次期がん対策推進基本計画に向けて小児がん拠点病院および連携病院の小児がん医療・支援の質を評価する新たな指標開発のための研究

文献情報

文献番号
202208019A
報告書区分
総括
研究課題名
次期がん対策推進基本計画に向けて小児がん拠点病院および連携病院の小児がん医療・支援の質を評価する新たな指標開発のための研究
課題番号
20EA1020
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 平林 真介(北海道大学病院 小児科)
  • 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座 小児病態学分野)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター 血液腫瘍科)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 後藤 裕明(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 血液・再生医療科)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 高橋 義行(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)
  • 平山 雅浩(三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座小児科学分野)
  • 滝田 順子(京都大学 医学部 小児科)
  • 家原 知子(京都府立医科大学 医学研究科)
  • 澤田 明久(大阪府立母子保健総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 藤崎 弘之(大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 長谷川 大一郎(兵庫県立こども病院 小児がん医療センター血液・腫瘍内科)
  • 川口 浩史(広島大学大学院医系科学研究科小児科学)
  • 川久保 尚徳(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 小児外科学分野)
  • 小川 千登世(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
  • 米田 光宏(大阪市立総合医療センター 小児外科)
  • 井口 晶裕(北海道大学 北海道大学病院 小児科)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 臨床研究センター 臨床研究推進室)
  • 加藤 実穂(国立成育医療研究センター 小児がんセンター小児がんデータ管理科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
この研究の目的は、小児がん拠点病院Quality Indicator(QI)および小児がん連携病院QIを設定し計測することで、日本における小児がん医療の質を評価し、今回得られる小児がん医療の質に関する情報・課題を、次期小児がん拠点病院の指定要件に反映させることを目指す。
研究方法
初年度は、連携病院の診療の質を評価する新たな小児がん連携病院QI指標を検討するために、多職種からなる指標検討ワーキンググループを構成し、連携病院の評価に最適なQI指標を策定することを計画する。同時に従来から運用を開始している小児がん拠点病院QI指標の改訂と測定を行い、課題を抽出する。各ブロック内に診療録管理士による算定ワーキンググループを形成し、適切な算定が行われるようにする。第3年度には、連携病院QIを精度の高いものとし、継続的に測定し、PDCAサイクルをさらに回す。
結果と考察
1)小児がん拠点病院QIの測定
新規指標として「がんリハビリテーション料算定率」を採用し、経年変化が乏しい「急性リンパ性白血病寛解導入療法中の輸血量」は削除した。定義修正は7指標で行った。また、「同種造血幹細胞移植後100日以内における合併症関連死亡率」の算定も行った。2020年指標として合計32指標(構造指標11、過程指標15、結果指標6)を継続選定した。
構造指標としては、小児血液・がん専門医、指導医数の最少施設は2人であり、小児がん認定外科医が0人の施設があり、総数・常勤とも減った施設が散見された。病理専門医0人の施設が解消したが、専門・認定薬剤師0人の施設が3施設あった。緩和医療専門医・指導医は徐々に増えている傾向にあったが、PEACE受講率が低い施設があった。HPS/CLS/こども療養支援士は再び0人の施設が出現した。結果・過程指標として、中央病理診断提出率が比較的低い施設があった。開頭術の手術部位感染率10%台が3施設あり、脳腫瘍摘出後の予定しない再手術では、複数例ある再手術率30%以上の施設が2施設あった。外来化学療法加算は施設差が大きいことが明らかになった。平均在院日数(ALL)は全施設100日以下となり、死亡患者の転院率は増加傾向にあった。卵子(卵巣)保存が大きく増えた施設があった。治験実施数、治験登録患者数は施設差が大きかった。

2)小児がん連携病院QIの測定
拠点病院QIと同じく、「がんリハビリテーション料算定率」を指標に加え、「同種造血幹細胞移植後100日以内における合併症関連死亡率」の算定も行った。構造指標10、過程指標9、結果指標3の合計22指標を選定した。
小児がん連携病院QIに関して、小児がん連携病院での医療は比較的小規模で、構造的に十分ではないことを明らかにし、拠点病院との相違、大学病院・総合病院と小児病院間における、小児がん医療に関わる人員配置の相違を示した。
