がん治療のどの時期にでも患者・家族や医療介護機関からアクセス可能な緩和ケアリソース情報を有する地域緩和ケアネットワークシステムの構築

文献情報

文献番号
202208027A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療のどの時期にでも患者・家族や医療介護機関からアクセス可能な緩和ケアリソース情報を有する地域緩和ケアネットワークシステムの構築
課題番号
20EA1028
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
下山 理史(愛知県がんセンター 緩和ケア部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉下 明隆(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 長谷川 貴昭(名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神•認知•行動医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療中の在宅緩和ケアに関しては未だ不十分であり、治療を受けつつ安心して暮らすためには地域格差が大きい。
本研究では、
(1) がん経験者の地域緩和ケアニーズを明らかにすること。
(2) 患者・家族側の生活に密着したニーズが十分取り入れられた情報共有体制(ホームページ)を構築すること。
(3) 進行がん患者へのがん治療と在宅緩和ケアの統合の質指標(QI)を作成すること。
を目的とし研究を行った。
研究方法
(1) インターネット調査結果を基に、R4年度は必要な情報を同定し、(2)にて構築するホームページの内容に活かした。
(2) 構築したホームページに(1)の内容を加え、地域に暮らすがん患者のニーズに応じた地域緩和ケアに関連する情報提供および、患者を支援する医療介護関係者の情報共有ページを構築した。
(3) R3年に行ったスコーピング・レビューに基づいて、進行がん患者へのがん治療と在宅緩和ケアの統合の質指標(QI)の同定を行った。
(4) アドバンス・ケア・プランニング(ACP)についてのグループワークが開催され、そこで出された意見について、大筋を短時間で把握できることを目的とした質的な分析を行った。
結果と考察
研究では、インターネット調査を通じてがん経験者の地域緩和ケアニーズを明らかにし、それをホームページの構築に活かした。患者のニーズに応じた情報提供や医療介護関係者の情報共有ページを含むホームページを作成した。

さらに、進行がん患者への治療と在宅緩和ケアの統合に関する質指標を作成するため、スコーピングレビューや専門家パネルを活用した。また、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)についてのグループワークを行い、患者の希望や思いが尊重されることを重視した。

フィールドワークは新型コロナ感染症の制約下で行われましたが、インターネット調査によりニーズを把握した。その結果、地域における緩和ケアニーズが以前の研究と酷似していることが明らかになった。しかし、患者のニーズはあまり変わらず、医療者の役割が重要であることも示された。

ホームページの構築により、地域緩和ケアに関する情報を提供し、医療者の困りごとにも対応できる枠組みを作った。これにより、地域を支える医療者が患者を支援するための情報ハブが提供され、患者の支援の質が向上することが期待される。

また、進行がん患者への治療と在宅緩和ケアの統合に関する質指標の同定も行った。この質指標は、緩和ケアの質を向上させるための基準として活用されることが期待される。具体的には、患者の意思決定を尊重し、症状管理や心理的支援の提供、家族へのサポートなど、緩和ケアの要素を包括的に評価する指標が提案された。

