画期的な霊長類HIV-1モデルによる抗エイズ薬、エイズワクチン評価基盤技術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200908005A
報告書区分
総括
研究課題名
画期的な霊長類HIV-1モデルによる抗エイズ薬、エイズワクチン評価基盤技術の開発に関する研究
課題番号
H19-政策創薬・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
明里 宏文(京都大学 霊長類研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 俣野 哲朗(東京大学医科学研究所)
  • 櫻木 淳一(大阪大学微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,289,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗エイズ薬開発やワクチン開発研究において、その安全性・有効性を評価する上で実験用サル類を用いたトランスレーショナルリサーチは不可欠である。本研究では近年確立された、サル細胞で増殖可能なサル指向性HIV-1クローンを用いてこれまで不可能とされてきたモデル動物である実験用サル類/HIV-1感染・発症システムを確立することを目的とした。
研究方法
今年度は昨年度用いた第1世代サル指向性HIV-1を基に、サル細胞株での増殖能が向上した第2世代HIV-1クローンを構築した。これらのサル細胞及び個体レベルでの感染実験を行ない、その感染増殖能及び免疫応答について解析した。また、より優れたサルHIV-1病態モデルを目指し、既に解析用リソースが充実しているアカゲザルに指向性を有する新規HIV-1クローン構築を進めたとともに、 今後順次得られるサル適応型HIV-1の複製増殖素過程を解析するため必要となるゲノム解析基盤整備を行なった。
結果と考察
第2世代HIV-1mtのカニクイザル感染実験を行なった結果、X4, R5-tropic HIV-1mtのどちらもDT5Rと比較し10倍以上の増殖効率を示した。また第2世代HIV-1mtはサル個体において潜伏感染しうること、またCD8陽性細胞を主体とする抗ウイルス免疫応答により制御されることが示された。さらに第3世代HIV-1mtであるMN4Rh-3を得た。このクローンに新たに導入された部位はG114E (Gag-CA) のみであるが、カニクイザルPBMCにおいて第1,2世代HIV-1mtと比較し増殖能が格段に向上した。HIV-1mt感受性に関するカニクイザル個体差を規定するTrim5α遺伝子多型要因の解明に成功した。
結論
本研究成果により、急性霊長類モデルによる新規抗HIV-1薬剤や予防ワクチンの評価研究が実施可能となった。特に、HIV-1感受性に関するサル個体差を規定する宿主要因を同定することに成功し、一部のHIV-1高抵抗性個体を実験群から除外することにより信頼性の高い評価システムを構築できたことは高く評価できる。今後の新規治療薬やワクチン開発・臨床応用において非常に有意義と考えられ、社会的・厚労行政上でも高く評価できると思われる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200908005B
報告書区分
総合
研究課題名
画期的な霊長類HIV-1モデルによる抗エイズ薬、エイズワクチン評価基盤技術の開発に関する研究
課題番号
H19-政策創薬・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
明里 宏文(京都大学 霊長類研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 俣野 哲朗(東京大学 医科学研究所)
  • 櫻木 淳一(大阪大学 微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗エイズ薬開発やワクチン開発研究において、その安全性・有効性を評価する上で実験用サル類を用いたトランスレーショナルリサーチは不可欠である。本研究では近年確立された、サル細胞で増殖可能なサル指向性HIV-1クローンを用いてこれまで不可能とされてきたモデル動物である実験用サル類/HIV-1感染・発症システムを確立することを目的とした。
研究方法
サル細胞で増殖可能なサル指向性HIV-1クローンHIV-1 DT5Rをベースに、遺伝子工学的手法及び細胞馴化による改変を行なうとともに、サルPBMCを用いたin vitro感染実験によりサル種や個体ごとの感受性について検討する。その結果を踏まえ、感受性の高いサルへの感染実験を行い、ウイルス学・免疫学的解析結果より個体レベルにおける動態を解析する。またサル類においてHIV-1感受性を規定する遺伝子多型解析を行うことにより、将来的な評価研究に有用なサル群の選別技術を確立する。さらに馴化型HIV-1クローンについて、そのゲノム変異領域がもたらす影響について、そのウイルスゲノム構造や宿主側因子との相互作用等といった多角的観点から分子機構解析を進める。
結果と考察
遺伝子工学的手法及び細胞馴化等の技術を駆使することにより、カニクイザルで増殖可能な第3世代サル指向性HIV-1クローンMN4Rh-3の構築に成功した。またサル指向性HIV-1の感受性に関するカニクイザル個体差が、Trim5α遺伝子多型が主要因であることを明らかにした。これにより信頼性と再現性の高い評価システム構築が可能となった。本研究成果により、HIV-1mt霊長類モデルによる新規抗HIV-1薬剤・予防ワクチンの評価研究が初めて実施可能となった。
結論
本研究成果により、急性霊長類モデルによる新規抗HIV-1薬剤や予防ワクチンの評価研究が実施可能となった。特に、HIV-1感受性に関するサル個体差を規定する宿主要因を同定することに成功し、一部のHIV-1高抵抗性個体を実験群から除外することにより信頼性の高い評価システムを構築できたことは高く評価できる。今後の新規治療薬やワクチン開発・臨床応用において非常に有意義と考えられ、社会的・厚労行政上でも高く評価できると思われる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200908005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
サル細胞でのHIV-1馴化や宿主域研究から得られた分子生物学的・構造科学的情報を基に遺伝子改変を行ない、最終的に第1世代クローンに総計僅か10アミノ酸にも満たない変異導入により、約100倍もウイルス増殖能が向上した高指向性HIV-1クローン樹立に成功した。さらにTrim5αを初めとしてEnvやPol-Intの機能発現や宿主域規定に関わる新たな分子機構の発見に繋がったことは特筆に値すると考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究により確立した抗エイズ薬・ワクチン霊長類評価システムにより、これらの臨床応用がこれまでより格段に迅速化されることが期待される。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
日本国内でのSPF化個体繁殖や流通環境、さらに特異抗体等の研究基盤が整備されているカニクイザルで実用レベルの抗エイズ薬・ワクチン評価システムが確立したことは、今後の日本オリジナルの新規治療薬やワクチン開発・臨床応用において非常に有意義と考えられ、社会的・厚労行政上でも高く評価できる。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-