文献情報
文献番号
200907010A
報告書区分
総括
研究課題名
新規融合型がん遺伝子を標的とした肺がんの分子診断法および治療法の開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
間野 博行(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 杉山 幸比古(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
48,828,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は肺がんにおける主要原因遺伝子を同定する目的で、独自に組換えレトロウィルスを用いた臨床検体のがん遺伝子スクリーニング法を開発し、それを用いて新規がん遺伝子EML4-ALKを発見することに成功した。本研究計画では、EML4-ALKの肺がん原因遺伝子としての役割を証明すると共に、EML4-ALKを標的とした分子診断法および分子標的治療法の開発を目指す。
研究方法
EML4遺伝子のどのイントロンからALKへ融合したcDNAも、全て検出可能なように複数のforward primerを組み合わせたmultiplex RT-PCRを開発する。また肺胞上皮特異的にEML4-ALK cDNAを発現するトランスジェニックマウスを作成し肺がんの発症の有無を検証するとともにALK阻害剤による治療モデル実験を行う。
結果と考察
EML4遺伝子のエクソン2、11、17、24を始め複数のエクソン上に設置したforward primerと、ALKのエクソン20上に設置したreverese primerを用いたRT-PCRプロトコールを開発し、これを用いて多数の肺がん検体(喀痰+生検標本)からRNAを抽出してPCR解析を行った。その結果10種類以上の新規EML4-ALKヴァリアントを発見するとともに、喀痰を用いた分子診断が現実に可能なことを証明した。
一方トランスジェニックマウスについては、これらマウスは生後数週で両肺に数百個の肺腺がんを同時多発的に発症し、EML4-ALKの驚くべきがん化能が証明された。これらトランスジェニックマウスに経口接種可能なALK阻害剤を投与し、生体における治療モデル実験を行った。その結果約1ヶ月の治療で腫瘍の速やかな消失が確認された。
一方トランスジェニックマウスについては、これらマウスは生後数週で両肺に数百個の肺腺がんを同時多発的に発症し、EML4-ALKの驚くべきがん化能が証明された。これらトランスジェニックマウスに経口接種可能なALK阻害剤を投与し、生体における治療モデル実験を行った。その結果約1ヶ月の治療で腫瘍の速やかな消失が確認された。
結論
我々の解析により非小細胞肺がんの約5%にEML4-ALKを有することが判り、これらの症例はALK阻害剤による分子標的治療の対象群になると期待される。実際ALK阻害剤は複数の大手製薬企業により精力的に開発されつつあり、一部は既に第一相臨床試験に入ったものもある。これらの分子標的治療への導入の際にEML4-ALK陽性肺がんを正確かつ感度良く検出することは極めて重要であるが、今回の解析によりEML4遺伝子からALK遺伝子への融合ポイントは複数存在することが判った。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-