さらに、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の重要性も強調された。ACPは、患者が自身の望むケアや治療の方向性を事前に計画し、希望に沿った在宅緩和ケアを受けられるようにするためのプロセスである。研究では、ACPの実施によって患者と家族の負担が軽減され、より個別化されたケアが実現できることが示された。
結論
本研究は在宅緩和ケアにおける地域格差の解消とがん経験者のニーズの明確化を目指し、インターネット調査やホームページの構築、質指標の作成などの手法を活用した。これにより、患者と家族の生活に密着した情報共有や治療と在宅緩和ケアの統合の質の向上が期待される。今後は、提案された枠組みや指標を実際の医療現場に適用し、地域格差の是正とがん患者の生活の質の向上に貢献することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208027B
報告書区分
総合
研究課題名
がん治療のどの時期にでも患者・家族や医療介護機関からアクセス可能な緩和ケアリソース情報を有する地域緩和ケアネットワークシステムの構築
課題番号
20EA1028
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
下山 理史(愛知県がんセンター 緩和ケア部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 雅志(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援部)
  • 杉下 明隆(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 長谷川 貴昭(名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神•認知•行動医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がんに関してより質の高い在宅医療が提供されるよう、地域における受け入れ態勢に関する実態把握、情報共有、継続的に活用可能な情報共有方法の策定と体制を構築することである。
その具体的内容としては、①行政と協働し、がん診療連携拠点病院にて治療中の患者の緩和ケアリソース共有状況を把握しつつ、ニーズを明らかにし、患者・家族目線重視の緩和ケア相談・検索システムを構築(ICTを活用し行政と連携しつつ情報サービス流通を促進等)すること、②それをもとに地域での連携を行政と一体で退院前カンファレンス時のICT活用等をはじめとする地域緩和ケア相談などにより一層連携を強化し、効果を検証することで持続可能な地域緩和ケアネットワークの充実を図ること、③地域の専門的緩和ケア提供者が適正分配される地域緩和ケアチームを構築すること、であった。
研究方法
令和2年度
1)地域緩和ケアネットワークシステムに関する研究をネットワーク構築を主体に行った
2)在宅緩和ケア導入が遅くならないための研究を医療者インタビュー調査にて行った
3) 在宅緩和ケアに関する相談ができる場に関する研究を相談支援センター等を検索し行った
令和3年度
1)患者家族からアクセス可能なオンライン緩和ケア相談・検索システムの実装については、ネットワーク構築にて行った
2)QI同定に関しては、スコーピングレビューにて行った
3)患者ニーズについては、オンラインでアンケート調査にて行った
令和4年度
(1)令和3年度の研究結果より必要な情報を同定し、(2)にて構築するホームページの内容に活かした。
(2)初年度から構築してきたホームページに(1)の内容を加え、地域緩和ケアに関連する情報および情報共有ページを構築した。
(3)進行がん患者へのがん治療と在宅緩和ケアの統合の質指標(QI)の同定を行った。
結果と考察
 この研究班が活動した3年間は新型コロナ感染症の拡大した3年間に一致しており、十分なフィールドワークは感染対策の下、制限された。その間に構築されたあらたなネット社会における活動形式を利用し、インターネットによるアンケートを行い、ニーズを拾い上げた。その結果、くしくも2012年に報告されたOPTIM研究の際に指摘された地域における緩和ケアニーズと酷似したニーズが同定されたのだが、これはこの10年間の間で地域医療・在宅医療は普及してきたものの、患者のニーズ自体はあまり変わらないという結果を示唆している。
しかし、新たに得られた情報としては、少しでも早いうちにがん医療と地域の緩和ケアリソースにつながるために必要な状態が同定されたことであった。
この結果等を基に、地域の緩和ケアに関する情報を家に居ながらにして得て活用することができるシステムを構築した。これは、今後がん医療だけでなく様々な医療にも応用できる枠組みとして有効なものである。また、同時に医療者の困りごとに対しても同じホームページ上で対応できる枠組みを構築した。これは、地域を支える医療者が安心して患者を引き受け、看取りまで支援するために欠かせない情報ハブであり、このハブを生かすことにより、患者の支援の質はより高まることが期待される。
さらには、進行がん患者へのがん治療と在宅緩和ケアの統合に関連して昨年度行ったスコーピング・レビューに基づきの質指標(QI)の同定も行ったが、これは、このシステムだけでなく、少しでもいつでもどこでも切れ目のない緩和ケアを提供する体制を評価するために欠かせない、世界でも初めての質指標となることが想定されている。残念ながら同定される前に研究期間が終了となってしまったが、今後継続して研究を行い、QIの同定を行う予定である。
また、ホームページ上に反映させるとよい内容として、患者の意向があるが、こちらも研究協力を行った「かごしまACPプロジェクト」の結果をうけ、患者の想いの経時的な推移や変化がわかるような仕組みにすること、地域全体で患者の思いを共有できるツールとすることなどにつき反映することでより患者に役立つホームページになった。
結論
当初計画していた、がん治療のどの時期にでも患者・家族や医療介護機関からアクセス可能な緩和ケアリソース情報を有する地域緩和ケアネットワークシステムは、地域限定ではあるものの構築することができた。またその効果および進行がん患者へのがん治療と在宅緩和ケアの質を評価するためのQIの同定にも取り組んだ。本研究により、今後のがん治療における切れ目ない緩和ケアの提供体制を支援しその質を評価する体制が整った。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病院、在宅などがん治療中の患者がどこにいても緩和ケアを受けられる体制の質を問うためのQIはこれまで存在しなかった。このため本QIが同定された際には、地域緩和ケアの質を評価し、その体制を全国各地域にて構築・改善していくことが可能となりその専門的視点での意味は大きい。
臨床的観点からの成果
患者家族にとって自分に必要な情報がどこを見ればよいのかわからなかった状態から、今回構築したサイトをみれば、①自分に必要な地域緩和ケア情報が明らかになりそこから検索を進めることが可能となる、②患者の病態等を個人情報の保護が担保された電子@連絡帳システムなどを用いることで、地域の医療福祉関係者が共有し、その患者にとって適切な医療・ケアを遅滞せず提供することができる、③地域の緩和ケアに関する困りごとを相談する場が同時に提供されることにより、緩和ケアの質の向上が見込める、といった効果が見込まれる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
地域緩和ケアに関するネットワークの展開は至上命題であったが、そのために必要な検索できるツールやリアルタイムに使用可能なツールが一元化されていなかった。これが一元化されたことにより、行政的にも患者の困りごと、地域緩和ケアのリソース動態などが把握できるようになったことは大きい。
その他のインパクト
本邦ではじめて、地域全体にわたる地域緩和ケア情報及び連絡・相談のサイトが集約されたサイトが構築されたことは大きい。元々の研究予定ではこれが全国展開して実装されるところまでを計画していたが、今後これが現場で浸透して各地域に広がっていくことが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202208027Z