現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究

文献情報

文献番号
202208008A
報告書区分
総括
研究課題名
現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究
課題番号
20EA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 島津 太一(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 中島 貴子(京都大学 医学部附属病院 次世代医療・iPS細胞治療研究センター (Ki-CONNECT))
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 堀江 良樹(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座)
  • 井上 彰(東北大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、①「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」モデルの実装に係わる方策・実装戦略の開発、②このモデルを実践し、実装・患者・公衆衛生アウトカムの測定、③「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」の均てん化手法の確立を目的としている。
研究方法
Ⅰがん薬物療法のために外来通院中の進行・再発性の消化器・乳腺・婦人科悪性腫瘍患者のコーピングを支援するチャットボットスマホアプリの開発およびその性能の検証
看護師4,210名、医師499名、薬剤師432名等名から「進行・再発性(根治不能)のがん患者で、診断を受けてからの生存期間延長目的の1次がん薬物療法が不応・不耐となるまで」によく受ける質問および、その回答内容を収集した。現在、回答内容の精査を行っており、令和5年度以降、チャットボットへの実装を進めていく予定である。

Ⅱ ePROシステム実装における、患者・医療者の経験や利用における阻害・促進因子を明らかにする
ePROシステムを実装後、2022年9月末まで追跡を行い、3施設より、合計15名の患者が登録された。ePROの実装に係わった医師・看護師13名に対して、インタビュー調査を行った。ePROシステムの実装には、医療資源だけでなく、医療機関内の文化などの内的な要因、信念や態度など個人的な要因、その診療報酬などの外的な要因が複合的に関与することが明らかになった。これらの要因をもとに、より効果的な実装戦略の開発が望まれる。

Ⅲ 我が国の厚生労働行政が推進する「がんと診断された時からの緩和ケア」に関する施策とアウトカムとの関係を明らかにし、望まれる施策を明らかにする
ロジックモデルは、「がん治療病院でのケア提供」、「地域連携」、「緩和ケアに関する社会的認識」の3つの主要な概念カテゴリに分類された。18の大分類および45の小分類施策草案があり、それらは「がん対策推進基本計画」「がん診療連携拠点病院等の指定要件」「財政支援」「その他」の4つに分類された。これらの施策案は64人の外部専門家パネルによって独立して評価され、最終的に、47の政策提案が合意に到達し、施策の優先度についても評価された。本研究の成果は、第84回がん対策推進協議会(令和4年10月27日)で、研究班提出資料として活用された。

Ⅳ「進行がん患者に対するスクリーニングを組み合わせた看護師主導による治療早期からの専門的緩和ケア介入プログラムの臨床的有用性を検証するランダム化比較試験」の解析
204名(予定症例集積数206名の99.0%)の患者が登録された。
【QOL】
介入群は、通常ケア群と比較して、ベースラインから12週目までのTOIスコアに有意な改善を示さなかった。しかし、time-by-group interaction effectsを考慮した探索的な解析では、介入群は通常ケア群と比較してベースラインから20週目までのTOIスコアに有意な改善を示し、20週目のFACT-L総スコアの有意な改善を認めた。
今後、実施された介入、診療録記録、患者によるインタビュー調査などの質的分析を組み合わせて分析を行うことで、介入により効果が期待できる患者の同定、有効な介入の推定、本試験の介入における改善点について考察が可能となると考えられ、わが国の臨床現場の実情に即したがん治療と並行する専門的緩和ケアの望ましい提供体制構築に資するデータが得られると考えられる。

