進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究

文献情報

文献番号
202208009A
報告書区分
総括
研究課題名
進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究
課題番号
20EA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 支持療法開発部門)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 支持・サバイバーシップTR研究部 支持・緩和・心のケア研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、進行がん患者個別の価値観や意向に添った協働意思決定支援プログラムを開発する。次に、同プログラムをモバイル電子端末で使用するアプリケーション(アプリ)として開発し、患者-医師間のコミュニケーションへの有効性を無作為化比較試験(RCT)として検証することを目的とする。令和4年度の目標は、症例集積を継続し予定数264名の登録を完了すること、および普及と実装の観点からアプリを使用した介入の実施可能性について、臨床での協働意思決定支援の実施状況を関係者へのヒアリングにより情報収集・評価することであった。
研究方法
1. 症例登録の遂行
 研究分担者の藤森麻衣子を研究事務局として、研究協力者とともに症例登録、介入、患者調査の手順書を確認しながら実施した。調査フィールドは国立がん研究センター腫瘍内科、肝胆膵内科、呼吸器内科に協力を仰ぎ昨年度に引き続き実施した。アプリ運用および症例登録システムの管理は、研究分担者の上野太郎が責任者として協力した。進捗管理はJ-SUPPORT(日本がん支持療法研究グループ)にも依頼した。

2. 有効性検証のための統計解析計画書の作成
 統計解析責任者の山口拓洋を中心に、統計解析のスケジュール、中止症例の取り扱い、欠測補完方法を含めた統計解析計画書を作成した。作成にあたり、主要評価解析の参考とした先行研究(Epstein et al., 2017)の著者及び解析責任者らに助言を仰いだ。

3. 実装可能性の評価
1) 研究成果を臨床に実装するための阻害・促進要因を明らかにするため、実装科学の研究者の助言を受け、アプリ開発会社とともに研究協力者、関係者のヒアリングを行った。
2) 対象者のアプリプログラム実施や取り組み状況を確認するため、アプリの実施記録(ログ)の取得と評価方法について、毎月1回の打ち合わせを行い、詳細な分析方法を検討した。
結果と考察
1. 症例登録の遂行
 当初予定通り、2022年12月までに264症例の登録を完了した。進捗管理はJ-SUPPORT、毎月の進捗報告を行って適宜相談し、助言を受けた。研究分担者との班会議を定期的に設け、進捗報告及び検討事項の確認を行った。
2. 統計解析計画書の作成
 統計解析当初計画で主要評価の解析に必要な症例数を250例、中止症例を5%と仮定して症例登録264例とする解析計画を作成した。
定期的な症例報告において、中止症例の検討を行った。研究分担者らと協議し、主要評価を欠測とする場合と、欠測とせず最悪値による補完する方法を検討した。また先行研究の著者であるEpstein氏および統計解析責任者らに状況を報告して助言を仰いだ。主要評価の解析時の取り扱いについて、解析者を含めて検討した。
3. 実装可能性の評価
 実装可能性評価のうち、臨床への実装可能性について評価するため、アプリ開発の分担研究者である上野太郎を中心に、医療者ヒアリングを実施した。ヒアリングの対象者は、臨床でのアプリ利用を想定する患者と実際に接している医療者で、認定内科医・消化器病専門医の腫瘍医1名、緩和医療科医師1名、研究支援部門の看護師1名、ソーシャルワーカー2名であった。ヒアリングを踏まえ、①進行がん患者への臨床での介入の実際、②介入が十分に実施できていない場合の要因、③ICTを用いた解決の可能性、④ICT化の意義・負担感について評価した。結果として、医療のリソース不足と、患者の抵抗感が課題にあげられ、プログラムの実践とICT化による課題解決の可能性が示唆された。
結論
 令和5年度に予定していた研究計画が順調に進捗し、解析の準備が整っている。フォローアップ調査が完了次第、データ固定を進め、統計解析に移行する予定である。有効性が明らかになれば、次相の実施可能性試験に展開させるため、引き続き検討を進めていく。
引き続き有効性検証の準備を進めるとともに、実装可能性の評価に取り組む。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208009B
報告書区分
総合
研究課題名
進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究
課題番号
20EA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 支持療法開発部門)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 支持・サバイバーシップTR研究部 支持・緩和・心のケア研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)進行がん患者個別の価値観や意向に添った協働意思決定支援プログラムを開発すること、2)同プログラムをモバイル電子端末で使用するアプリケーション(アプリ)として開発すること、3)患者-医師間のコミュニケーションへの有効性を無作為化比較試験(RCT)として検証することである。
研究方法
標準がん治療終了後の療養に関する患者と医師のコミュニケーションを促進するための協働意思決定支援プログラムを開発しアプリに搭載した。協働意思決定支援プログラムにはQPLを用いた医師への質問選択、患者の価値観の整理、標準がん治療後の療養の場や希望するケアの選択が含まれる。これらを介入資材として組み込んだアプリと、無作為化比較試験用の症例登録システムを開発するため、アプリ開発会社とともにアプリの仕様書を作成し、予備試験で使用するアプリ(デモ版)を構築した。
予備試験の結果を踏まえ、意思決定支援プログラムとアプリ内での表現方法を評価・改善した。改善された協働意思決定支援プログラムに基づき、アプリと症例管理システムを本番環境に移行し、患者登録を行った。
有効性検証試験の準備と並行して、介入手順書に基づき介入者を養成した。有効性検証試験の開始後、患者登録を継続しつつ、研究成果の活用をスムーズに進めるため、並行して実装可能性の評価のための関係者ヒアリングと、プログラムの評価について検討を開始した。必要症例数の登録を完了し、主要評価のデータ収集を完遂した。解析担当者を含めて検討事項を議論し、解析計画書を作成した。さらに実装可能性評価のための医療者インタビューを昨年度より継続して実施した。
結果と考察
プログラム開発は2020年中に実施し、2021年にアプリへの実装と症例登録管理システムのリリースが完了した。2021年4月にJ-SUPPORT科学諮問委員会の承認を受けて、国立がん研究センター中央病院外来でフィールドを調整し、6月よりパイロット試験を実施した。並行して、介入手順書の作成、介入者の養成を進めた。アプリ及び症例登録管理システムを改修し、2021年9月より症例登録が開始され、当初予定通り、2022年12月までに264症例の登録を完了した。進捗管理はJ-SUPPORT、毎月の進捗報告を行って適宜相談し、助言を受けた。研究分担者との班会議を定期的に設け、進捗報告及び検討事項の確認を行った。発話評定者2名は主要評価項目のSHAREスコアおよびRIASコーディングを実施するためそれぞれトレーニング期間を設けた。RIASコーディングはRIAS研究会日本支部が主催する研修会に参加し、課題の合格をもって評定者の認定を受けた。
過去にSHAREとRIASの評定経験を有する評定者1を基準として、評定者2の評定を確認した。症例登録264例のうちの10%をダブルコーディングし、SHARE、RIASともに評定者間信頼性の相関係数≧0.8を確認した。

