がん診療連携拠点病院等の実態把握とがん医療提供体制における均てん化と集約化のバランスに関する研究

文献情報

文献番号
202208002A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等の実態把握とがん医療提供体制における均てん化と集約化のバランスに関する研究
課題番号
20EA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 東 尚弘(東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 吉田 輝彦(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 遺伝医学研究分野)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 市瀬 雄一(国立がん研究センター がん対策研究所医療政策部)
  • 力武 諒子(国立がん研究センター がん対策研究所医療政策部希少がん支援室)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 研究支援センター医療統計室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
・所属機関変更:研究分担者 東尚弘 国立がん研究センターがん対策研究所 医療政策部 →東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室(2022年9月1日~)

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策基本法第2条で定められた基本理念の一つとしてがん医療の均てん化が定められているが、実態としては地域差や施設間差があるとされている。均てん化推進のためには、空白二次医療圏を連携により無くし、また、通常の二次医療圏よりも実態に即したがん医療圏を設定することを促すなどの工夫が絶えず検討されている。一方で資源は有限であるため、第3期のがん対策推進基本計画では均てん化の推進とともに、一部集約化すべき事項があると指摘された。3年目にあたる令和4年度は、がん診療連携拠点病院の指定要件の見直しの年に当たるため、成人、小児、ゲノムの3分野について、それぞれワーキンググループが設置されて具体的な検討が開始されてきた。前年に引き続き、ワーキンググループの活動を支援し、その予備的な議論の場を提供するとともに、引き続きデータの収集を行った。
研究方法
<小児がん拠点病院等>
公開情報をもとに、各都道府県の小児がん拠点病院の配置や、その特徴についての検討を行った。主に、全国がん登録、院内がん登録、QIデータを活用した。
<がんゲノム医療中核拠点病院等>
厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)「がんゲノム医療推進に向けたがん遺伝子パネル検査の実態調査」と連携をとり、調査結果の説明・提供受けるとともに、(株)インテージヘルスケアが独自に医師、がん患者・がん患者家族、一般生活者に対して実施した調査の概要も参照しながら議論を行い、論点をまとめた。
<がん診療連携拠点病院等>
成人のがん診療連携拠点病院については、その指定要件のワーキンググループと密接な連携をとり、①指定要件に関する意見交換、と、②現況報告に関する意見交換を行った。①においては、指定要件が発出されるまでの間、集中的な課題の抽出と意見交換会を行い、そのまとめなどを作成して、本ワーキングループの議論につなげる作業を行った。②については、国立がん研究センターの患者市民パネルや、全国がん患者団体連合会の有志を募り、病院を選ぶ際にどんな情報が必要かの意見聴取を行った。
③さらに、全国がん登録のデータを使って、募集要項に定められていた、患者の居住都道府県、居住二次医療圏内の受療率などの指標の算出と、社会経済的な特性を地理的な代理指標として定義した生存率格差などの検討を行った。
結果と考察
<小児がん拠点病院等>
小児がん拠点病院、連携病院における体制整備においては、人員配置や診療患者数に大きな差があることが改めて確認された。小児がん拠点病院はその他の病院よりも小児がん診療数は多いものの、1-Aとして分類した比較的診療数の多い病院においては、小児がん専門医一人当たりの診療数は拠点病院と変わらないことが示された。また、ALLにおける在院日数は、拠点病院とそれ以外で下がったものの、緩和ケア加算の算定数は有意差がなかったことからも、緩和ケアの体制は十分に行われている可能性があると考えられた。
<がんゲノム医療中核拠点病院等>
制度設計において、目標となるような指標を設定することや、その体制の運営においてはゲノム中核や拠点病院だけではなく、がん診療連携拠点病院が総合的にかかわっていくことが重要であり、その情報へのアクセスを患者へ提供することが重要であり、また、その運営全般について効率化を検討するべきであるとまとめられよう。
<がん診療連携拠点病院等>
意見交換会を行うことは、公式のワーキンググループの議論を活性化し、時間が足りない中での検討を補足するのに有用であると考えられた。公式の議論は数が少なく不十分になりがちであるとともに、なかなか新しい論点が提起されたり、これまでにない視点が導入されることがないと思われるが、今回のがん診療連携拠点病院指定要件は大幅に改定され、がん診療連携拠点病院の役割が再確認されたことは画期的な成果であると考えられる。
 また、現況報告のあり方についても、繰り返しそのデータの信頼性や、公開の有用性についての課題提起がなされた。現況報告は、指定要件の確認は第1義的な役割であるものの、その役割についても客観的なデータを活用して集計することでの正確性の確保や病院の負担軽減おこない、本当に病院に自己申告してもらうべき内容に絞るなどの改善が考えられる。これらを参考に今後有用な現況報告が作成されることが望ましい。
 データについては地理的な診療完結率は今後の都道府県ごとの、診療連携協議会などで検討を継続する必要がある。
結論
がん診療連携拠点病院等の指定要件の検討に資する基礎的なデータや意見収集を研究班によって提供する新しい試みであるが、特に成人拠点において、多様な意見やデータを集約して検討を円滑に進めるモデルとなったと考えられる。研究班を活用することで、広い範囲での焦点の絞った情報の収集・提供が可能になったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208002B
報告書区分
総合
研究課題名
がん診療連携拠点病院等の実態把握とがん医療提供体制における均てん化と集約化のバランスに関する研究
課題番号
20EA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 東 尚弘(東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室)
  • 谷水 正人(独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター 統括診療部、臨床研究センター)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 吉田 輝彦(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 遺伝医学研究分野)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 市瀬 雄一(国立がん研究センター がん対策研究所医療政策部)
  • 力武 諒子(国立がん研究センター がん対策研究所医療政策部希少がん支援室)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 研究支援センター医療統計室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
・所属機関名変更  研究分担者 東尚弘  がん対策情報センター がん臨床情報部(令和2年4月1日~令和3年8月31日)  →がん対策研究所 医療政策部(令和3年9月1日以降)  研究分担者 伊藤ゆり  大阪医科大学 研究支援センター(令和2年4月1日~令和3年3月31日)  →大阪医科薬科大学 医学研究支援センター(令和3年4月1日以降) ・所属機関変更:研究分担者 東尚弘 国立がん研究センターがん対策研究所 医療政策部 →東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室(2022年9月1日~)

