薬物誘発性肝障害患者のゲノム解析と発症機構研究

文献情報

文献番号
200907004A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物誘発性肝障害患者のゲノム解析と発症機構研究
課題番号
H19-ゲノム・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋史(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 順(東京大学 医学部附属病院)
  • 矢冨 裕(東京大学 医学部附属病院)
  • 吉田晴彦(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
32,894,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、東京大学医学部附属病院における薬物誘発性肝障害(DILI)発症症例を集積し、薬物血中濃度測定、遺伝子解析を網羅的に実施することで、原因薬剤やDILI発症に関わる遺伝的要因を解明すると共に、DILIの原因薬剤と疑われた薬剤を用いた、基礎研究を実施することで、DILIの発症メカニズムを解明し、適切な個別化薬物治療法を提唱すること、そして創薬における肝毒性評価法を提案することを主たる目的として3年計画で実施されている。
研究方法
研究最終年度目となる平成21年度には、集積されたDILI症例を対象に、GWASも含めた遺伝子解析を実施した。また、メタボローム解析において、DILI発症時のヒポキサンチンやγ-Glu-ペプチド濃度の変動から、DILIの発症メカニズムに関する重要な示唆が得られたため、それを糸口とした基礎研究を更に推進した。
結果と考察
遺伝子解析の結果、今後さらに症例数を増やした検討が必須であるものの、日本人においては極めて稀なHLA-B*27がDILI患者群に2症例見出され、また、GWASにおいてはDILIのリスクに関連するいくつかの候補遺伝子を見出すなど、興味深い知見が得られている。また、イトラコナゾールおよびチクロピジンを用いた検討により、in vitro リン脂質輸送評価系がin vivoを反映することを確認し、創薬における胆汁うっ滞型DILIのリスク評価に応用し得ることを示した。また、γ-Glu-ペプチド濃度の分析からDILIにおいては、何らかのメカニズムにより肝臓中グルタミン濃度の低下が起こることが重要である可能性を示した。さらにヒポキサンチンが臨床上用いられる薬剤によるDILIに対しても治療効果を有することを明らかにした。
結論
平成21年度には、臨床的に問題となっているDILIに対し、1)遺伝的背景の解明によるDILI発症リスクの低減、2)肝毒性スクリーニング系の提案、3)DILI発症時の治療法提案、という3つのアプローチから研究を進め、それぞれのアプローチで顕著な進捗があった。今後は本研究で得られた知見を学術論文・学会発表・WEBページへの公開などにより国内外に発信することで、DILI研究がさらに発展・深化し、DILIを完全に克服することが可能となることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200907004B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物誘発性肝障害患者のゲノム解析と発症機構研究
課題番号
H19-ゲノム・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋史(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 順(東京大学 医学部附属病院)
  • 矢冨 裕(東京大学 医学部附属病院)
  • 吉田晴彦(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、東京大学医学部附属病院における薬物誘発性肝障害(DILI)発症症例を集積し、薬物血中濃度測定、遺伝子解析を網羅的に実施することで、原因薬剤やDILI発症に関わる遺伝的要因を解明すると共に、DILIの原因薬剤と疑われた薬剤を用いた、基礎研究を実施することで、DILIの発症メカニズムを解明し、適切な個別化薬物治療法を提唱すること、そして創薬における肝毒性評価法を提案することを主たる目的として3年計画で実施されたものである。
研究方法
本研究においてはまず、DILI発症患者から同意を取得し、DMET Plus(薬物動態関連遺伝子)やHLA遺伝子解析、GWASといった遺伝子解析を実施した。また、DILI患者の血清検体を対象として薬物濃度測定およびメタボローム解析を行い、そこで得られた知見を糸口にDILIの発症メカニズムを解明するための基礎研究を行った。
結果と考察
遺伝子解析の結果、DILIのリスクに関連する可能性のある候補遺伝子を見出すなど、興味深い知見が得られている。また、イトラコナゾール誘発性DILIが疑われた患者の血中イトラコナゾール濃度が上昇していたことを手がかりに基礎的検討を行い、リン脂質輸送の阻害が発症の原因の一つであり、in vitro リン脂質輸送評価系がリスク評価に応用し得ることを示した。また、メタボローム解析によりDILIの進行に伴い血清中γ-Glu-ペプチド濃度は上昇し、逆にヒポキサンチン濃度は低下することを見出した。この知見を基に検討を進めた結果、γ-Glu-ペプチド濃度の上昇は肝臓内のグルタチオン濃度低下を示唆しており、DILIにおいては、何らかのメカニズムにより肝臓中グルタミン濃度の低下が起こることが重要である可能性を示した。さらに、DILIモデルラットを用いた検討により、ヒポキサンチンが臨床上用いられる薬剤に起因するDILIに対する治療薬として有望であることを示した。
結論
本研究の実施により、DILIの遺伝的素因やDILIの発症メカニズムの本質を解明する上で極めて重要な知見が得られた。これらの成果は、世界的にも類を見ないものであり、DILIの克服に直接貢献すると共に、広く国内外の研究者に発信することで、DILI研究をさらに加速させる役割をも担う、極めて重要な研究成果であると確信している。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200907004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、薬物誘発性肝障害(DILI)を発症した患者の検体を経時的に回収して血中濃度測定やメタボローム解析を実施した結果、DILIの発症から回復に至る生体内変化を正確に捉えることが可能となり、DILIの発症メカニズムに迫る重要な知見を得ることが出来た。過去に一部の薬剤についてメカニズムが詳細に解析された例はあるが、幅広い薬物において、臨床データも含めある程度一般的なメカニズムが働いていることを示した点で、本研究は学術的観点からも特筆すべき成果を上げたと言える。
臨床的観点からの成果
本研究では、経時的にDILI患者から得たサンプルを分析することで、γ-Glu-ペプチドがバイオマーカーになり得ること、ヒポキサンチンがDILIの治療薬になり得ることなど、臨床に直接還元しうる成果を上げることが出来た。これらの成果は臨床データに着想を得て基礎研究で詳細な検討を行って得られたものであり、臨床的観点からも重要な知見となった。
ガイドライン等の開発
2010年5月時点において該当ありません。
その他行政的観点からの成果
2010年5月時点において該当ありません。
その他のインパクト
2010年5月時点において該当ありません。

発表件数

原著論文(和文)
0件
報告書に記載したように重要な知見が多く得られているが、特許申請の都合上、公表が遅れている。今後論文化されていく予定である。
原著論文(英文等)
1件
報告書に記載したように重要な知見が多く得られているが、特許申請の都合上、公表が遅れている。今後論文化されていく予定である。
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshikado T., Takada T., Yamamoto T. and et al.
Itraconazole-induced cholestasis: involvement of the inhibition of bile canalicular phospholipid translocator MDR3/ABCB4.
Molecular Pharmacology , 79 (2) , 241-250  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-