日本における肝癌治療の実態把握と費用対効果の検証についての研究

文献情報

文献番号
202208017A
報告書区分
総括
研究課題名
日本における肝癌治療の実態把握と費用対効果の検証についての研究
課題番号
20EA1018
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
國土 典宏(国立国際医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 浅岡 良成(国立国際医療研究センター がん総合診療センター)
  • 長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科)
  • 建石 良介(東京大学 医学部附属病院)
  • 山田 康秀(国立国際医療研究センター がん総合診療センター)
  • 斎藤 明子(国立国際医療研究センター病院 消化器内科)
  • 福田 敬(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
肝癌に対する治療方法とその効果、治療費等の実態を把握し費用対効果を評価する。
研究方法
全国原発性肝癌追跡調査を用いて、肝癌に対し提供されている治療方法とその効果、副作用、治療継続性等、その実態を把握し費用対効果を検討する。また、国内で行われた肝癌に対する肝切除と焼灼術(RFA)の第Ⅲ相試験であるSURF試験に参加した患者の総治療費を算出し、費用対効果を評価する。SURF試験の対象である肝癌腫瘍径≦3㎝、腫瘍数≦3個以下の患者に対し、外科切除、RFA後の生存期間が同等である場合、その侵襲、合併症により、RFAの優越性があると考えられる。その一方で、各治療後の再発率、再発時の治療による合併症等を考慮すると、初回治療の優位性は異なった結果になる可能性がある。外科切除後の再発は、RFA後の再発に比べ少ない。RFA後に外科切除、外科切除後にRFAを施行される場合もあり、両群間で外科切除を実施する時期が異なるだけの患者は少なくない。患者個々の生涯治療費用をレセプトの収集をすることにより、初回治療のみ、あるいは二次治療以降の治療費も含めた費用により費用対効果を算出し、総合的に両治療を比較することが可能となる。同様にTACE、分子標的治療についても、研究方法に示す内容で、効果、副作用、後治療に影響する肝予備能、費用対効果等を解析することにより、病期、肝機能に応じた最適治療を推奨できる。
結果と考察
全国原発性肝癌追跡調査登録症例のレセプト解析結果からは、肝癌に対する治療の施設間差が顕著であった。各病院で、すべての治療モダリティを高いレベルで備えることは困難であることが想像される。病院別の治療成績を開示し、患者およびその家族が、各医療圏で、個々に最善の治療を最高の病院で治療できるような、患者と治療の集約化が必要であることを想起させる結果であった。
 SURF試験(無作為化比較試験)の登録症例で、治療開始から5年間の総医療費を比較した場合、切除とラジオ波焼灼で有意差がなかった。医療費に関する情報をガイドラインに付記することは、患者・家族、医療者による治療法決定に資すると考えている。
 NDBデータにより、総医療費、各治療の費用対効果を評価する予定であったが、データ抽出機関の事情により、データを入手できたのは研究期間終了後であった。
 研究対象期間に、全国194施設から、4,825症例、7,310治療ラインの薬物療法関連情報が入力された。開始時期と開始後予後の経時的変化を観察した。生存期間中央値は、2015-16、2017-18、2019-20、2021-22で12.6か月 、15.4か月 、19.4か月、17.7か月であった。患者背景として、肝予備能および腫瘍条件が比較的良好な症例への投与が割合として増加していた。新規治療の効果および患者背景の変化(リードタイム・バイアス)により治療開始後の予後が経時的に延長していることが示された。
結論
National Clinical Database (NCD)の登録症例のレセプト解析結果からは、肝癌に対する治療の施設間差が顕著であった。肝切除、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術、全身薬物療法等、異なる手技による治療により、肝癌に対する治療アルゴリズムは成り立っている。各がん診療連携拠点病院等で、すべての治療モダリティを高いレベルで備えることは困難であることが想像される。どの病院でどの治療が得意であるのか、治療成績を開示し、患者およびその家族が、各医療圏あるいは近隣医療圏で、個々に最善の治療を最高の病院で治療できるような、治療の集約化が必要であることを想起させる結果であった。
