科学的根拠に基づくがん情報の迅速な作成と提供のための体制整備のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
202208007A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づくがん情報の迅速な作成と提供のための体制整備のあり方に関する研究
課題番号
20EA1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 浩二(公立大学法人 福島県立医科大学 消化管外科学講座)
  • 下井 辰徳(国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科)
  • 中島 信久(琉球大学 医学部 附属病院 地域医療部)
  • 田村 和夫(福岡大学 研究推進部)
  • 藤 也寸志(国立病院機構 九州がんセンター)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 奥村 晃子(公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM医療情報部)
  • 高山 智子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部)
  • 花出 正美(がん研究会有明病院)
  • 石川 文子(国立がん研究センター がん対策研究所がん情報提供部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
科学的根拠に基づく情報を迅速に国民に提供し、適切な活用につなげるには、持続可能な作成体制、情報の質を担保したどり着きやすくする仕組み、正しい情報の適切な活用を促す支援環境の整備が必要であり、一部のみではなし得ない。本研究では、がんを心配して情報を探し始める場面から適切にがん拠点病院等につながり、患者らが必要に応じて正しい情報を入手できるよう、1)正しい情報の持続可能な作成・提供体制、2)情報の質を担保し、たどり着きやすくする仕組み、3)相談員らによる正しい情報の活用を促す支援環境の整備の3つの観点から(1)持続可能ながん情報提供体制とそれに関わる諸要件の検討、(2)国内外の情報の質を担保する規制を含めた諸要件の整理、(3)情報検索会社とともに実施するがん情報サービスの情報検索パターンや特性による実態把握、(4)相談員用がん情報データベース基盤のがん種の拡張の4つの側面から検討し、結果を統合して提言書をまとめることを目的とした。
研究方法
(1)持続可能ながん情報提供体制整備のあり方について提言書をまとめるとともに、公的/営利企業サイトのリンクに関する意識調査を実施した。(2)自由診療等で行われている保険適用外のがん免疫療法に関するシステマティックレビューを行い、エビデンスの強さの評価とメタアナリシスを実施した。(3)情報検索会社と連携して、適切な情報にたどり着きやすくするための検討、がん情報サービスの経年的な利用者実態の把握、先進的な医療に関する用語に関する認識の調査を行った。(4)相談員を対象にWeb上のがん関連情報の中から信頼性の高い情報を見極める視点を学ぶワークショップを企画・実施し、その効果を検証した。
結果と考察
(1)本研究に関わる各関連団体の活動内容等の整理から、各々の団体のみでは解決が難しい課題は多く、各団体の強みを活かせる協議・具体的な活動を行える場を持つことが、課題解決の一歩となると考えられた。また公的/営利企業サイトのリンクは、その範囲と信頼性を明確にして設置することで、患者や家族が入手できる情報の種類が広がり、利便性が向上すると考えられた。(2)学術団体に協力する形で実施した一連のガイドライン作成への貢献は、一組織のみでは手が届きにくい関心領域やより詳細な情報作成につながると考えられた。今後は、これをいかに持続可能な形にしていくかが重要であると考えられた。(3)情報検索会社と行ったキーワード提示によりアクセス数が増加し、適切な情報へつながる導線がより強化されると考えられた。一方で情報の利用者に対する調査では、用語の基本知識の必要性や細やかな情報ニーズへの対応が求められていることが示された。適切な情報へのアクセスには、正しく・適切な“情報があること”が前提となるため、情報作成の課題の克服と併せた検討が求められる。(4)信頼性の高い情報を見極める力を相談員が高めていく上でワークショップ開催は、一定の効果があると考えられた。さらにワークショップでの評価検討プロセスを広く共有・公開等していくことにより、リソースの限られた相談支援センターでも評価の視点を学ぶなど活用できる可能性が示唆された。
結論
各側面から見えてきた実態や課題からは、国民の科学的根拠に基づく情報の適切な利用は解決されておらず、利用者の情報ニーズの多様化は進んでいることが示唆された。また各がん関連団体で必要とされる情報の作成・提供、普及の努力が行われているものの、各々の取組では解決が難しい状況が課題として示された。各団体の強みを活かせるよう協議し、具体的な活動を行える場を持つことが、課題解決の一歩として重要である。