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策基本法第2条で定められた基本理念の一つとしてがん医療の均てん化が定められているが、実態としては地域差や施設間差があるとされている。均てん化の推進のためには、空白二次医療圏を連携により無くし、また、通常の二次医療圏よりも実態に即したがん医療圏を設定することを促すなどの工夫が絶えず検討されている。一方で資源は有限であるため、第3期のがん対策推進基本計画では均てん化の推進とともに、一部集約化すべき事項があると指摘された。これらのバランスをとってがん診療連携拠点病院の整備を進めていくことが必要である。
研究方法
初年は意見交換会や限定的な対象に対して現況把握を中心に行い、がん診療連携拠点病院等の実態を把握、それらをもとに、2年目は、がん診療連携拠点病院を対象としたアンケートを実施して最前線の現場における指定要件に対する意見を集約し、実態を記述、さらにそれらをもととして指定要件ワーキンググループの構成員の意見交換を開始した。3年目は、さらに意見交換を進めるとともに、その中で課題として考えられた、データの今後の継続的なモニター方法やその必要な視点について検討をつづけることとした。
結果と考察
1.現状把握
これまでは、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会などで意見調査や意見交換が行われてきたが、今回の調査はそれだけでなく、全がん診療連携拠点病院を対象に調査を行ったことで、広い範囲での意見の収集や実態把握が行えたと考えられる。通常、現況報告では指定要件の充足を含む、状況の把握は行われているが、現況報告自体はそのまま拠点病院の指定の継続可否の判定に使われるために、努力して「充足している」と回答することになる。このような意見調査において「充足を継続可能と考えるか」といった質問をすることでその困難性について把握することができるとともに、具体的な指定要件の充足に対する意見や、その内容を実態調査で知ることができるのは改定に向けた検討に役立つと考えられた。一方で意見は勘案しつつ代替案を検討すべきか、それとも困難を乗り越えて整備を進めるべきかについては、バランス感が難しいと考えられた。
 コロナ禍による影響については、アンケート時点から、総合報告書の執筆時点、さらには今後も、社会的な適応状況が変わってきているところがあり、オンラインによる会議・研修などは急速に普及一般化していると考えられる。また、コロナ禍が終わった際に、会議・研修をオンラインから対面に戻すのか、といった点については引き続き検討の余地がある。
2.データからの検討
 またデータの解析からは院内がん登録の特性など様々なことが判明したと考えられ、何を使うべきかなどは検討の余地がある。情報公開のあり方についても、施設毎の公開の申告とホームページを実際に検索したところで差異が生じている原因については、いくつかの理由が考えられるが、公表をホームページ以外の方法で行っているとすると、今の時代で十分といえるのかを検討しなければならない。また、もしその差異の原因が、自己申告の時期と、調べた時期の違いにあるとすると、ホームページ上の公開は継続性に問題があることになる。
3.意見交換会
 成人の拠点病院の指定要件については制度の開始から時間も経過しており様々な改善点や検討すべき論点があることから、公式なワーキンググループに資する整理を、研究班で行うことは一定の成果があったと考えられる。公式な検討の場というのはどうしても不足しがちであるために、非公式な検討を適宜付加しながら今回のような形で検討するのは、指定要件のように直接、全国の施設に影響のあるものを検討する際の手法として非常に有用であると考えられる。また、小児、がんゲノムに関して検討する研究班が他に設定されていることにも鑑みて、独立した検討と連携・意見交換を行うことは多角的に検討を進めるうえで有用と考えられた。
結論
本研究においては、関係者それぞれの問題意識を総合し、また、現況報告による解析から、現在のがん診療連携拠点病院の種別や地域差などが明らかになり、また、がん診療連携拠点病院等の指定要件の検討に向けた基礎的なデータや意見収集を研究班によって提供する新しい試みは成功したと考えられる。特に成人拠点において、指定要件を検討するワーキンググループに並行して意見交換や詳細な検討・調整が行えたことにより、多様な意見やデータを集約して検討を円滑に進めるモデルとなった。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208002C

収支報告書

文献番号
202208002Z