また、小児がん連携病院類型1層別化に関して、年間新患数20例以上を類型1-Aとした場合、39施設が相当し、小児がん専門医、小児がん認定外科医、専門・認定看護師、緩和医療認定医・専門医・指導医、療養支援担当者の数において1-Aの方が1-Bよりも優っていた。ALL患者の在院日数は1-A、1-B間で有意差を認めなかったが、拠点病院よりも長い傾向にあった。小児がん新入院患者数あたりの死亡率は、拠点、1-A、1-Bで有意差はなかったが、県内発症数が20例未満で1-Bしか存在しない県での連携病院では、2倍程度高く有意差を認めた。診療県の人口から1-Aになり得ない連携病院も存在することが考えられ、今後そのような県に対する何らかの方策が必要であると考えられた。2023年度以降の実際の層別化により、集約化・均てん化の進捗状況に注視する必要がある。
今回の研究で、小児がん拠点病院QIおよび小児がん連携病院QIを設定し継続的に計測することで、日本における小児がん医療の質を評価することが可能となり、小児がん対策の基礎資料となりうると考えられた。
結論
拠点病院に関しては、小児血液・がん専門医数の漸増傾向やHPS/CLS/こども療養支援士の配置など整備の進んだ面が明らかになった。一方、小児がん認定外科医の配置、放射線治療専門医、病理専門医、専門・認定薬剤師の配置、中央病理提出、男性の妊孕性温存の実施など、整備が遅れている部分も明らかになった。
連携病院に関しては、小児がん連携病院での医療は比較的小規模で、構造的に十分ではないことが明らかになり、大学病院・総合病院と小児病院では、小児がん医療に関わる人員配置が大きく異なっていた。今回、診療患者数の違いにより、1-A、1-Bに層別化することの妥当性を検討したが、類型1の中で患者数の少ない施設であっても同等の治療・支援が行われている可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208019B
報告書区分
総合
研究課題名
次期がん対策推進基本計画に向けて小児がん拠点病院および連携病院の小児がん医療・支援の質を評価する新たな指標開発のための研究
課題番号
20EA1020
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 平林 真介(北海道大学病院 小児科)
  • 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座 小児病態学分野)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター 血液腫瘍科)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 後藤 裕明(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 血液・再生医療科)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 高橋 義行(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)
  • 平山 雅浩(三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座小児科学分野)
  • 滝田 順子(京都大学 医学部 小児科)
  • 家原 知子(京都府立医科大学 医学研究科)
  • 澤田 明久(大阪府立母子保健総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 藤崎 弘之(大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 長谷川 大一郎(兵庫県立こども病院 小児がん医療センター血液・腫瘍内科)
  • 川口 浩史(広島大学大学院医系科学研究科小児科学)
  • 小川 千登世(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
  • 米田 光宏(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 井口 晶裕(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 臨床研究センター 臨床研究推進室)
  • 加藤 実穂(国立成育医療研究センター 小児がんセンター小児がんデータ管理科)
  • 井上 雅美(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター )
  • 小阪 嘉之(兵庫県立こども病院)
  • 武本 淳吉(国立大学法人九州大学  大学院医学研究院小児外科学)
  • 川久保 尚徳(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 小児外科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
この研究の目的は、小児がん拠点病院Quality Indicator(QI)および小児がん連携病院QIを設定し計測することで、日本における小児がん医療の質を評価し、今回得られる小児がん医療の質に関する情報・課題を、次期小児がん拠点病院の指定要件に反映させることを目指す。
研究方法
初年度は、連携病院の診療の質を評価する新たな小児がん連携病院QI指標を検討するために、多職種からなる指標検討ワーキンググループを構成し、連携病院の評価に最適なQI指標を策定することを計画する。同時に従来から運用を開始している小児がん拠点病院QI指標の改訂と測定を行い、課題を抽出する。各ブロック内に診療録管理士による算定ワーキンググループを形成し、適切な算定が行われるようにする。第3年度には、連携病院QIを精度の高いものとし、継続的に測定し、PDCAサイクルをさらに回す。
結果と考察
1)小児がん拠点病院QIの測定
新規指標として「がんリハビリテーション料算定率」を採用し、経年変化が乏しい「急性リンパ性白血病寛解導入療法中の輸血量」は削除した。定義修正は7指標で行った。また、「同種造血幹細胞移植後100日以内における合併症関連死亡率」の算定も行った。2020年指標として合計32指標(構造指標11、過程指標15、結果指標6)を継続選定した。
