がんゲノム医療推進に向けたがん遺伝子パネル検査の実態調査研究

文献情報

文献番号
202208005A
報告書区分
総括
研究課題名
がんゲノム医療推進に向けたがん遺伝子パネル検査の実態調査研究
課題番号
20EA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 織田 克利(東京大学大学院医学系研究科統合ゲノム学分野)
  • 宮川 清(東京大学大学院医学系研究科)
  • 鹿毛 秀宣(東京大学 医学部附属病院)
  • 牛久 綾(篠崎 綾)(東京大学 医学部附属病院ゲノム診療部)
  • 大江 和彦(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 企画情報運営部)
  • 牛久 哲男(東京大学医学部附属病院)
  • 田辺 真彦(東京大学大学院 医学系研究科 乳腺内分泌外科学)
  • 河添 悦昌(東京大学大学院 医学系研究科 医療AI開発学講座)
  • 加藤 元博(東京大学医学部附属病院)
  • 高阪 真路(国立がん研究センター 研究所 細胞情報学分野)
  • 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんゲノム医療中核拠点病院等を中心に行われている保険収載されたがん遺伝子パネル検査の診療実態を調査し、がんゲノム医療の推進にむけた課題を抽出することを目的とする。
令和4年度においては、数千例規模を目標に患者アンケートの回収を行うとともに、施設アンケートの研究成果をまとめ、がん遺伝子パネル検査診療実態の把握と評価、および課題点を明らかとする。抽出された課題点に対して、PPI活動のもとで提言書を作成し、広く社会に発信するための成果をまとめる。

研究方法
(1) 提言書の作成
以下の(2)から(6)の活動を通して、「がん遺伝子パネル検査の実態調査研究に基づく日本のがんゲノム医療推進に向けた提言書.  Recommendations to promote cancer
genomic medicine in Japan based on
real world surveys on comprehensive
genomic profiling.」案をまとめ、関係者からの意見やパブリック・コメントを踏まえ、最終版への修正作業を行った。

(2) 連携体制の整備
診療WGから各施設1名ずつの研究協力者とともに、患者用アンケート調査の実施体制を整備した。拠点病院、連携病院への連絡体制を整備した。他のWG、他の厚生労働科学研究費補助金の研究班や、AMED研究班、関連学会(特にエキスパートパネルに関わるガイダンスやマニュアル等の策定ワーキンググループ)とも連携を図った。

(3) 患者アンケートの実施
全都道府県をカバーできるように診療WGを通してがんゲノム医療実施医療機関に協力を依頼し、大規模な患者アンケートを実施した。Webならびに紙回答の双方を受入れることで回答率の向上に努めた。治療到達度、二次的所見についての説明や遺伝カウンセリングの有無については、初回調査で回答できない場合が多いため、追跡調査(3ヵ月後、6ヵ月後)による回答も受け付けた。
(研究登録番号:jRCT1030210547)。

(4) 施設アンケートの実施 
がんゲノム医療実施体制について、2022年1月にがんゲノム医療中核拠点、拠点、連携病院に指定されていた施設全230施設を対象に配布し、回収したアンケート調査結果を解析した。
また、各施設におけるエキスパートパネル実施数、推奨治療に至った症例数、推奨治療に非到達の理由、遺伝カウンセリングが行われた症例数等について、令和3年度の「がんゲノム医療中核拠点病院に係る現況報告書」を参照し、患者アンケート調査結果との照合を行った。

(5) C-CAT利活用検索ポータルの利活用
研究目的での利活用について承認を得た。(施設倫理委員会研究課題番号2020378NI、C-CAT利活用審査会承認番号:#CDU2022-019

(6) PPI活動の実施
令和4年10月10日に市民公開セミナーを開催し、PPIの公募を行った。書類選考、面接選考を経て、多様な立場(がん患者、家族、一般市民、がん患者団体など)から構成される9名のメンバー(アドバイザー2名を含む)が参画し、協働のもとで、アンケート調査結果の検討、課題点の抽出、提言書の作成を行った。PPI会議はWeb形式で計7回実施した
結果と考察
研究結果として、提言書を作成した。パブリック・コメントを募集し、意見を反映した。また、患者アンケート調査結果や施設アンケート調査結果もまとめ、C-CATデータおよび令和3年度の現況報告書から公表されているデータをもとに、治療到達性やがんゲノム医療実施件数等を参照し、提言書の内容との整合性を確認した。