公開日・更新日

公開日
2024-03-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208007B
報告書区分
総合
研究課題名
科学的根拠に基づくがん情報の迅速な作成と提供のための体制整備のあり方に関する研究
課題番号
20EA1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 浩二(公立大学法人 福島県立医科大学 消化管外科学講座)
  • 下井 辰徳(国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科)
  • 中島 信久(琉球大学 医学部 附属病院 地域医療部)
  • 田村 和夫(福岡大学 研究推進部)
  • 藤 也寸志(国立病院機構 九州がんセンター)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 奥村 晃子(公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM医療情報部)
  • 高山 智子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部)
  • 花出 正美(がん研究会有明病院)
  • 石川 文子(国立がん研究センター がん対策研究所がん情報提供部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
科学的根拠に基づく情報を迅速に国民に提供し、適切な活用につなげるには、持続可能な作成体制、情報の質を担保してたどり着きやすくする仕組み、正しい情報の適切な活用を促す支援環境の整備が必要であり、一部のみではなし得ない。本研究では、がんを心配して情報を探し始める場面から適切にがん拠点病院等につながり、患者らが必要に応じて正しい情報を入手できるよう、1)正しい情報の持続可能な作成・提供体制、2)情報の質を担保し、たどり着きやすくする仕組み、3)相談員らによる正しい情報の活用を促す支援環境の整備の3つの観点から(1)持続可能ながん情報提供体制とそれに関わる諸要件の検討、(2)国内外の情報の質を担保する規制を含めた諸要件の整理、(3)情報検索会社とともに実施するがん情報サービスの情報検索パターンや特性による実態把握、(4)相談員用がん情報データベース基盤のがん種の拡張の4つの側面から検討し、結果を統合して提言書をまとめることを目的とした。
研究方法
(1)先行研究班(H29-がん対策-一般-005)で立ち上げられたAll Japanがん情報コンソーシアム体制のもと、パイロット事業として立ち上げられた『患者本位の「がん情報サイト」』を通して、持続可能な情報作成方法とそれに関わる諸要件の検討を行った。また、持続可能ながん情報提供体制整備のあり方について提言書をまとめた。(2)自由診療等で行われている保険適用外のがん免疫療法に関するシステマティックレビューを行い、エビデンスの強さの評価とメタアナリシスを実施した。(3)インターネットを介する情報の課題について多角的な検討を行うため、主に情報コンテンツの観点から(免疫療法、先進的な医療/補完代替療法)、情報利用者の観点から(高齢者、「がん情報サービス」の利用者)、さらに情報のアクセスについて情報検索会社と連携して、適切な情報にたどり着きやすくするための検討を行った。(4)国内で発行されている患者向けのガイドラインおよびそれに準ずる信頼できる情報源の提供媒体(冊子体、電子媒体、学会からのWeb等)の整理と情報源のデータベース化について著作権等の前提条件の検討を行った。さらに相談支援に携わる者の診療ガイドラインの活用実態の把握と、その課題対策の一手段として相談員を対象に信頼性の高い情報を見極める視点を学ぶワークショップを企画・実施し、その効果を検証した。
結果と考察
(1)パイロット事業による開設サイトの検討を通して、患者にわかりやすい情報とするための課題やポイント等が具体的に可視化された。また公的/営利企業サイトのリンクは、その範囲と信頼性を明確にして設置することで、患者や家族が入手できる情報の種類が広がり、利便性が向上すると考えられた。本研究に関わる各関連団体の活動内容等の整理から、各々の団体のみでは解決が難しい課題は多く、各団体の強みを活かせる協議・具体的な活動を行える場を持つことが、課題解決の一歩となると考えられた。(2)学術団体に協力する形で実施した一連のガイドライン作成への貢献は、一組織のみでは手が届きにくい関心領域やより詳細な情報作成につながると考えられた。今後は、これをいかに持続可能な形にしていくかが重要であると考えられた。(3)免疫療法に関する検討では、標準治療を実施する医師が、科学的根拠が不十分な免疫療法の受療を否定しきれないことで生じるミスコミュニケーションの可能性が示唆された。また提供する情報の用語や対象別の検討により、情報提供上の留意点やキーワードの示し方による示唆が得られた。(4)信頼できるがんの情報のデータベース化は可能であることが確認されたが、一般/患者向けの情報は限られていた。相談員の診療ガイドライン活用に関する実態調査の結果からは、相談員の診療ガイドライン活用状況は高くはなく、診療ガイドラインの活用促進とともに確実に信頼できると判断できる資料が限られていることを踏まえた教育や研修等の支援環境の整備が求められると考えられた。相談員に対する信頼性の高い情報を見極める力をつけるワークショップ開催は一定の効果があることが確認され、評価検討プロセスを広く共有・公開等していくことの有用性も示唆された。
結論
各側面から見えてきた実態や課題からは、国民の科学的根拠に基づく情報の適切な利用は解決されておらず、利用者の情報ニーズの多様化は進んでいることが示唆された。また各がん関連団体で必要とされる情報の作成・提供、普及の努力が行われているものの、各々の取組では解決が難しい状況が課題として示された。各団体の強みを活かせるよう協議し、具体的な活動を行える場を持つことが、課題解決の一歩として重要である。

公開日・更新日

公開日
2024-03-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-03-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208007C

収支報告書

文献番号
202208007Z