都道府県や県型保健所による子育て世代包括支援センターの機能強化支援のための研究

文献情報

文献番号
202207017A
報告書区分
総括
研究課題名
都道府県や県型保健所による子育て世代包括支援センターの機能強化支援のための研究
課題番号
20DA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 拓代(公益社団法人母子保健推進会議)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部 医学域 社会医学講座)
  • 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
  • 高橋 睦子(恵泉女学園大学)
  • 福島 富士子(東邦大学 看護学部看護学科家族・生殖看護学研究室)
  • 上原 里程(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 上野 昌江(関西医科大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和2年度末までの全国展開が目指された子育て世代包括支援センター(以下、「センター」とする)が未設置である自治体に設置を促進するとともに、都道府県及び県型保健所による事業評価システムを構築し、センターにおける切れ目のない妊娠・出産・子育て期における支援の充実と機能の強化をはかることを目的とする。
研究方法
1)センターの設置推進支援
 センター設置率が低い北海道及び沖縄県に、道及び県、また県型保健所の協力を得て、対面またはオンラインによる研修を行った。
2)面談・支援技術の向上支援
 1)において対面による参加者にロールプレイ等による、面談支援技術の向上支援を行った。
3)県型保健所へのヒアリング
 令和3年に県型保健所に質問紙調査を行い、回答率は87.9%であった。回答から、市町村のセンター活動や母子保健活動への支援及びPDCAサイクル推進等について興味深い回答があったところに、対面またはオンラインによるヒアリングを行った。
4)都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健機能支援の手引きの作成
 令和3年度の都道府県及び県型保健所への調査結果及び今年度の興味深い活動を行っている県型保健所に行ったヒアリングをもとに、都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健機能支援の手引きの作成を行った。
5)研究結果の啓発
 研究結果及びポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの連携による支援を進めているフィンランドの取組を学び、代表及び分担研究者によるディスカッションを行うシンポジウムを開催した。
結果と考察
1)センターの設置推進支援
 令和4年の全国の設置率94.6%より、北海道78.8%、沖縄県73.2%と設置が進まず、北海道及び沖縄県と県型保健所の協力を得て、対面及びオンラインの研修を行った。
 北海道の対面会場は稚内保健所、札幌市内、沖縄県の対面会場は那覇市内、石垣市で計4回実施し、設置推進に手応えがあった。
 内容は、こども家庭センターにおける子育て世代包括支援センターの効果的機能等のポピュレーションアプローチに重点を置いた講義と、意見交換、対面支援技術に係るロールプレイ等を行った。自治体の課題として困難事例への対応があることがわかり、後半の研修には事例検討会を加えた。対応では要保護児童対策地域協議会の関わりについてはっきり出てこないことが多く、保健師の支援だけではなく要保護児童対策地域協議会の機能強化が重要なのでは、と考えられた。
2)面談・支援技術の向上
 1)の研修において、面談・支援の手引きの啓発とロールプレイ等による研修を行い、面談支援技術の向上を図り、内容は4)の手引きに反映させた。
3)県型保健所に対するヒアリング
 令和3年度に全国県型保健所に実施した調査で、興味深い記載内容があった、北海道深川保健所、長野県諏訪保健所、石川県南加賀保健所、鳥取県米子保健所、大分県東部保健所、鹿児島県川薩保健所の6カ所に、対面またはオンラインによるヒアリングを行った。早くからセンターが設置された自治体では母子保健活動が活発だったり、県が独自の設置及び効果的な活動に対する事業を行っているところがあった。センターの事業評価は、母子保健活動のデータを一覧にして自治体と一緒に検討が実施されていた。特にPDCAサイクルシステムは県、県型保健所、自治体が展開しているところがあり、センターの効果的活動に関与していると考えられた。
4)都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健機能支援の手引き
 本研究の3年間の研究から、市町村の母子保健機能がポピュレーションアプローチであること、母子保健等のデータからPDCAサイクルによる活動推進を行うことを中心にとりまとめた。信頼関係構築には面談支援技術が重要であり、ロールプレイによる面談支援技術研修の例にも言及した。
5)研究成果との啓発と切れ目のない支援に関するシンポジウムの開催
 令和5年2月17日に、フィンランドと分担研究者の講師からポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを中心とした講演と、分担研究者による討議のオンラインシンポジウムを開催した。508人以上が参加し、74.0%が参考になったとの評価であった。
結論
