がん患者に対する質の高いアピアランスケアの実装に資する研究

文献情報

文献番号
202208015A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者に対する質の高いアピアランスケアの実装に資する研究
課題番号
20EA1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤間 勝子(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野澤 桂子(目白大学 看護学部 看護学科 教授)
  • 全田 貞幹(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院 放射線治療科)
  • 飯野 京子(国立看護大学校)
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター / 乳腺・腫瘍内科)
  • 島津 太一(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がん患者に対する質の高いアピアランスケアが提供されるために,アピアランスケアの均てん化に向けた手法と課題を整理する(研究Ⅲ・Ⅳ)とともに,がん診療連携拠点病院における効果的かつ効率的な介入方法の実践と検証を行う(研究Ⅰ・Ⅱ)ことである。最終的には,より具体的な地域連携・院内連携も含めたアピアランスケアの提供体制モデルを提案し,がん患者が尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築に資することを目指した
研究方法
がん診療連携拠点病院内おけるアピアランスケアの効果的な介入を目指し、アピアランスケアに関するe-learning研修が医療者に与える効果と患者への影響(研究Ⅰ)、医療機関内にアピアランスケアを導入する際の阻害・促進要因の検討(研究Ⅱ)について調査研究を行った。併せて、質の高いアピアランスケアの提供に向け、アピアランスケアガイドラインの改訂作業(研究Ⅲ)及び院内・地域連携モデルの提案に向けた患者に外見ケア時の課題研究(研究Ⅳ)についても調査を行った。
結果と考察
〇研究Ⅰ「アピアランスケアに関するe-learning研修が医療者に与える効果と患者への影響」
アピアランスケアe-learning研修プログラムの有用性を検証するために、看護師を対象に,ウエイティング・リスト・コントロール・デザインを用いたランダム化比較試験を行った。参加者は92名であり全て女性であった。e-learning視聴群(EL群)では、アピアランスケアの知識が身につき、また患者に対するケアの実践回数・頻度、患者が自身の行うケアに満足するとの自信も上昇した。e-learningによる研修が受講者の能力向上や意欲・自信の向上に寄与し一定の効果があることが確認できた。

〇研究Ⅱ「医療機関内にアピアランスケアを導入する際の阻害・促進要因の検討」
アピアランスケアの実装に向けて2件の調査研究を行った。まずは、アピアランス支援の実装に向けて好事例を整理することで,その促進・阻害要因を質的に探索するために、ケアに取り組んでいるがん診療連携拠点病院7病院を選択し、16名の対象者(に医療機関内にアピアランスケアを導入する際の阻害・促進要因に関するインタビュー調査を実施した。1段階目調査を踏まえて、共同研究者間で実装の促進・阻害要因をまとめ、実装のための実装のための行動目標を設定した。設定した目標は、7病院の調査対象者に表面妥当性確認のためにフィードバックを求めた。内容を洗練し、行動目標として、アピアランスケア実践者211項目、管理者10項目を設定した。
2段階目の調査は、前回の調査で設定したアピアランスケア実装のための行動目標について、臨床でどの程度達成されているかに関する実態調査である。対象者は、がん診療連携拠点病院において、アピアランスケアを実践している者とその管理者とし、がん診療連携拠点病院に郵送法にて調査依頼を行い、web上で回答を求めた。

〇研究Ⅲ:アピアランスケアのガイドライン2021改訂版作成研究
2016年に刊行された「アピアランスケアの手引き2016年版」をMindsガイドライン2017年版に則り改訂作業を行い、2021年10月21日に「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年度版」として発刊した。

〇研究Ⅳ研究Ⅳ:院内・地域連携モデルの提案に向けた患者による外見ケア時の課題研究
医療者のみならず医療者以外の職種(理美容師等)から,患者が提供されたアピアランスケアの情報やサービス,コミュニケーション上の課題などについて調査を行い1034名から回答を得た。結果についてがん罹患時の心的変化に焦点を絞り分析を行い,その変化の誘因として,患者のパーソナリティ,経済状況,人間関係などが関連していることを明らかにした。
結論
がん患者に対する質の高いアピアランスケアを提供するために,本研究では,情報のエビデンスを整理し(研究Ⅲ),全国の医療者がアピアランスケアを学ぶ機会となるe-learningプログラムもその有用性を確認(研究Ⅰ)した。ケア提供の均てん化に向けた手法の整理が行えた。併せて,医療機関内でアピアランスケアを導入するための要因の検討(研究Ⅱ)を行いアピアランスケア導入時に必要な行動目標を作成した。さらに、より効果的なケア提供にむけ,ケアが必要な患者の特性についての整理も行った(研究Ⅳ)。
それぞれの研究成果については,今後のアピアランスケア研修計画や患者向け介入方法へ反映させ、将来的には全国の医療機関におけるアピアランスケアの相談支援体制を構築し,アピアランスケアの均てん化を図る。
医療者から始まる,より具体的な地域連携・院内連携も含めたアピアランスケアの提供体制モデルの提案により,がん患者ががんと共生しながら尊厳をもって安心して暮らせる試写会の構築にさらに寄与していく