考察では、がんゲノム医療の実態を明らかにし、課題点を抽出した。治療到達性の低さや検査のタイミングの遅さ、医療機関の負担の大きさ、医療者の教育不足、がん情報の限定性、患者の費用負担の大きさ、地域差などが課題として挙げられた。今後、保険収載が見込まれる新たながん遺伝子パネル検査、さらにその先の全ゲノム解析やマルチオミックス解析を実地臨床において保険診療下で行うことも見据え、持続可能ながんゲノム医療実施体制の確立が急務である。
本邦におけるがんゲノム医療推進のためには、本提言書の発出で活動を止めることなく、今後具体的な活動を広げていくことが極めて重要である。
結論
本研究における施設アンケートでは、がんゲノム医療が実施医療機関の多くの医療スタッフの多大なエフォートに支えられており、均質なゲノム医療の提供に貢献していることが明らかとなった。一方で、患者アンケート調査や市民公開セミナー、PPI活動を通して、がんゲノム医療に基づく治療到達性の低さをはじめとした課題点が改めて浮き彫りとなった。がんゲノム医療のさらなる推進が、がん診療全般の質向上には不可欠であり、本研究成果、提言内容を今後の具体的な活動につなげていくことが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208005B
報告書区分
総合
研究課題名
がんゲノム医療推進に向けたがん遺伝子パネル検査の実態調査研究
課題番号
20EA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 織田 克利(東京大学大学院医学系研究科統合ゲノム学分野)
  • 宮川 清(東京大学大学院医学系研究科)
  • 鹿毛 秀宣(東京大学 医学部附属病院)
  • 牛久 綾(篠崎 綾)(東京大学 医学部附属病院ゲノム診療部)
  • 大江 和彦(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 企画情報運営部)
  • 牛久 哲男(東京大学)
  • 田辺 真彦(東京大学大学院 医学系研究科 乳腺内分泌外科学)
  • 河添 悦昌(東京大学大学院 医学系研究科 医療AI開発学講座)
  • 加藤 元博(東京大学)
  • 高阪 真路(国立がん研究センター 研究所 細胞情報学分野)
  • 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保険収載されたがん遺伝子パネル検査の診療実態を調査し、がんゲノム医療の推進にむけた課題を抽出することを目的とする。
検査実施時の登録情報や解析結果に加え、検査実施後の追跡情報として、結果に基づいた治療検討が行われた割合、実際に治療に結び付いた割合、遺伝カウンセリングの実施の有、等について、アンケート(施設用、患者用)を作成し、調査体制を構築する。
患者用アンケートでは、検査実施時の登録情報や説明に関する理解度、結果に基づいた治療検討が行われた割合、実際に治療に結び付いた割合、遺伝カウンセリングの実施の有無等、患者満足度等について、課題点を抽出する。施設アンケートでは、全国のがんゲノム医療中核拠点病院、拠点病院、連携病院を対象に実施する。
最終的に、数千例規模を目標に患者アンケートの回収を行うとともに、施設アンケートの研究成果をまとめ、がん遺伝子パネル検査診療実態の把握と評価、および課題点を明らかとする。抽出された課題点に対して、PPI活動のもとで提言書を作成し、広く社会に発信するための成果をまとめる。
研究方法
(1) 提言書の作成
以下の(2)から(6)の活動を通して、「がん遺伝子パネル検査の実態調査研究に基づく日本のがんゲノム医療推進に向けた提言書.  Recommendations to promote cancer
genomic medicine in Japan based on
real world surveys on comprehensive
genomic profiling.」案をまとめ、関係者からの意見やパブリック・コメントを踏まえ、最終版への修正作業を行った。

(2) 連携体制の整備
診療WGから各施設1名ずつの研究協力者とともに、患者用アンケート調査の実施体制を整備した。拠点病院、連携病院への連絡体制を整備した。他のWG、他の厚生労働科学研究費補助金の研究班や、AMED研究班、関連学会(特にエキスパートパネルに関わるガイダンスやマニュアル等の策定ワーキンググループ)とも連携を図った。

(3) 患者アンケートの実施
全都道府県をカバーできるように診療WGを通してがんゲノム医療実施医療機関に協力を依頼し、大規模な患者アンケートを実施した。Webならびに紙回答の双方を受入れることで回答率の向上に努めた。治療到達度、二次的所見についての説明や遺伝カウンセリングの有無については、初回調査で回答できない場合が多いため、追跡調査(3ヵ月後、6ヵ月後)による回答も受け付けた。
(研究登録番号:jRCT1030210547)。

(4) 施設アンケートの実施 
がんゲノム医療実施体制について、2022年1月にがんゲノム医療中核拠点、拠点、連携病院に指定されていた施設全230施設を対象に配布し、回収したアンケート調査結果を解析した。
また、各施設におけるエキスパートパネル実施数、推奨治療に至った症例数、推奨治療に非到達の理由、遺伝カウンセリングが行われた症例数等について、令和3年度の「がんゲノム医療中核拠点病院に係る現況報告書」を参照し、患者アンケート調査結果との照合を行った。