Ⅴ がん治療後期の意思決定支援のためのプログラム策定に資する研究として、Unfinished business概念を中心にすえて、がん患者のunfinished business(いわゆるこころ残り)を最小化するためのプログラムを開発する
遺族調査で明らかになった介入の要点は、①入棟時に見通しを家族(患者)に伝える(予後、具体的にできること)、冊子を渡す、②家族が患者としておきたいこと(こころ残り・希望)・目標を確認する、③こころ残りが少なくなり、希望が叶うように支援する、であった。そこで、①~③を構造化した介入プログラムを作成し、実装することで、Unfinished businessを減らし、「話しておきたいと思うことは話せた」、「してあげたいと思うことはしてあげられた」「(患者に)聞きたいことは聞けた」状況になることを目標とした。2022年7~12月に聖隷ホスピスで上記を行い、データを取得した。現在データフォロー中であり、2023年度以降に解析を行う予定である。
結果と考察
各プロジェクトについて、研究方法にまとめて記述した。
結論
各プロジェクトについて、研究方法にまとめて記述した。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208008B
報告書区分
総合
研究課題名
現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究
課題番号
20EA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 島津 太一(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
  • 松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 中島 貴子(京都大学 医学部附属病院 次世代医療・iPS細胞治療研究センター (Ki-CONNECT))
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 堀江 良樹(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座)
  • 井上 彰(東北大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、①「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」モデルの実装に係わる方策・実装戦略の開発、②このモデルを実践し、実装・患者・公衆衛生アウトカムの測定、③「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」の均てん化手法の確立を目的としている。
研究方法
Ⅰがん薬物療法のために外来通院中の進行・再発性の消化器・乳腺・婦人科悪性腫瘍患者のコーピングを支援するチャットボットスマホアプリの開発およびその性能の検証
看護師4,210名、医師499名、薬剤師432名等名から「進行・再発性(根治不能)のがん患者で、診断を受けてからの生存期間延長目的の1次がん薬物療法が不応・不耐となるまで」によく受ける質問および、その回答内容を収集した。現在、回答内容の精査を行っており、令和5年度以降、チャットボットへの実装を進めていく予定である。

Ⅱ ePROシステム実装における、患者・医療者の経験や利用における阻害・促進因子を明らかにする
ePROシステムを実装後、2022年9月末まで追跡を行い、3施設より、合計15名の患者が登録された。ePROの実装に係わった医師・看護師13名に対して、インタビュー調査を行った。ePROシステムの実装には、医療資源だけでなく、医療機関内の文化などの内的な要因、信念や態度など個人的な要因、その診療報酬などの外的な要因が複合的に関与することが明らかになった。これらの要因をもとに、より効果的な実装戦略の開発が望まれる。

Ⅲ 我が国の厚生労働行政が推進する「がんと診断された時からの緩和ケア」に関する施策とアウトカムとの関係を明らかにし、望まれる施策を明らかにする
ロジックモデルは、「がん治療病院でのケア提供」、「地域連携」、「緩和ケアに関する社会的認識」の3つの主要な概念カテゴリに分類された。18の大分類および45の小分類施策草案があり、それらは「がん対策推進基本計画」「がん診療連携拠点病院等の指定要件」「財政支援」「その他」の4つに分類された。これらの施策案は64人の外部専門家パネルによって独立して評価され、最終的に、47の政策提案が合意に到達し、施策の優先度についても評価された。本研究の成果は、第84回がん対策推進協議会(令和4年10月27日)で、研究班提出資料として活用された。

Ⅳ「進行がん患者に対するスクリーニングを組み合わせた看護師主導による治療早期からの専門的緩和ケア介入プログラムの臨床的有用性を検証するランダム化比較試験」の解析
204名(予定症例集積数206名の99.0%)の患者が登録された。
【QOL】
介入群は、通常ケア群と比較して、ベースラインから12週目までのTOIスコアに有意な改善を示さなかった。しかし、time-by-group interaction effectsを考慮した探索的な解析では、介入群は通常ケア群と比較してベースラインから20週目までのTOIスコアに有意な改善を示し、20週目のFACT-L総スコアの有意な改善を認めた。
今後、実施された介入、診療録記録、患者によるインタビュー調査などの質的分析を組み合わせて分析を行うことで、介入により効果が期待できる患者の同定、有効な介入の推定、本試験の介入における改善点について考察が可能となると考えられ、わが国の臨床現場の実情に即したがん治療と並行する専門的緩和ケアの望ましい提供体制構築に資するデータが得られると考えられる。

