ヒト抗原提示システムの包括的解析に基づくエイズワクチン戦略の再構築

文献情報

文献番号
200908012A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト抗原提示システムの包括的解析に基づくエイズワクチン戦略の再構築
課題番号
H20-政策創薬・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
上野 貴将(国立大学法人 熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 令江(国立大学法人 熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 熊谷 泉(国立大学法人 東北大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
11,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト感染免疫系に関する基盤情報は非常に限られており、エイズワクチン開発の障壁となっている。我々は、ヒトのHIV感染に伴って提示される細胞傷害性T細胞(CTL)抗原の解析を目指して、新たな蛋白化学的アプローチの基盤システム立ち上げを目指した。
研究方法
(1)さまざまな病態にあるHIV感染者から提供していただいた血液検体を用いて、CTLの抗原特異性と抗ウイルス機能を解析した。(2)T細胞レセプター(TCR)の相補性決定領域(CDR)を抗体可変領域断片のフレームワーク領域へ移植する構造分子モデリングを構築するとともに、IgG発現ベクターに組み込む系を構築した。(3)3台の高感度タンデム質量分析計、および付随するnanoレベルのクロマトグラフィー装置を融合的に組み合わせて、ごく微量ペプチドの解析を行った。
結果と考察
(1)日本人HIV感染者の検体を用いて、CTL抗原の経時的変化が、CTLの抗ウイルス活性に与える影響を解析した。その結果、急性期に見られるCTLの方が、慢性期に見られるCTLよりも、抗ウイルス活性に優れていることを見いだした。(2)TCRの相補性決定領域(CDR)を抗体フレームワークに移植したTCRグラフト抗体断片の作製するとともに、IgG化して蛋白質安定性を向上させることができた。(3)高感度定量的質量分析で、スタンダードサンプルにおける最も高感度な最適定量解析条件、およびそれに付随する解析プログラムを設定することができた。
結論
(1)CTLの抗原特異性とCTLの抗ウイルス活性が互いに関連することを明らかとした。(2)TCRグラフティングにより創製した抗体断片をIgG化することにより、抗原特異性を維持したまま、蛋白質としての安定性を向上させることに成功した。(3)少なくともスタンダードペプチドの定量解析において、1-10 att molの感度で検出同定可能であるHIV抗原の高感度定量的同定法の一つを確立した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-