 ポピュレーションアプローチによる困難が起こる前の支援は、長期的な視点が必要な予防機能であり、母子保健機能として重要である。これには面談支援の技術向上と、関係機関連携、特に都道府県及び県型保健所によるPDCAサイクル推進の支援が必要である。令和3年度に行った都道府県及び県型保健所への調査では、PDCAサイクル推進への取組は多くはなかった。「都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健機能支援の手引き」が活用され、効果的なポピュレーションアプローチが展開されることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2023-08-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-30
更新日
2024-03-25

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202207017B
報告書区分
総合
研究課題名
都道府県や県型保健所による子育て世代包括支援センターの機能強化支援のための研究
課題番号
20DA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 拓代(公益社団法人母子保健推進会議)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部 医学域 社会医学講座)
  • 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
  • 高橋 睦子(恵泉女学園大学)
  • 福島 富士子(東邦大学 看護学部看護学科家族・生殖看護学研究室)
  • 上原 里程(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 上野 昌江(関西医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 令和2年度末までの全国展開が目指された子育て世代包括支援センター(以下、「センター」)が未設置の自治体に設置促進をはかり、都道府県及び県型保健所による事業評価システムを構築し、センターにおける切れ目のない妊娠・出産・子育て期における支援の充実と機能の強化をはかることを目的とする。
研究方法
1)センター設置の推進:令和2~4年度
 センター設置率が低い北海道、徳島県、沖縄県を中心に、道及び県の協力(県型保健所を含む)を得て研修等を実施。
2)面談・支援技術の向上
 1)において面談・支援を行う多職種に、ロールプレイ等による研修を行い、面談支援技術の向上支援。
3)センター活動評価手法の開発
 1)及び2)から、母子保健と子育て支援及び地域コミュニティが連携したPDCAの検討実施。
4)都道府県及び県型保健所の自治体支援の実態把握:令和3年度
 都道府県47カ所、県型保健所354カ所に対して質問紙調査実施。
5)県型保健所へのヒアリング:令和4年度
 県型保健所に対する調査から、センター活動や母子保健活動への支援及びPDCAサイクル推進等を行っている6カ所の保健所にヒアリングを実施。
6)都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健活動支援の手引き作成:令和4年度
 1)2)3)4)5)から作成。
7)研究結果の啓発
 研究結果及びフィンランドの取組を学ぶシンポジウムを開催。
結果と考察
1)センター設置の推進
 センター設置が進んでいない北海道、徳島県、沖縄県において道及び県と県型保健所の協力を得て、対面及びオンラインによりセンター設置推進及び効果的なセンター活動に関する研修を行い、設置促進の一助となった。
2)面談・支援技術の向上
 1)の研修において、面談・支援の手引きの啓発とロールプレイ等による研修を行い、面談支援技術の向上を図り、内容は4)の手引きに反映させた。
3)都道府県及び県型保健所の自治体支援の実態把握
 都道府県の回答率は100%でセンター未設置市区町村が39カ所にあり、「状況把握」89.7%、「情報交換会」46.2%等を行っていた。管轄保健所と連携しての取り組みは「情報交換会」が72.2%で実施されていた。センターの効果的な展開のための取り組みは、「関係機関連携会議の開催」76.6%、「自治体の好取組の情報提供」44.7%が多く、「PDCAサイクルの推進支援」は14.9%と少なかった。
県型保健所の回答率は87.9%であった。センターの設置および活動に関する支援は63.3%が行っており、「関係機関の連携支援」75.9%が多く、「地域の評価」11.5%及び「PDCAサイクルの推進支援」は5.8%と少なかった。自由記載で求めたセンター機能強化に必要と思われる支援は「情報交換・意見交換」33.8%、「人材育成支援」17.4%が多くあげられていた。
4)県型保健所に対するヒアリング
 2)において興味深い記載のある、北海道深川保健所、長野県諏訪保健所、石川県南加賀保健所、鳥取県米子保健所、大分県東部保健所、鹿児島県川薩保健所の6カ所に、対面またはオンラインによるヒアリングを行った。早くからセンターが設置された自治体では母子保健活動が活発だったり、県が独自の設置及び効果的な活動に対する事業を行っているところがあった。センターの事業評価は、母子保健活動のデータを一覧にして自治体と一緒に検討が実施されていた。特にPDCAサイクルシステムは県、県型保健所、自治体が展開しているところがあり、センターの効果的活動に関与していると考えられた。
5)都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健機能支援の手引き
