存在するが、血小板は指針などがなく各施設が独自に工夫して実践していることがわかった。本研究では日本赤十字社から得られた在宅輸血実施施設を対象とした血小板輸血に関する調査研究を行った。日本血液学会および日本小児血液・がん学会で成果発表を行い、論文化を進めている
【病院と家以外の看取り場所】
病院で最期まで過ごす場合、療養環境の改善は本研究の目標である選択肢が公正に提示されることにつながる。前研究で、小児緩和ケア病室に関する全国調査を実施し、好事例を収集した。本研究では好事例施設を対象に二次調査を実施し、運用や問題点などについての情報収集を行った。日本血液学会での成果発表を行い、論文化を進めている。
【社会資源の情報共有】
在宅移行を検討する際、地域で利用可能な社会資源を探しアクセスすることが最初のステップとなる。その役割は医療ソーシャルワーカー(MSW)が主体となることが多い。前研究で分担施設のMSWを中心に在宅移行のTipsや悩みなどを共有し議論するための講演会を開催し多数の多職種が参加し活発な意見交換を行った。本研究では全国の施設で使用可能なパンフレットを作成した。小児を対象としたパンフレットも作成した。それらの試験運用を行ない、ワークショップ形式でその有用性や改善点について議論を進めていく予定である。
3.新規研究
【多職種調査】
小児がん終末期診療および在宅移行には医師以外の多職種の子どもと家族への関わりが不可欠であり、彼らが実践している工夫や感じている課題や悩みを収集することは非常に重要と考える。一方でその職種は病院ごとに異なるため、職種横断的なアプローチが求められる。2022年に在宅移行に関わるスタッフを対象としたインタビュー調査を行った。質的解析を行い、学会報告、論文化を進めている。
【在宅死亡での病理解剖】
在宅で看取りとなった子どもの遺族が病理解剖を希望される場合があるが、様々な困難がありその実現は難しい。遺族は、医学の発展へ貢献したいという思いや、子どもを苦しめたがんを取り除きたいという思いなどをもつ。在宅死亡でも病理解剖を受ける選択肢があれば、そのような遺族の思いが叶えられるだけでなく、在宅医療の評価そして質の向上につながる可能性がある。2021年2月に、成人においてすでに在宅死亡後の病理解剖をおこなっている医師の講演や、在宅死亡後に病理解剖を受けたケースの遺族インタビューを紹介した。2022年度には首都圏でモデルケースとなる仕組みを作るために、研究として在宅看取り後の病理解剖を行う準備をすすめた。2023年に研究が開始される予定である。
【終末期の現状調査】
小児がん診療施設から600例以上の死亡症例について、療養場所の選択肢が提示されたか、死亡場所、死亡前の医療処置などの情報が収集された。日本小児科学会、日本緩和医療学会での成果発表を行い、その後論文化を進めている。
【在宅移行の障壁調査】
小児がん診療医師200名以上から、在宅移行を含めた終末期の障壁に関する情報が収集された。日本小児科学会で成果発表を行なっており、論文化を進めている。
2. 分担研究の継続・発展
【在宅輸血】
小児では終末期に輸血需要がある場合が多く在宅移行の障壁となる。前研究で小児がん診療病院を対象に在宅輸血の全国調査を実施した。赤血球は指針が整備されそれに添った好事例が存在するが、血小板は指針などがなく各施設が独自に工夫して実践していることがわかった。本研究では日本赤十字社から得られた在宅輸血実施施設を対象とした血小板輸血に関する調査研究を行った。日本血液学会および日本小児血液・がん学会で成果発表を行い、論文化を進めている
【病院と家以外の看取り場所】
病院で最期まで過ごす場合、療養環境の改善は本研究の目標である選択肢が公正に提示されることにつながる。前研究で、小児緩和ケア病室に関する全国調査を実施し、好事例を収集した。本研究では好事例施設を対象に二次調査を実施し、運用や問題点などについての情報収集を行った。日本血液学会での成果発表を行い、論文化を進めている。
【社会資源の情報共有】
在宅移行を検討する際、地域で利用可能な社会資源を探しアクセスすることが最初のステップとなる。その役割は医療ソーシャルワーカー(MSW)が主体となることが多い。前研究で分担施設のMSWを中心に在宅移行のTipsや悩みなどを共有し議論するための講演会を開催し多数の多職種が参加し活発な意見交換を行った。本研究では全国の施設で使用可能なパンフレットを作成した。小児を対象としたパンフレットも作成した。それらの試験運用を行ない、ワークショップ形式でその有用性や改善点について議論を進めていく予定である。
3.新規研究
【多職種調査】
小児がん終末期診療および在宅移行には医師以外の多職種の子どもと家族への関わりが不可欠であり、彼らが実践している工夫や感じている課題や悩みを収集することは非常に重要と考える。一方でその職種は病院ごとに異なるため、職種横断的なアプローチが求められる。2022年に在宅移行に関わるスタッフを対象としたインタビュー調査を行った。質的解析を行い、学会報告、論文化を進めている。
【在宅死亡での病理解剖】
在宅で看取りとなった子どもの遺族が病理解剖を希望される場合があるが、様々な困難がありその実現は難しい。遺族は、医学の発展へ貢献したいという思いや、子どもを苦しめたがんを取り除きたいという思いなどをもつ。在宅死亡でも病理解剖を受ける選択肢があれば、そのような遺族の思いが叶えられるだけでなく、在宅医療の評価そして質の向上につながる可能性がある。2021年2月に、成人においてすでに在宅死亡後の病理解剖をおこなっている医師の講演や、在宅死亡後に病理解剖を受けたケースの遺族インタビューを紹介した。2022年度には首都圏でモデルケースとなる仕組みを作るために、研究として在宅看取り後の病理解剖を行う準備をすすめた。2023年に研究が開始される予定である。
結果と考察
方法の項に合わせて記載
結論
前研究を引き継いだ本研究により、継続的かつ、職種横断的に小児がん在宅移行に関する医学的、社会的な課題が明らかとなった。さらに講演会や調査を通じて、小児がん在宅移行に関わる多職種のネットワークが構築され、地理的条件や利用可能なリソースを含めた環境の異なる全国の小児がん診療施設間で情報共有がなされ、終末期医療あるいは在宅移行の啓蒙につながった。さらに、患者および家族に対して適切に情報提供を行うことで、終末期の意思決定の一助となることが期待される。本研究を通じて、小児がんの終末期に対する在宅医療のモデルが構築され、我が国の在宅医療の発展普及に貢献するだけでなく、ライフステージに応じた適切な医療の提供につながる。
公開日・更新日
公開日
2023-07-04
更新日
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