 腫瘍数 1~3個で、最大径3cm以内の原発性肝癌に対しては、切除とラジオ波焼灼の治療効果は同等である。本研究で、無作為化比較試験の登録症例で、治療開始から5年間の総医療費を比較した場合、切除とラジオ波焼灼で有意差がなかった。令和5年度は、この結果をNational Database (NDB)データを用いて検証する。医療費に関する情報をガイドラインに付記することは、患者・家族、医療者が治療法を決定に資すると考えている。
 NCD登録症例を解析すると各薬物投与症例の患者背景は異なっていた。例えば、肝予備能は、ソラフェニブ(SOR)群で良好な症例の割合が低かった。腫瘍条件においても腫瘍マーカー高値や肝外転移症例がSOR群で多かった。リアルワールドデータによる解析の限界を理解した上で、令和5年度は、NDBデータを利活用し、分子標的薬剤の費用対効果評価を実施する。リアルワールドデータから得られる薬剤の投与順と生存期間の相関、費用対効果の違いについて結果が得られれば、日本肝臓学会、肝癌診療ガイドラインと情報を共有する。2023年度も、本研究成果の学会発表、論文発表を引き続き行う。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208017B
報告書区分
総合
研究課題名
日本における肝癌治療の実態把握と費用対効果の検証についての研究
課題番号
20EA1018
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
國土 典宏(国立国際医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 浅岡 良成(国立国際医療研究センター がん総合診療センター)
  • 長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科)
  • 建石 良介(東京大学医学部附属病院)
  • 山田 康秀(国立国際医療研究センター がん総合診療センター)
  • 斎藤 明子(国立国際医療研究センター 消化器内科)
  • 福田 敬(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
肝癌に対する治療方法とその効果、治療費等の実態を把握し費用対効果を評価する。
研究方法
全国原発性肝癌追跡調査を用いて、肝癌に対し提供されている治療方法とその効果、副作用、治療継続性等、その実態を把握し費用対効果を検討する。また、国内で行われた肝癌に対する肝切除と焼灼術(RFA)の第Ⅲ相試験であるSURF試験に参加した患者の総治療費を算出し、費用対効果を評価する。SURF試験の対象である肝癌腫瘍径≦3㎝、腫瘍数≦3個以下の患者に対し、外科切除、RFA後の生存期間が同等である場合、その侵襲、合併症により、RFAの優越性があると考えられる。その一方で、各治療後の再発率、再発時の治療による合併症等を考慮すると、初回治療の優位性は異なった結果になる可能性がある。外科切除後の再発は、RFA後の再発に比べ少ない。RFA後に外科切除、外科切除後にRFAを施行される場合もあり、両群間で外科切除を実施する時期が異なるだけの患者は少なくない。患者個々の生涯治療費用をレセプトの収集をすることにより、初回治療のみ、あるいは二次治療以降の治療費も含めた費用により費用対効果を算出し、総合的に両治療を比較することが可能となる。同様にTACE、分子標的治療についても、研究方法に示す内容で、効果、副作用、後治療に影響する肝予備能、費用対効果等を解析することにより、病期、肝機能に応じた最適治療を推奨できる。
結果と考察
全国原発性肝癌追跡調査登録症例のレセプト解析結果からは、肝癌に対する治療の施設間差が顕著であった。各病院で、すべての治療モダリティを高いレベルで備えることは困難であることが想像される。病院別の治療成績を開示し、患者およびその家族が、各医療圏で、個々に最善の治療を最高の病院で治療できるような、患者と治療の集約化が必要であることを想起させる結果であった。
 SURF試験(無作為化比較試験)の登録症例で、治療開始から5年間の総医療費を比較した場合、切除とラジオ波焼灼で有意差がなかった。医療費に関する情報をガイドラインに付記することは、患者・家族、医療者による治療法決定に資すると考えている。
 NDBデータにより、総医療費、各治療の費用対効果を評価する予定であったが、データ抽出機関の事情により、データを入手できたのは研究期間終了後であった。