(5) C-CAT利活用検索ポータルの利活用
研究目的での利活用について承認を得た。(施設倫理委員会研究課題番号2020378NI、C-CAT利活用審査会承認番号:#CDU2022-019

(6) PPI活動の実施
令和4年10月10日に市民公開セミナーを開催し、PPIの公募を行った。書類選考、面接選考を経て、多様な立場(がん患者、家族、一般市民、がん患者団体など)から構成される9名のメンバー(アドバイザー2名を含む)が参画し、協働のもとで、アンケート調査結果の検討、課題点の抽出、提言書の作成を行った。PPI会議はWeb形式で計7回実施した。
結果と考察
研究結果として、提言書を作成した。パブリック・コメントを募集し、意見を反映した。また、患者アンケート調査結果や施設アンケート調査結果もまとめ、C-CATデータおよび令和3年度の現況報告書から公表されているデータをもとに、治療到達性やがんゲノム医療実施件数等を参照し、提言書の内容との整合性を確認した。

考察では、がんゲノム医療の実態を明らかにし、課題点を抽出した。治療到達性の低さや検査のタイミングの遅さ、医療機関の負担の大きさ、医療者の教育不足、がん情報の限定性、患者の費用負担の大きさ、地域差などが課題として挙げられた。今後、持続可能ながんゲノム医療実施体制の確立が急務である。
結論
本研究を通じて、がんゲノム医療の実態と課題点が明らかになった。がんゲノム医療のさらなる推進が、第4期がん対策推進基本計画の実践や本邦のがん診療全般の質向上には不可欠であり、本研究成果、提言内容を今後の具体的な活動につなげていくことが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-03-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん遺伝子パネル検査の実施状況を詳細に把握することを目的として、全国規模でがんゲノム医療実施医療機関を対象に施設アンケートおよび患者アンケートを行った。
施設アンケートを156施設から、患者アンケートを2,057人から回収し、結果をまとめて学会発表、英語論文発表を行うとともに、患者・市民参画の下で課題点を抽出し、「がん遺伝子パネル検査の実態調査研究に基づく日本のがんゲノム医療推進に向けた提言書」をまとめ、2023年5月に公表した。
臨床的観点からの成果
施設アンケートでは、がん遺伝子パネル検査を実施する施設の人的リソースの負担が非常に大きく、人材育成と業務の効率化が必要であることを明らかとした。
患者アンケートでは、検査に対する総合的な患者満足度は約65%で高いスコアであった。一方で、治療到達率が約1割にとどまり、満足度が低い理由は新規治療に到達できないとするものが最多であることも明らかとした。また、治療到達性に地域差があることも示された。実態調査の結果、検査の早期の実施、薬剤開発の促進とあわせ、様々な課題点が抽出された。
ガイドライン等の開発
「がん遺伝子パネル検査の実態調査研究に基づく日本のがんゲノム医療推進に向けた提言書」をまとめ、厚生労働省に提出するとともに一般公開した。がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議の診療ワーキンググループとの共催で、2023年7月22日に市民公開講座を行い、提言書について広く社会に発信した。検査の早期実施を求める要望につき、厚生労働省担当者とも意見交換を行った。
その他行政的観点からの成果
がんゲノム医療において、当事者である患者およびその家族からの直接的な意見を集めたのみならず、患者・市民参画(参画メンバー9名:がん患者、がん患者家族、遺伝性腫瘍患者、患者団体、一般市民など)を実施し、がん診療全般の問題として広く当事者と議論をする機会を設定することができた。厚労省科学研究費補助金やAMEDの他の関連する研究班や関連学会とも連携して提言書を作成し、政策提言に加え、提言内容の実現に向けて実務的な検討委員会等の設置も要望した。
その他のインパクト
「日本医学会総会」のプレイベント「市民公開講座」2023年2月4日(土)において、●基調講演2 「がんゲノム医療の現状と展望 ~患者さんの期待に応えるためには~」のタイトルで講演を行った。
第42回 一般社団法人日本癌学会市民公開講座 2023年9月23日(土・祝)において、「身近になったがんゲノム医療~誰もが当事者~ 」のタイトルで講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
Cancer Sci . 2023 May 10 /2024 Mar;115(3):954-962
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
第19回日本臨床腫瘍学会学術集会 がんゲノム医療中核拠点病院における実施状況 / 第20回日本臨床腫瘍学会学術集会 人的コストに関する検討
学会発表(国際学会等)
1件
AACR annual meeting 2023 Real-world surveillance from cancer patients
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
202208005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 79,141円
人件費・謝金 1,706,388円
旅費 0円
その他 5,907,471円
間接経費 2,307,000円
合計 10,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-