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208015B
報告書区分
総合
研究課題名
がん患者に対する質の高いアピアランスケアの実装に資する研究
課題番号
20EA1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤間 勝子(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野澤 桂子(目白大学 看護学部 看護学科)
  • 全田 貞幹(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院 放射線治療科)
  • 飯野 京子(国立看護大学校)
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター / 乳腺・腫瘍内科)
  • 島津 太一(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がん患者に対する質の高いアピアランスケアが提供されるために,アピアランスケアの均てん化に向けた手法と課題を整理する(研究Ⅲ・Ⅳ)とともに,がん診療連携拠点病院における効果的かつ効率的な介入方法の実践と検証を行う(研究Ⅰ・Ⅱ)ことである。最終的には,より具体的な地域連携・院内連携も含めたアピアランスケアの提供体制モデルを提案し,がん患者が尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築に資することを目指した
研究方法
がん診療連携拠点病院内おけるアピアランスケアの効果的な介入を目指し、アピアランスケアに関するe-learning研修が医療者に与える効果と患者への影響(研究Ⅰ)、医療機関内にアピアランスケアを導入する際の阻害・促進要因の検討(研究Ⅱ)について調査研究を行った。併せて、質の高いアピアランスケアの提供に向け、アピアランスケアガイドラインの改訂作業(研究Ⅲ)及び院内・地域連携モデルの提案に向けた患者に外見ケア時の課題研究(研究Ⅳ)についても調査を行った。
結果と考察
〇研究Ⅰ「アピアランスケアに関するe-learning研修が医療者に与える効果と患者への影響」
アピアランスケアe-learning研修プログラムの有用性を検証するために、看護師を対象に,ウエイティング・リスト・コントロール・デザインを用いたランダム化比較試験を行った。参加者は92名であり全て女性であった。e-learning視聴群(EL群)では、アピアランスケアの知識が身につき、また患者に対するケアの実践回数・頻度、患者が自身の行うケアに満足するとの自信も上昇した。e-learningによる研修が受講者の能力向上や意欲・自信の向上に寄与し一定の効果があることが確認できた。

〇研究Ⅱ「医療機関内にアピアランスケアを導入する際の阻害・促進要因の検討」
アピアランスケアの実装に向けて2件の調査研究を行った。まずは、アピアランス支援の実装に向けて好事例を整理することで,その促進・阻害要因を質的に探索するために、ケアに取り組んでいるがん診療連携拠点病院7病院を選択し、16名の対象者(に医療機関内にアピアランスケアを導入する際の阻害・促進要因に関するインタビュー調査を実施した。1段階目調査を踏まえて、共同研究者間で実装の促進・阻害要因をまとめ、実装のための実装のための行動目標を設定した。設定した目標は、7病院の調査対象者に表面妥当性確認のためにフィードバックを求めた。内容を洗練し、行動目標として、アピアランスケア実践者211項目、管理者10項目を設定した。
2段階目の調査は、前回の調査で設定したアピアランスケア実装のための行動目標について、臨床でどの程度達成されているかに関する実態調査である。対象者は、がん診療連携拠点病院において、アピアランスケアを実践している者とその管理者とし、がん診療連携拠点病院に郵送法にて調査依頼を行い、web上で回答を求めた。

〇研究Ⅲ:アピアランスケアのガイドライン2021改訂版作成研究
2016年に刊行された「アピアランスケアの手引き2016年版」をMindsガイドライン2017年版に則り改訂作業を行い、2021年10月21日に「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年度版」として発刊した。