 市町村の母子保健機能がポピュレーションアプローチであること、母子保健等のデータからPDCAサイクルによる活動推進を行うことを中心にとりまとめた。信頼関係構築には面談支援技術が重要であり、ロールプレイによる面談支援技術研修の例にも言及した。
6)研究成果との啓発と切れ目のない支援に関するシンポジウムの開催
 令和5年2月に、研究結果とフィンランドの講師からポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを中心とした講演等のオンラインシンポジウムを開催した。508人以上が参加し、74.0%が参考になったとの評価であった。
結論
 ポピュレーションアプローチによる困難が起こる前の支援は、長期的な視点が必要な予防機能であり、母子保健機能として重要である。これには面談支援の技術向上と、関係機関連携、特に都道府県及び県型保健所によるPDCAサイクル推進の支援が必要である。令和3年度に行った都道府県及び県型保健所への調査では、PDCAサイクル推進への取組は多くはなかった。「都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健機能支援の手引き」が活用され、効果的なポピュレーションアプローチが展開されることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2023-08-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-25
更新日
2024-03-25

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202207017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 子育て世代包括支援センターの設置率が低い北海道、徳島県及び沖縄県と県型保健所の協力を得て、センター未設置の市町村と設置済みの市町村を含むグループを作成し、対面及びオンラインによる研修と意見交換会を行った。管理職の参加も重要であり、グループ作成に配慮したグループワークを行った。困難事例への支援が必要という市町村の声があり、可能な開催地では事例検討会を実施した。未設置市町村は減少し、子育て世代包括支援センターの活動では効果的な活動が展開される等の成果があった。
臨床的観点からの成果
 臨床ではなく、母子保健活動では困難等が起こらないよう予防的活動を行うことから、ポピュレーションアプローチについて述べる。県型保健所に対する調査から、参考になる取組を行っている保健所に対面またはオンラインによるヒアリングを実施した。センターの事業評価は、母子保健活動のデータを一覧にして自治体と一緒に検討等がなされていた。特にPDCAサイクルシステムは県、県型保健所、自治体が展開しているところもあり、センターの効果的活動に関与していると考えられ、ガイドラインに掲載する等の成果があった。
ガイドライン等の開発
 3年間の本研究から、市町村の母子保健機能では予防が重要でありポピュレーションアプローチであること、母子保健等のデータからPDCAサイクルによる活動推進が重要であることを中心にとりまとめた。市町村は単独で関係機関がない場合もあり、医療、保健、福祉等関係機関の連携をすすめ、事業評価やPDCAサイクル促進の支援は都道府県及び県型保健所による支援が重要であることから、「都道府県及び県型保健所による市町村の母子保健機能支援の手引き(案)」の作成を行った。
その他行政的観点からの成果
 自治体が努力義務で設置する子育て世代包括支援センターは、児童福祉法等の改正施行で令和6年4月に市区町村が努力義務で設置するこども家庭センターに含まれる機能となる。妊娠期から妊産婦や子育て家庭と信頼関係を構築し、指摘するばかりでなく予防型の支援を行う関係性が重要である。研究者は都道府県や県型保健所、市区町村等に対し積極的に母子保健従事者等への講演等を行い、子育て世代包括支援センターとこども家庭センターの機能について周知をはかり、よりよい支援が行われるよう努めた。
その他のインパクト
 オンラインでフィンランドと日本から大学教授によるポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを中心とした講演等と、分担研究者による研究成果等のディスカッションのシンポジウム「妊娠期からの切れ目のない支援~こども家庭センター設置に向けて~」を開催した。複数の参加者が同じ画面から参加したことより、508人以上が参加したと推定された。74.0%が参考になったと評価し、研究成果が周知された。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
32件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
ガイドライン等検討
その他成果(普及・啓発活動)
5件
学会シンポジウム等5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202207017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,941,000円
差引額 [(1)-(2)]
59,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,470,429円
人件費・謝金 2,659,602円
旅費 1,446,069円
その他 519,358円
間接経費 1,846,000円
合計 7,941,458円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-