 研究対象期間に、全国194施設から、4,825症例、7,310治療ラインの薬物療法関連情報が入力された。開始時期と開始後予後の経時的変化を観察した。生存期間中央値は、2015-16、2017-18、2019-20、2021-22で12.6か月 、15.4か月 、19.4か月、17.7か月であった。患者背景として、肝予備能および腫瘍条件が比較的良好な症例への投与が割合として増加していた。新規治療の効果および患者背景の変化(リードタイム・バイアス)により治療開始後の予後が経時的に延長していることが示された。
結論
National Clinical Database (NCD)の登録症例のレセプト解析結果からは、肝癌に対する治療の施設間差が顕著であった。肝切除、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術、全身薬物療法等、異なる手技による治療により、肝癌に対する治療アルゴリズムは成り立っている。各がん診療連携拠点病院等で、すべての治療モダリティを高いレベルで備えることは困難であることが想像される。どの病院でどの治療が得意であるのか、治療成績を開示し、患者およびその家族が、各医療圏あるいは近隣医療圏で、個々に最善の治療を最高の病院で治療できるような、治療の集約化が必要であることを想起させる結果であった。
 腫瘍数 1~3個で、最大径3cm以内の原発性肝癌に対しては、切除とラジオ波焼灼の治療効果は同等である。本研究で、無作為化比較試験の登録症例で、治療開始から5年間の総医療費を比較した場合、切除とラジオ波焼灼で有意差がなかった。令和5年度は、この結果をNational Database (NDB)データを用いて検証する。医療費に関する情報をガイドラインに付記することは、患者・家族、医療者が治療法を決定に資すると考えている。
 NCD登録症例を解析すると各薬物投与症例の患者背景は異なっていた。例えば、肝予備能は、ソラフェニブ(SOR)群で良好な症例の割合が低かった。腫瘍条件においても腫瘍マーカー高値や肝外転移症例がSOR群で多かった。リアルワールドデータによる解析の限界を理解した上で、令和5年度は、NDBデータを利活用し、分子標的薬剤の費用対効果評価を実施する。リアルワールドデータから得られる薬剤の投与順と生存期間の相関、費用対効果の違いについて結果が得られれば、日本肝臓学会、肝癌診療ガイドラインと情報を共有する。2023年度も、本研究成果の学会発表、論文発表を引き続き行う。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
NCD登録症例を解析すると薬物療法投与患者の背景は異なっていた。肝予備能は、ソラフェニブ群で良好な症例の割合が低く、腫瘍マーカー高値や肝外転移症例が多かった。リアルワールドデータによる解析の限界を理解した上で、令和5年度は、NDBデータを利活用し、分子標的薬剤の費用対効果評価を実施する。リアルワールドデータから得られる薬剤の投与順と生存期間の相関、費用対効果の違いについて結果が得られれば、日本肝臓学会、肝癌診療ガイドラインと情報を共有する。
臨床的観点からの成果
腫瘍数 1~3個で、最大径3cm以内の原発性肝癌に対しては、切除とラジオ波焼灼の治療効果は同等である。本研究で、無作為化比較試験の登録症例で、治療開始から5年間の総医療費を比較した場合、切除とラジオ波焼灼で有意差がなかった。令和5年度は、この結果をNational Database (NDB)データを用いて検証する。医療費に関する情報をガイドラインに付記することは、患者・家族、医療者が治療法を決定に資すると考えている。
ガイドライン等の開発
2023年度以降に継続して実施する解析結果を、日本肝臓学会、肝癌治療ガイドラインへ費用対効果評価に関する提供可能な情報を提供し、本研究成果を利活用する。
その他行政的観点からの成果
NCD登録症例のレセプト解析結果からは、肝癌に対する治療の施設間差が顕著であった。肝切除、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術、全身薬物療法等、異なる手技による治療により、肝癌に対する治療アルゴリズムは成り立っている。各がん診療連携拠点病院等で、すべての治療モダリティを高いレベルで備えることは困難であることが想像される。病院別に治療成績を開示し、患者およびその家族が、各医療圏あるいは近隣医療圏で、最善の治療を受けられるように、治療の集約化が必要であることを想起させる結果であった。
その他のインパクト
令和5年度のNDB解析結果を公表予定。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
41件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
2024-07-10

収支報告書

文献番号
202208017Z