DV・性暴力被害者の医療と連携した支援体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202207013A
報告書区分
総括
研究課題名
DV・性暴力被害者の医療と連携した支援体制の構築のための研究
課題番号
22DA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
河野 美江(国立大学法人島根大学 松江保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 治世(東海大学 医学部)
  • 北仲 千里(広島大学 ハラスメント相談室)
  • 和田 耕一郎(島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では、平成24年に内閣府犯罪被害者等施策推進室より「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(以下ワンストップ支援センター)開設・運営の手引き」が出され、ワンストップ支援センターが全都道府県に設置された。産婦人科医との連携で、性暴力被害事実の客観的証明、妊娠や性感染症等の治療やケア、児童相談所の性虐待対応等を含む包括的支援を行っている。一方、男性、性的マイノリティ、子どもの被害者への泌尿器科、外科、小児科等での診察等対応方法は一部の医療機関を除いて確立されていない。
本研究では、男性、性的マイノリティ、子どもを含むすべての性暴力被害者支援において、医師等が性暴力ワンストップ支援センター等と連携し有効な支援を提供する上での現状の課題を把握し、性暴力被害者に対する診療方法の提示など協力医師を増やすために対策を明らかにする。2022年度は、性暴力被害者に対する医療支援について、性暴力被害者を診察する可能性のある診療科の医師に対してアンケート調査を行った。また、DV・性暴力被害者に対する支援と連携について、産婦人科医師、全国のワンストップ支援センター、DV等女性相談支援機関に対してアンケート調査を行った。
倫理面の配慮に関しては、代表者の所属大学において倫理審査委員会の承認を得た。
研究方法
1)性暴力被害者に対する医療支援調査は、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本救急医学会、日本泌尿器科学会会、GID(性同一性障害)学会の医師会員からの回答で、本人から同意が得られた1,940名を分析対象とした。
2) DV・性暴力被害者に対する支援と連携調査の対象は、全国の産婦人科医師、ワンストップ支援センターやDV等女性相談支援機関の責任者である。母体保護法指定医を含む産婦人科医師、ワンストップ支援センター、DV等女性相談支援機関にオンライン・郵送でアンケート調査を行った。

結果と考察
1) 性暴力被害者に対する医療支援調査では、性暴力に関する知識は、産婦人科で高く、泌尿器科、小児科で低かった。またワンストップ支援センターの知識は、産婦人科で高く、小児科、泌尿器科、救急科で低かった。性暴力被害に関する学習経験は、子どもについては産婦人科、小児科の約半数で学ぶ機会があったと答えているものの、泌尿器科や救急科では2割弱であった。男性や性的マイノリティの被害についてはさらに学習経験が低かった。また、子どもの性暴力被害者の支援経験は、産婦人科、小児科で約3割にあった。男性、性的マイノリティの性暴力被害者の支援経験は低かった。
2) DV・性暴力被害者に対する支援と連携調査において、相談支援者からの回答の集計、分析結果は、2023年度の作業を経て得ることを予定している。産婦人科医師は1,225名より返信があり、67.7%が母体保護法指定医師であり、そのうち「人工妊娠中絶を行っている」のは78.1%であった。「患者が人工妊娠中絶を希望した場合に、DVや性暴力があったことを確認していますか」の回答では、約3割の産婦人科医師がDVや性暴力について確認していなかった。
結論
1)多くの医師が性暴力被害者に対する知識が乏しく、ワンストップ支援センターと連携していない現状が明らかになった。今後、医学教育や学会等において、性暴力被害者支援についての教育を提供する必要性が示唆された。また子ども、男性、性的マイノリティの被害者に対するチェックリストや診療マニュアルなど診療体制の整備が急務である。
2)2023年度にはDVや性暴力の相談支援を担う人々(公的相談機関、性暴力ワンストップセンター、民間支援団体)の調査結果を解析し、医療や司法などとの連携についての現状と課題を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202207013Z