川崎病の疾患関連遺伝子の探索と遺伝子型に基づくテーラーメード治療法の確立

文献情報

文献番号
200907008A
報告書区分
総括
研究課題名
川崎病の疾患関連遺伝子の探索と遺伝子型に基づくテーラーメード治療法の確立
課題番号
H20-ゲノム・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
羽田 明(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾内 善広(理化横浜研究所ゲノム医科学研究センター)
  • 寺井 勝(東京女子医科大学 八千代医療センター)
  • 鈴木 啓之(和歌山県立医科大学)
  • 鈴木 洋一(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
33,491,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ITPKC以外の川崎病発症関連遺伝子を同定しその関与について明らかにする、遺伝子に関する研究成果を実際の川崎病治療に役立てるために、新規発症例を対象とした統一プロトコールによるゲノムコホート研究をおこない、ベッドサイドでの遺伝子検査による冠動脈異常発生リスクとIVIG反応性の予知を可能にする、疾患感受性遺伝子であるITPKCが関与するNFAT系を抑制する薬剤であるシクロスポリン(CyA)の川崎病治療における臨床的有用性を検証する、ことである。
研究方法
1.ITPKCの座位である19番染色体以外の領域より新規感受性遺伝子の同定をすすめる。
2.川崎病の新規発症例に対して、統一治療プロトコールに従い臨床経過を記録する。
3.研究参加への同意が得られた症例の複数の疾患関連遺伝子の多型タイピングをおこない、横断的研究で認められた遺伝子型と治療抵抗性、冠動脈合併症発生との関連を解析する。
4.川崎病疾患感受性遺伝子であるITPKCが関与するNFAT系を抑制する薬剤であるシクロスポリンの川崎病治療における臨床的有用性を検討する。1.では新たにゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)を使って全ゲノムを対象に解析を行なう。2.では東京女子医科大学八千代医療センターと和歌山県立医大附属病院を基幹病院と両施設の関連病院の協力を得てヒト試料収集をすすめる。4.については、IVIG不応の難治性川崎病患者を対象とし、安全性、有効性の検討を行なう。 
結果と考察
川崎病の発症にCASP3 遺伝子のSNPが関与していることを新たに発見し、Human Molecular Geneticsに発表した。また、これまで川崎病の病因や病態との関連が知られていない2つの既知遺伝子領域に有意な関連の再現性が確認できた。IVIG抵抗性とITPKC遺伝子のSNPとの相関については症例の蓄積を最終年度まで待って検討を行なう予定である。IVIG不応例に対するCyA投与についての予備的なとりまとめでは期待が持てる結果が得られ、今後更なる検討を行なう予定である。
結論
GWASにより新たな発症関連遺伝子が複数、明らかになりつつあることから、複数の遺伝子タイピングによる、より精度の高い合併症予測が可能となる可能性が開けつつある。CyA投与は、IVIG不応の難治性川崎病に対する一つの治療オプションとして有用である可能性があり、IVIG治療法を代替あるいは補完する治療法となる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-