乳幼児の発育・発達、栄養状態の簡易な評価手法の検討に関する研究

文献情報

文献番号
202207019A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児の発育・発達、栄養状態の簡易な評価手法の検討に関する研究
課題番号
21DA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 渓円(実践女子大学 生活科学部)
  • 多田 由紀(東京農業大学応用生物科学部栄養科学科)
  • 小林 知未(武庫川女子大学 食物栄養科学部)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター  研究所 小児慢性特定疾病情報室)
  • 森崎 菜穂(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 和田 安代(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 磯島 豪(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 小児科)
  • 杉浦 至郎(あいち小児保健医療総合センター 保健センター保健室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は2つのテーマに分かれているので、それぞれのテーマ別に総括する。
テーマ1:乳幼児の栄養状態の簡易な評価手法の開発
テーマ2:乳幼児身体発育調査に関する検討
[テーマ1]乳幼児の体格と食生活等との関連性について、厚生労働科学研究成果データベースや既存データ(乳幼児栄養調査、乳幼児健康診査(以下健診)等)の分析、市区町村を対象とした調査により検討すること。
[テーマ2]令和5年調査における対象者の抽出方法や人数など調査手法の見直しや、その後(令和5年調査の次)の調査における身長や体重等に関する既存データの活用の可能性と方法について検討することを目的とする。
研究方法
[テーマ1]過去20 年間に実施された厚生労働科学研究成果データベースのレビューを行った。既存データとして、平成27 年度乳幼児栄養調査、愛知県内9 市町および山梨県甲州市の乳幼児健診を活用した縦断分析、全国に在住する調査パネルを対象とした新型コロナウイルス感染症の感染拡大後の生活変化に関する横断調査を使用し、児の体格指標と関連する因子の探索を行った。全国市区町村から無作為抽出した470 市区町村を対象とした調査により、栄養状態と関連があると考えられている問診項目を抽出した。
[テーマ2]乳幼児身体発育調査の調査設計、日本人新生児生理的体重減少率曲線、乳幼児の粗大運動発育の経年変化の3つの観点から研究を進めた。
結果と考察
[テーマ1]食品群別の摂取頻度、食行動における困りごと、生活習慣、養育者の認識に関する項目に、児の栄養状態と関連がある項目がみられた。海外で使用されている評価ツールで設定されている項目の中には、我が国の既存データや乳幼児健診の問診票で用いられる頻度が低いものも認められた。
[テーマ2]
① 乳幼児身体発育調査の調査設計:
1) 調査人数と誤差率に関する検討 身体発育曲線の「3~50パーセンタイル値の差」及び「50~97パーセンタイル値の差」の誤差率に着目して精度を検討した。コンピュータ・シミュレーションにより2010年調査に比べて病院調査は0.3倍、一般調査0歳児は0.7倍、1歳児は0.42倍、2歳以降は1.5倍の人数とすることで、概ね目標とする誤差率に近くなることが見込まれた。さらに検討を加え、最終的にほとんどの年月齢において5%程度の誤差率を確保するために必要な集計客体数は、一般調査の0~1歳未満で1300、1~6歳半で5300、病院調査で2700である。0~1歳未満3000地区、1~6歳半2000地区、病院調査150病院として、一般調査の協力率60%、病院調査の協力率80%を見込むと、おおむね必要な集計客体数が得られると考えられた。
2) 医療施設のサンプリングに関する検討 乳幼児身体発育調査における病院調査の調査対象施設について、現在のわが国の分娩実施状況を調べ、実際に分娩を取り扱っている施設を抽出する方法を検討した。産科を標榜していても分娩を取り扱っていない施設が多いことから、抽出対象を分娩取扱施設に限定することが望ましいと考えられた。
3) 身体測定値に体位や測定月が与える影響の検討 身長及び体重測定値の測定体位及び測定月の影響に関して検討した。これらは特に身長の測定値に影響いるため、調査票には測定体位を記入する欄が必要である。また、将来的に乳幼児健診での身体測定結果を用いる場合には測定体位や測定月の影響を考慮に入れることが必要である。
② 日本人新生児生理的体重減少率曲線 2010年乳幼児身体発育調査の病院調査データを用いて、健常新生児の出生から退院までの栄養法を明らかにし、日本人新生児生理的体重減少率曲線を初めて作成した。この曲線が日本の新生児の体重管理に広く使用されることが期待される。
③ 乳幼児の粗大運動発育の経年変化 1980、1990、2000、2010年の乳幼児身体発育調査データを用いて、乳幼児の粗大運動発育の変化とその要因分析を行うことで、身体計測値以外の情報の有用性を検討した。4つの粗動マイルストーンを達成する平均的な時期は遅延していることが分かった。この変化は、対象児の出生情報・体格を含む児の背景情報では説明されなかった。
結論
[テーマ1]食生活を含む生活習慣や育児環境に関する項目から、乳幼児の栄養状態の評価に用いられるものが抽出できた。海外と我が国の食生活や社会背景の差異を含めて、我が国の乳幼児の栄養状態との関連はさらに検討が必要である。
[テーマ2]
令和5年乳幼児身体発育調査において必要な誤差率を得るための調査人数と誤差率を提示し、病院調査の抽出方法を検討し、測定体位と測定月の影響も示した。また、新生児生理的体重減少率曲線を作成し、乳幼児の粗大運動発育の30年間の変化を明らかにした。乳幼児身体発育調査実施方法および調査結果の活用に関する多くの示唆が得られた。

公開日・更新日

公開日
2023-08-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202207019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,771,162円
人件費・謝金 2,198,487円
旅費 153,000円
その他 2,877,362円
間接経費 0円
合計 9,000,011円

備考

備考
自己負担11円。

公開日・更新日

公開日
2024-03-08
更新日
-