ゲノム解析によるパーキンソン病遺伝子同定と創薬・テーラーメード研究

文献情報

文献番号
200907001A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム解析によるパーキンソン病遺伝子同定と創薬・テーラーメード研究
課題番号
H19-ゲノム・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
戸田 達史(神戸大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 美穂(国立精神・神経医療研究センター)
  • 服部 信孝(順天堂大学 医学部)
  • 山本 光利(香川県立中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
38,268,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
パーキンソン病(PD)につき1)SNP chipによる全ゲノム関連解析を行い、疾患感受性遺伝子を10個以上同定する、2)同時に日本で発見された抗PD薬ゾニサミドを中心に抗PD薬の反応 性、副作用とSNPの関連を明らかにしテーラーメイド治療法を確立する、3)同定された疾患感受性遺伝子の機能解析、蛋白構造解析などに基づく網羅的薬剤 候補化合物探索と日本発のパーキンソン病創薬、をめざす。
研究方法
1)500K SNPチップを用いた全ゲノム関連解析2)病原因遺伝子が未知の常染色体劣性晩発性PD家系遺伝子3)COMT阻害薬の効果推測式の作成4)パーキンソン病と心臓交感神経機能
結果と考察
パーキンソン病(PD)の感受性遺伝子を同定するため、日本人のPD 2,011検体、対照18,381検体を用いて、ゲノムワイド関連解析と2つの再現研究を行った。我々は、1q32(P = 1.52×10-12、PARK16)と、4p15(P = 3.94×10-9)に、新しいPD感受性遺伝子座を同定した。さらに、-synuclein(4q22, P = 7.35×10-17)とLRRK2(12q12, P = 2.72×10-8)の領域に疾患感受性を検出した。白人集団の関連解析の結果と比較することにより、我々は、人種間で共通したPDリスク遺伝子座として、PARK16、SNCA、LRRK2、人種差を示す遺伝子座として、BST1とMAPTを見出した(Nat Genet 2009)。原因遺伝子が未知の常染色体劣性晩発生PD家系において連鎖解析を行いその遺伝子座を決定し、さらに変異を有する候補遺伝子候補を同定した。パーキンソン病におけるWearing off現象改善薬のCOMT阻害薬の効果について、50例のL-dopa test施行例の検討から効果予測式を作成した。心エコーでは麦角系ドパミンアゴニストで用量依存性に心臓弁膜症の増加を確認した。MIBG検査では初期パーキンソン病患者での正常者が10-15%存在したがこれらが全てパーキンソン病であるかは今後の検討を要する。
結論
GWASではPD発症に関わる、2つの新しい遺伝子座を同定した。また、常染色体優性遺伝性PDの原因遺伝子の、典型的PDへの関与を証明した。当該年度の研究は、翌年9月まで延長することとする。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
200907001B
報告書区分
総合
研究課題名
ゲノム解析によるパーキンソン病遺伝子同定と創薬・テーラーメード研究
課題番号
H19-ゲノム・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
戸田 達史(神戸大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

行政効果報告

文献番号
200907001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
パーキンソン病(PD)の感受性遺伝子を同定するため、日本人のPD 2,011検体を用いてゲノムワイド関連解析を行い、PARK16とBST1の新しいPD感受性遺伝子座を同定した。a-synucleinとLRRK2の領域に疾患感受性を検出し、常染色体優性遺伝性PDの原因遺伝子の、典型的PDへの関与を証明した。白人の関連解析の結果と比較し、人種差がPDの遺伝的不均一性に寄与していることを示唆した。

また、平成21年度終了予定の研究課題であったが、平成22年9月まで研究期間を延長する。
臨床的観点からの成果
今後も同様の解析を続け、疾患感受性遺伝子を10個以上同定し、新たな疾患パスウェイを提唱しそこから創薬のヒントを得うるし、バイオマーカーとしても使いうる。同時に抗PD薬の反応 性、副作用とSNPの関連を明らかにしテーラーメイド治療法を確立することを目指す。
ガイドライン等の開発
 