統計解析当初計画で主要評価の解析に必要な症例数を250例、中止症例を5%と仮定して症例登録264例とする解析計画を作成した。
定期的な症例報告において、中止症例の検討を行った。両群で発生した中止の理由や患者の状況を比較した結果、介入群では具体的な終末期の過ごし方を扱ったプログラム内容によって、不安が増したような中止理由が含まれた。
研究分担者らと協議し、主要評価を欠測とする場合と、欠測とせず最悪値による補完する方法を検討した。また先行研究の著者および統計解析責任者らに状況を報告して助言を仰いだ。最終的に、主要評価の解析時の取り扱いについて、解析者を含めて検討した。
結論
当初の予定通りに研究が進捗し、必要な資材の開発を完了し、必要症例数の登録を完了した。発話評定者のトレーニングも完了し、有効性検証に必要な作業を進捗している。データ管理センターや統計解析者らの協力も得ながら、主要評価項目の解析準備が進められている。予定通り研究が進捗した。今後の解析を待って、成果の公表および社会実装を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
無作為化比較試験により、推定予後1年以内の進行がん患者を対象に、がん治療やケアに関する意思決定支援のために開発されたモバイルアプリ質問促進プログラムは診察時の患者-医師間の共感的コミュニケーション行動を増加させることが検証された。プログラムは患者の抑うつや不安を増悪させることなく満足度を有意に増加させ、安全に実施可能なプログラムである可能性が示されたので、早期実用化が期待される。成果は米国臨床腫瘍学会(ASCO) 2024 年次総会のオーラルセッションで発表され、国内外から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
進行がん患者のためのモバイルアプリ質問促進プログラムが有効かつ安全なプログラムである可能性が示されたことにより、臨床実装への足掛かりとなる成果となった。すなわち、医療者との対話時間も極めて少ない臨床現場の意思決定支援において、臨床リソース(人・時間・場所)の制約を克服し、実用化に向けた、プログラム機器開発につなげることが可能になった。
ガイドライン等の開発
2022年に公開されたがん医療におけるコミュニケーションガイドライン(金原出版)の時期改定に資する成果である。
その他行政的観点からの成果
とくになし
その他のインパクト
2024年4月慈恵医大が産学連携講座「がんサバイバーシップ・デジタル医療学講座」を新設~6月2日に講座開設後初の共同研究成果を米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表~(2024.6.5)について日経、時事メディカルなど電子版に掲載された。 https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP672507_V00C24A6000000/
https://medical.jiji.com/topics/3491

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
マスコミ発表2件(日経、時事メディカル)ホームページ1件(SHARE Communication Project ウェブサイト(https://share-communication.jp/))

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato, A. Fujimori, M. ... and Uchitomi, Y
Assessing the need for a question prompt list that encourages end-of-life discussions between patients with advanced cancer and their physicians: A focus group interview study
Palliat Support Care , 20 (4) , 564-569  (2022)
10.1017/s1478951521001796
原著論文2
Obama, K. Fujimori, M. ....and Uchitomi, Y
Effectiveness of a facilitation programme using a mobile application for initiating advance care planning discussions between patients with advanced cancer and healthcare providers: protocol for a randomised controlled trial (J-SUPPORT 2104)
BMJ Open , 13 (3) , e069557-  (2023)
10.1136/bmjopen-2022-069557

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
2024-07-11

収支報告書

文献番号
202208009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,550,000円
(2)補助金確定額
3,550,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 621,450円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 2,109,550円
間接経費 819,000円
合計 3,550,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-11-17
更新日
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