文献情報
文献番号
202207014A
報告書区分
総括
研究課題名
子どもの死を検証し予防に活かす包括的制度を確立するための研究
課題番号
22DA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
沼口 敦(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 医学部 附属病院 救急・内科系集中治療部)
研究分担者(所属機関)
- 竹原 健二(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
- 清水 直樹(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 植松 悟子(研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部救急診療科)
- 木下 あゆみ(独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター 統括診療部)
- 川口 敦(聖マリアンナ医科大学 小児科)
- 井濱 容子(横浜市立大学 医学部)
- 松永 綾子(藤浪 綾子)(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 山本 琢磨(長崎大学医学部)
- 小谷 泰一(三重大学 医学系研究科法医法科学分野)
- 山中 龍宏(緑園こどもクリニック)
- 小保内 俊雅(東京都保健医療公社 多摩北部医療センター)
- 仙田 昌義(総合病院国保旭中央病院 小児科)
- 溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
子どもの死亡の原因に関する情報の収集・管理等に関する体制の整備を実現するため,チャイルド・デス・レビュー(CDR,予防のための子どもの死亡検証)が探索されるが,子どもの死の予防にどう寄与し,安全・安心な社会の実現にどう役割を果たすか,十分に明らかではない。この探索の経過で明らかになった子どもの死亡をめぐる諸課題に対処するため,CDRを主軸とした多機関で継続的に整理し解決する包括的な制度を提案することを目的とする。併せて,実務者および国民への普及啓発戦略と遺族支援(グリーフケア)の提案も目指す。
研究方法
CDRの各段階(準備−調査−検証−提言)にかかる幅広い課題を解決するため,予期せぬ傷害と乳幼児の突然死を主要な対象として取り上げながら,5つの主要課題を設定して探索を行なった。
(課題1)子どもの死亡に対応する包括的な仕組みの基盤策定:CDRモデル事業を運営する多職種会議体が子どもの死を包括的に扱う母体として機能するための方策を探索し,CDRの準備段階での啓発,検証実務における課題解決を探索する。
(課題2)乳幼児突然死の死因究明と予防対応策の探索:乳児の主要な死因のひとつであるSIDSを題材として子どもの死因究明の現状を探索し,CDRの調査段階における課題解決を探索する。
(課題3)子どもの傷害予防にかかる情報収集と予防策の探索:軽症例から死亡例まで幅広いスペクトラムの予期せぬ傷害を題材として情報収集の方法論を探索するとともに,蓄積データの解析・活用など提言段階の課題の探索を行う。
(課題4)子どもを亡くした遺族へのケアのあり方とそれを提供する仕組みの探索:子どもの死亡に際して遺族に提供されるケアの現状を調査し,CDRとグリーフケアの関係構築,求められる対応の内容と各地域での実践体制を探索する。
(課題5)子どもの死亡に関するデータベースの探索:子どもの健康状態や病状等に関する各種の既存データを俯瞰し,CDRにかかる情報の集積様式を探索する。
これら5主要課題をとおして,CDRが安全で安心な社会を構築するための制度として国民に受け入れられ,子どもの死亡事象に真摯に対処する社会基盤として確立する方策を探索した。
(課題1)子どもの死亡に対応する包括的な仕組みの基盤策定:CDRモデル事業を運営する多職種会議体が子どもの死を包括的に扱う母体として機能するための方策を探索し,CDRの準備段階での啓発,検証実務における課題解決を探索する。
(課題2)乳幼児突然死の死因究明と予防対応策の探索:乳児の主要な死因のひとつであるSIDSを題材として子どもの死因究明の現状を探索し,CDRの調査段階における課題解決を探索する。
(課題3)子どもの傷害予防にかかる情報収集と予防策の探索:軽症例から死亡例まで幅広いスペクトラムの予期せぬ傷害を題材として情報収集の方法論を探索するとともに,蓄積データの解析・活用など提言段階の課題の探索を行う。
(課題4)子どもを亡くした遺族へのケアのあり方とそれを提供する仕組みの探索:子どもの死亡に際して遺族に提供されるケアの現状を調査し,CDRとグリーフケアの関係構築,求められる対応の内容と各地域での実践体制を探索する。