その他行政的観点からの成果
 
その他のインパクト
患者の95%を占める孤発性パーキンソン病は多因子疾患である。孤発性パーキンソン病のリスク遺伝子を同定するため、ゲノムワイド関連解析を行い、パーキンソン病発症に関わ4つの遺伝子座を同定した。また、常染色体優性遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子の弧発性パーキンソン病への関与を証明した。その独創性、卓越性を認められ、トップレベルの科学誌であるNature Genetics誌(Impact Factor30.259)、および新聞各紙、NHKニュースに掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
54件
その他論文(和文)
54件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Satake W, Mizuta I, Suzuki S, et al.
Fibroblast growth factor 20 gene and Parkinson's disease in the Japanese population.
Neuroreport , 18 , 937-940  (2007)
原著論文2
Nagai Y, Inui T, Popiel HA, et al.
A toxic monomeric conformer of the polyglutamine protein.
Nature Struct Mol Biol. , 14 , 332-340  (2007)
原著論文3
Funayama M, Li Y, Tomiyama H, et. al.
Leucine-Rich Repeat kinase 2 G2385R variant is a risk factor for Parkinson disease in Asian population.
Neuroreport , 18 , 273-275  (2007)
原著論文4
Kumazawa R, Tomiyama H, Li Y, et al.
Mutation analysis of the PINK1 gene in 391 patients with Parkinson's disease.
Arch Neurol. , 65 , 802-808  (2008)
原著論文5
Asanuma M, Miyazaki I, Diaz-Corrales FJ, et al.
Preventing effects of a novel anti-parkinsonian agent zonisamide on dopamine quinine formation.
Neurosci Res. , 60 , 106-113  (2008)
原著論文6
Kono S, Shirakawa K, Ouchi Y, et al.
Dopaminergic neuronal dysfunction associated with parkinsonism in both a Gaucher disease patient and a carrier.
J Neurol Sci. , 252 , 181-184  (2007)
原著論文7
Hatano T, Kubo S, Imai S, et al.
Leucine-rich repeat kinase 2 associates with lipid rafts.
Hum Mol Genet. , 16 , 678-690  (2007)
原著論文8
Obi T, Nishioka K, Ross OA, et al.
Clinicopathological study of a SNCA gene duplication patient with Parkinson disease and dementia.
Neurology , 70 , 238-241  (2008)
原著論文9
Mizuta I, Tsunoda T, Satake W et al.
Calbindin 1, growth factor 20, and α-synuclein in sporadic Parkinson’s disease.
Hum Genet. , 124 , 89-94  (2008)
原著論文10
Tomiyama H, Mizuta I, Li Y, et al.
LRRK2 P755L variant in sporadic Parkinson's disease.
J Hum Genet. , 53 , 1012-1015  (2008)
原著論文11
Mitsui J, Mizuta I, Toyoda A, et al.
Mutations for Gaucher disease confer a high susceptibility to Parkinson disease.
Arch Neurol. , 66 , 571-576  (2009)
原著論文12
Shikishima C, Hiraishi K, Yamagata S, et al.
Is g an entity? A Japanese twin study using syllogisms and intelligence tests.
Intelligence , 37 , 256-267  (2009)
原著論文13
Ning Y, Kanai K, Tomiyama H, et al.
PARK9-linked parkinsonism in Eastern Asia: Mutation detection in ATP13A2 and clinical phenotype.
Neurology , 70 , 1491-1493  (2008)
原著論文14
Funayama M, Li Y, Tsoi TH, et al.
Familial parkinsonism with digenic parkin and PINK1 mutations.
Mov Disord. , 23 , 1461-1465  (2008)
原著論文15
Tomiyama H, Kokubo Y, Sasaki R, et al.
Mutation analyses in amyotrophic lateral sclerosis/parkinsonism-dementia complex of the Kii peninsula, Japan.
Mov Disord. , 23 , 2344-2348  (2008)
原著論文16
Sidransky E, Nalls MA, Aasly JO, Aharon-Peretz J, et al.
Multicenter analysis of glucocerebrosidase mutations in Parkinson's disease.
N Engl J Med. , 361 , 1651-1661  (2009)
原著論文17
Satake W, Nakabayashi Y, Mizuta I, et al.
Genome-wide association study identifies common variants at four loci as genetic risk factors for Parkinson's disease.
Nature Genet. , 41 , 1303-1307  (2009)
原著論文18
Kruger R, Sharma M, Riess O, et al.
A large-scale genetic association study to evaluate the contribution of Omi/HtrA2 (PARK13) to Parkinson's disease.
Neurobiol Aging (in press)  (2010)
原著論文19
Fukae J, Sato S, Shiba K,et al
Programmed cell death-2 isoform1 is ubiquitinated by parkin and increased in the substantia nigra of patients with autosomal recessive Parkinson's disease.
FEBS Lett. , 383 , 521-525  (2009)
原著論文20
Tomiyama H, Li Y, Yoshino H, et al
Mutation analysis for DJ-1 in sporadic and familial parkinsonism: Screening strategy in parkinsonism
Neurosci Lett. , 455 , 159-161  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-