構造指標としては、小児血液・がん専門医、指導医数の最少施設は2人であり、小児がん認定外科医が0人の施設があり、総数・常勤とも減った施設が散見された。病理専門医0人の施設が解消したが、専門・認定薬剤師0人の施設が3施設あった。緩和医療専門医・指導医は徐々に増えている傾向にあったが、PEACE受講率が低い施設があった。HPS/CLS/こども療養支援士は再び0人の施設が出現した。結果・過程指標として、中央病理診断提出率が比較的低い施設があった。開頭術の手術部位感染率10%台が3施設あり、脳腫瘍摘出後の予定しない再手術では、複数例ある再手術率30%以上の施設が2施設あった。外来化学療法加算は施設差が大きいことが明らかになった。平均在院日数(ALL)は全施設100日以下となり、死亡患者の転院率は増加傾向にあった。卵子(卵巣)保存が大きく増えた施設があった。治験実施数、治験登録患者数は施設差が大きかった。

2)小児がん連携病院QIの測定
拠点病院QIと同じく、「がんリハビリテーション料算定率」を指標に加え、「同種造血幹細胞移植後100日以内における合併症関連死亡率」の算定も行った。構造指標10、過程指標9、結果指標3の合計22指標を選定した。
小児がん連携病院QIに関して、小児がん連携病院での医療は比較的小規模で、構造的に十分ではないことを明らかにし、拠点病院との相違、大学病院・総合病院と小児病院間における、小児がん医療に関わる人員配置の相違を示した。
また、小児がん連携病院類型1層別化に関して、年間新患数20例以上を類型1-Aとした場合、39施設が相当し、小児がん専門医、小児がん認定外科医、専門・認定看護師、緩和医療認定医・専門医・指導医、療養支援担当者の数において1-Aの方が1-Bよりも優っていた。ALL患者の在院日数は1-A、1-B間で有意差を認めなかったが、拠点病院よりも長い傾向にあった。小児がん新入院患者数あたりの死亡率は、拠点、1-A、1-Bで有意差はなかったが、県内発症数が20例未満で1-Bしか存在しない県での連携病院では、2倍程度高く有意差を認めた。診療県の人口から1-Aになり得ない連携病院も存在することが考えられ、今後そのような県に対する何らかの方策が必要であると考えられた。2023年度以降の実際の層別化により、集約化・均てん化の進捗状況に注視する必要がある。
今回の研究で、小児がん拠点病院QIおよび小児がん連携病院QIを設定し継続的に計測することで、日本における小児がん医療の質を評価することが可能となり、小児がん対策の基礎資料となりうると考えられた。
結論
拠点病院に関しては、小児血液・がん専門医数の漸増傾向やHPS/CLS/こども療養支援士の配置など整備の進んだ面が明らかになった。一方、小児がん認定外科医の配置、放射線治療専門医、病理専門医、専門・認定薬剤師の配置、中央病理提出、男性の妊孕性温存の実施など、整備が遅れている部分も明らかになった。
連携病院に関しては、小児がん連携病院での医療は比較的小規模で、構造的に十分ではないことが明らかになり、大学病院・総合病院と小児病院では、小児がん医療に関わる人員配置が大きく異なっていた。今回、診療患者数の違いにより、1-A、1-Bに層別化することの妥当性を検討したが、類型1の中で患者数の少ない施設であっても同等の治療・支援が行われている可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児がん医療に特化したQI指標の開発は、世界的に見ても、カナダ・オンタリオ州のPediatric Oncology Group of Ontario(POGO)のQIのみが存在しているに過ぎず、独創性の高い研究となっている。本研究では、小児がん拠点病院に加えて小児がん連携病院のQI指標を開発し、測定することができた。日本の小児がん医療の実態が初めて明らかになり、その成果は、日本小児科学会、国際小児がん学会(SIOP)にて報告し、大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
本研究では、小児がん連携病院QIを開発し、拠点病院。連携病院で診療情報管理士を中心とした算定ワーキングを形成し計測を行い、その結果を冊子にして全国の小児がん診療病院に届けている。小児がん拠点病・連携病院におけるPDCAサイクルを回す資料となっており、さらに、小児がんの統計値を算出するために、診療情報管理士、ICTなどと連携するシステムを構築することができている。
ガイドライン等の開発
今回の研究で、連携病院類型1の細分化をシュミレーションした。構造指標(特に療養支援担当者で顕著)で差が認められたことと、地域によっては類型1-A施設が存在し得ないことを示した。次期小児がん拠点病院の要件改定に対して、第1回小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(令和4年1月17日開催)、第2回同ワーキンググループ(令和4年6月27日開催)の検討資料として、HPS/CLS/こども療養支援士の実態等について報告した。
その他行政的観点からの成果
新規小児がん拠点病院等の指定要件にて、連携病院類型1の細分化が採用され、令和5年度内に新規小児がん連携病院が指定されることになった。連携1-Aが存在しない県の大学病院小児科より説明会の開催を求められ、令和5年3月22日に研究班での結果を報告した。今後、がん対策推進基本計画のロジックモデルの指標の一部として検討され、経年的な測定により、核病院でのPDCAサイクルを回すことができ、日本における小児がん医療提供体制全体の底上げにつなげることができる。
その他のインパクト
今後のQI研究で得られた情報を公開することにより、日本の小児がん医療の実態が明らかになり、各小児がん診療病院の医療・支援体制を充実させることができる。小児がん患者の受診行動にも意識変革が起きることが予想され、集約化を加速させることにつながることを期待する。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
199件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202208019Z