(課題5)子どもの死亡に関するデータベースの探索:子どもの健康状態や病状等に関する各種の既存データを俯瞰し,CDRにかかる情報の集積様式を探索する。
これら5主要課題をとおして,CDRが安全で安心な社会を構築するための制度として国民に受け入れられ,子どもの死亡事象に真摯に対処する社会基盤として確立する方策を探索した。
結果と考察
(課題1)CDRモデル事業の実施地域で実務支援を継続し,知見を集積した。運営を困難にする因子のひとつに遺族からの同意取得の課題が挙げられ,そのインパクトを解明するために必要な次年度以降の実地調査を立案した。CDRモデル事業にかかる各方面への啓発事業について実践的に考察した。検証の有効性を担保するためのファシリテーターの要件を考察し,これを確保するための研修資材を開発した。
(課題2)乳児突然死に対する法医学による死因究明の現状を調査し,有効なCDRのために緻密な死因究明が必須であること,この実現のために医療実務者に対するCDRの教育啓発が必要であることを見出した。また司法の関与が大きい死因究明は,現行制度下ではCDRに寄与しにくいことが確認された。臨床医による多施設共同の医学的死因究明を提案し,この実現を模索した。
(課題3)予期せぬ傷害事例について,多施設からの情報収集とNational Database解析を行った前研究の結果を受けて,次年度以降の多施設共同研究による調査手法を確立した。臨床現場で利用可能な電子媒体による情報収集様式を試作し,データフローを確定した。併せて,頻発する河川での溺水事故について工学的検証を行い,CDRにおいて国レベルで検証を行う体制を整備する必要があることを示した。
(課題4)複数の医療施設で個別的に提供されるグリーフケアの現状を調査し,これを担う医療者の意識調査を行った。子どもの死にかかる包括的な取り組みの中にグリーフケアを組み込む際に,死者に対する医療の一環と位置付けられるか,公益のために実施するCDRと個人のために実施するグリーフケアの関係の整理,社会制度として応用するためのありかた等の具体的な課題が新たに抽出された。
(課題5)CDR情報を格納し活用する共通データベースにつき探索した。データの保存様式について現状調査を行い,課題を抽出するための研究手法を立案した。また,調査や検証の結果として保存される文章情報に対して,テキストマイニングの手法により量的データへの変換がどのように可能であるかの予備研究を開始した。
(課題2)乳児突然死に対する法医学による死因究明の現状を調査し,有効なCDRのために緻密な死因究明が必須であること,この実現のために医療実務者に対するCDRの教育啓発が必要であることを見出した。また司法の関与が大きい死因究明は,現行制度下ではCDRに寄与しにくいことが確認された。臨床医による多施設共同の医学的死因究明を提案し,この実現を模索した。
(課題3)予期せぬ傷害事例について,多施設からの情報収集とNational Database解析を行った前研究の結果を受けて,次年度以降の多施設共同研究による調査手法を確立した。臨床現場で利用可能な電子媒体による情報収集様式を試作し,データフローを確定した。併せて,頻発する河川での溺水事故について工学的検証を行い,CDRにおいて国レベルで検証を行う体制を整備する必要があることを示した。
(課題4)複数の医療施設で個別的に提供されるグリーフケアの現状を調査し,これを担う医療者の意識調査を行った。子どもの死にかかる包括的な取り組みの中にグリーフケアを組み込む際に,死者に対する医療の一環と位置付けられるか,公益のために実施するCDRと個人のために実施するグリーフケアの関係の整理,社会制度として応用するためのありかた等の具体的な課題が新たに抽出された。
(課題5)CDR情報を格納し活用する共通データベースにつき探索した。データの保存様式について現状調査を行い,課題を抽出するための研究手法を立案した。また,調査や検証の結果として保存される文章情報に対して,テキストマイニングの手法により量的データへの変換がどのように可能であるかの予備研究を開始した。
結論
CDRは多機関多職種からなる協議体で運営される。当該協議体を形成し,その職務範囲を規定し,効果的に運営し,有用な結果を発出して国民にフィードバックするために,解決するべき課題が山積する。これらの探索を引きつづき継続し,子どもの死を検証して予防に活かすための包括的な制度を探索する必要がある。
また,各地域においてこの制度を有効たらしめるために,全国的な支援制度も併せて探索されることが望まれる。
また,各地域においてこの制度を有効たらしめるために,全国的な支援制度も併せて探索されることが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2024-11-01
更新日
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