〇研究Ⅳ研究Ⅳ:院内・地域連携モデルの提案に向けた患者による外見ケア時の課題研究
医療者のみならず医療者以外の職種(理美容師等)から,患者が提供されたアピアランスケアの情報やサービス,コミュニケーション上の課題などについて調査を行い1034名から回答を得た。結果についてがん罹患時の心的変化に焦点を絞り分析を行い,その変化の誘因として,患者のパーソナリティ,経済状況,人間関係などが関連していることを明らかにした。
結論
がん患者に対する質の高いアピアランスケアを提供するために,本研究では,情報のエビデンスを整理し(研究Ⅲ),全国の医療者がアピアランスケアを学ぶ機会となるe-learningプログラムもその有用性を確認(研究Ⅰ)した。ケア提供の均てん化に向けた手法の整理が行えた。併せて,医療機関内でアピアランスケアを導入するための要因の検討(研究Ⅱ)を行いアピアランスケア導入時に必要な行動目標を作成した。さらに、より効果的なケア提供にむけ,ケアが必要な患者の特性についての整理も行った(研究Ⅳ)。
それぞれの研究成果については,今後のアピアランスケア研修計画や患者向け介入方法へ反映させ、将来的には全国の医療機関におけるアピアランスケアの相談支援体制を構築し,アピアランスケアの均てん化を図る。
医療者から始まる,より具体的な地域連携・院内連携も含めたアピアランスケアの提供体制モデルの提案により,がん患者ががんと共生しながら尊厳をもって安心して暮らせる試写会の構築にさらに寄与していく

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アピアランスケアを医療機関に導入する際の阻害・促進要因を分析し、実践者・管理者それぞれに必要な行動目標を設定した。アピアランスケア実装に向けた初めての行動指針であり、令和5年に行われるアピアランスケアモデル事業でも活用される計画である。またアピアランスケアに関する患者調査からは支援の必要な患者特性についても検討し、心的変化への誘因としてパーソナリティ、経済状況、人間関係等が関連していることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
アピアランスケアの医療者向けe-learningプログラムについて、その効果を検証し、受講者能力向上に寄与することが確認された。従来アピアランスケア研修については体系的な研修機会が乏しく受講者が限られていたが、本e-learningプログラムの提供により、その機会を拡大することが可能となり、アピアランスケアの均てん化に貢献できる。
ガイドライン等の開発
がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版を作成し、2021年10月に日本がんサポーティブケア学会編集として金原出版株式会社より刊行された。
その他行政的観点からの成果
令和5年度実施されるアピアランスケアモデル事業では、本研究うの研究成果を踏まえた実施が求められている。本研究野成果である、アピアランスケアのe-learning研修や医療機関内でアピアランスケアを実践する際の阻害促進要因の分析、アピアランスケアを導入する際の行動目標が事業の参考とした活用される予定である。
その他のインパクト
本研究の結果は、医療者のみならず一般市民や行政機関からのアピアランスケアへの関心を高めることにつながった。ガイドライン作成やアピアランスケアに関してマスコミから17件の取材があった。またガイドラインに合わせ横浜市と国立がん研究センター中央病院が作成するリーフレットも改訂され、各地の医療機関や行政機関で活用されている。
行政機関等からのアピアランスケアに関する講演や研修の依頼にも対応し、20件実施した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドライン作成1 
その他成果(普及・啓発活動)
38件
e-learningコンテンツ作成1 マスコミ発表17件 講演20件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nozawa.K Iino.K Zenda.S et al
The effectiveness of moisturizer on acute radiation-induced dermatitis in breast cancer patients: a systematic review and meta-analysis
Breast Cancer , (1) (30) , 2-12  (2022)
doi: 10.1007/s12282-022-01403-8.
原著論文2
Yamazaki,N Nozawa,K Kikuchi,K et al
Efficacy and safety of topical benzoyl peroxide for prolonged acneiform eruptions induced by cetuximab and panitumumab: A multicenter, phase II trial
JOURNAL OF DERMATOLOGY , (7) (48) , 1077-1080  (2021)
http://dx.doi.org/10.1111/1346-8138.15836
原著論文3
Yamazaki,N Nozawa,K Kikuchi,K et al
Results of the non-small cell lung cancer part of a phase III, open-label, randomized trial evaluating topical corticosteroid therapy for facial acneiform dermatitis induced by EGFR inhibitors: stepwise rank down from potent corticosteroid (FAEISS st
SUPPORTIVE CARE IN CANCER , (5) (29) , 2327-2334  (2021)
http://dx.doi.org/10.1007/s00520-020-05765-7
原著論文4
野澤桂子, 藤間勝子
がん治療に伴う外見変化と対処行動 男女別部位別罹患率に対応した1,035名の患者対象調査から
国立病院看護研究学会誌 , 16 (1) , 15-26  (2020)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202208015Z