Ⅴ がん治療後期の意思決定支援のためのプログラム策定に資する研究として、Unfinished business概念を中心にすえて、がん患者のunfinished business(いわゆるこころ残り)を最小化するためのプログラムを開発する
遺族調査で明らかになった介入の要点は、①入棟時に見通しを家族(患者)に伝える(予後、具体的にできること)、冊子を渡す、②家族が患者としておきたいこと(こころ残り・希望)・目標を確認する、③こころ残りが少なくなり、希望が叶うように支援する、であった。そこで、①~③を構造化した介入プログラムを作成し、実装することで、Unfinished businessを減らし、「話しておきたいと思うことは話せた」、「してあげたいと思うことはしてあげられた」「(患者に)聞きたいことは聞けた」状況になることを目標とした。2022年7~12月に聖隷ホスピスで上記を行い、データを取得した。現在データフォロー中であり、2023年度以降に解析を行う予定である。
結果と考察
各プロジェクトについて、研究方法にまとめて記述した。
結論
各プロジェクトについて、研究方法にまとめて記述した。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国のがん緩和ケア政策とそのアウトカム、評価指標との関係について、これまで十分に検討されていない。近年、政策立案・評価の手法として、ロジックモデの活用が注目されている。ロジックモデルは、施策が直接的に影響を与えるアウトカムを構造化することで、政策の立案・評価に資する論理的構造を明らかにする。本研究班は、国のがん緩和ケア政策におけるロジックモデルを開発し、ロジックモデルを効果的に機能させるための施策を明らかにした。今後、本モデルの活用及び、実際の政策立案・評価における有用性の検証が望まれる。
臨床的観点からの成果
緩和ケアは、患者とその家族の苦痛を和らげ、生活の質を向上させることを目的とする。国民に質の高い緩和ケアを提供するには、国の健康政策の充実が必要不可欠である。しかし、国内におけるがん患者等を対象とした調査では、質の高い緩和ケアが国民に行き届いているとはいえない現状が報告されている。本研究は、国のがん緩和ケア政策におけるロジックモデルを開発したことで、国民への質の高いがん緩和ケアの提供に寄与し得る。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
本研究班におけるロジックモデル開発に係る成果は、第84回がん対策推進協議会(令和4年10月27日)で、研究班提出資料として活用された。(「国が推進する「がんと診断された時からの緩和ケア」のロジックモデル開発に関する研究 」参考資料11:令和2-4年度 厚生労働科学研究班(がん対策推進総合研究事業)「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究」班(研究代表者:武藤学、研究事務局:釆野優)資料提出)。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
本研究班提出資料ががん対策推進協議会で活用された以降、ロジックモデルに関する厚労科研班が立ち上がり、がん対策推進協議会でも今後中間評価にロジックモデルを用いることとしている。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yu Uneno, Maki Iwai, Naoto Morikawa, Keita Tagami, Yoko Matsumoto, Junko Nozato, Takaomi Kessoku, Ta
Development of a national health policy logic model to accelerate the integration of oncology and palliative care: a nationwide Delphi survey in Japan.
International Journal of Clinical Oncology , 27 (9) , 1529-1542  (2022)
doi: 10.1007/s10147-022-02201-0.
原著論文2
Soichiro Okamoto, Yu Uneno, Natsuki Kawashima, Shunsuke Oyamada, Yusuke Hiratsuka, Keita Tagami, Man
Difficulties Facing Junior Physicians and Solutions Toward Delivering End-of-Life Care for Patients with Cancer: A Nationwide Survey in Japan.
Palliative Medicine Reports , 3 (1) , 255-263  (2022)
doi: 10.1089/pmr.2022.0008.

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
2024-05-24

収支報告書

文献番号
202208008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,960,000円
(2)補助金確定額
11,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 390,931円
人件費・謝金 2,181,589円
旅費 96,980円
その他 6,530,500円
間接経費 2,760,000円
合計 11,960,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-