文献情報
文献番号
202207012A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の成長・発達評価手法の確立のための研究
課題番号
21DA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
河野 由美(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 水野 克己(昭和大学 医学部小児科学講座)
- 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学臨床医学領域)
- 長 和俊(北海道大学病院周産母子センター)
- 豊島 勝昭(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 新生児科)
- 木本 裕香(大阪母子医療センター 新生児科)
- 九島 令子(東京都立墨東病院 新生児科)
- 石井 のぞみ(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院 新生児科)
- 山口 健史(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
- 橋本 圭司(昭和大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
低出生体重児は、生存退院後も乳幼児期には、小柄なこと、発達の遅れ、発達障害等のリスクが高いことが知られているが、それらの最適な評価法は確立されていない。また、低出生体重児の家族は成長や発達への不安が強く、その支援には地域の医療従事者の関与が必須である。しかし、低出生体重児の成長・発達を適切に乳幼児健診等で評価できるツールがないため、評価や対応が十分できていない現状がある。令和4年度はデータを収集して、低出生体重児の出生後から6歳未満までの発育の目安となる出生体重群別の身体発育曲線を作成し、発達に関する質問紙による低出生体重児の発達水準のスクリーニングの妥当性を検証し、低出生体重児の適切な成長・発達のフォローアップの手法を提案することを目的とした。
研究方法
発育調査は、対象数確保のため研究分担者に追加して、日本新生児成育医学会に研究協力を依頼する。GAMLSS 法で発育推定値を算出し、低出生体重児の身長、体重、頭囲の発育の現況を示す、3,10,25,50,75,90,97パーセンタイル(P)の7本の主要パーセンタイル発育曲線を、出生体重500g毎に5群(A群:出生体重500 g未満、B群:500~1000g未満、C群:1000~1500g未満、D群:1500~2000g未満、E群:2000~2500g未満)に分けて、男女別に作成する。発達評価ツールの研究は、新版K式発達検査(K式)を実施する1歳~5歳の低出生体重児を対象とし、K式、日本語版ASQ-3、年齢別質問票、SDQの結果を収集し、日本語版ASQ-3の各項目の要評価判定のK式によるDQ<70(遅滞判定)の検出に対する感度・特異度により妥当性を検討する。
結果と考察
発育調査では、全国の70研究機関の診療録調査とフォトサーベイを合わせて収集した約9700人のデータのうち、9587人の総測定数約140000件の発育値を使用して発育曲線を作成した。データ分布の偏りの検討から、A、B、C群は退院後から6歳未満までの、D、E群は退院後から4歳未満までの曲線とした。A~Eのすべての群で身長、体重、頭囲の50P値が、2000年乳幼児身体発育調査(乳幼児調査)の3P値を越える時期は、男女ともに出生体重が大きい群ほど早く、頭囲、体重、身長の順であった。身長の50P値は、A群は6歳まで乳幼児調査の3P値を越えなかった。B群の身長50P値は5歳で乳幼児調査の3P値相当、C群は10P値相当であった。D群の身長50P値は1歳までに乳幼児調査の3P値を、E群は10P値を越えたが、以降の追いつきは緩やかだった。本研究の発育曲線はNICUを主とする医療機関を退院した低出生体重児の退院後発育の現況を示す、reference chartsと考えた。保健・医療専門職向けの利用の手引きを作成し、発育曲線とともに健やか親子21のウェブサイトに公開した。
発達評価ツールとして用いた3種類の質問紙の回答が得られた対象のうち、修正18か月児(85人)と暦年齢3歳(132人)が全体の82%を占め、71%が出生体重1500g未満であった。3歳では、日本語版ASQ-3のすべての項目の判定で、K式の全領域DQ<70検出の感度・特異度がともに0.700以上で高かった。1項目以上が要評価と判定された割合は全体の48%と高率であった。修正18か月では、日本語版ASQ-3の微細運動はK式の認知・適応の修正DQ<70の検出、コミュニケーションと問題解決は言語・社会の修正DQ<70の検出の感度・特異度がともに高かったが、他の項目では感度が低値であった。
発達評価ツールとして用いた3種類の質問紙の回答が得られた対象のうち、修正18か月児(85人)と暦年齢3歳(132人)が全体の82%を占め、71%が出生体重1500g未満であった。3歳では、日本語版ASQ-3のすべての項目の判定で、K式の全領域DQ<70検出の感度・特異度がともに0.700以上で高かった。1項目以上が要評価と判定された割合は全体の48%と高率であった。修正18か月では、日本語版ASQ-3の微細運動はK式の認知・適応の修正DQ<70の検出、コミュニケーションと問題解決は言語・社会の修正DQ<70の検出の感度・特異度がともに高かったが、他の項目では感度が低値であった。
結論
低出生体重児のフォローアップの手法として、公開した発育曲線を、保健指導や保護者の育児不安の軽減に役立つ成長の評価ツールとして、乳幼児健診や一般診療で用いることを関係学会や自治体の保健・医療専門職向けに提案した。日本語版ASQ-3の質問紙は3歳の発達水準のスクリーニングツールとしての有用性を認めたが、適応年齢や評価後のフォローアップ方法などの検討が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-06-21
更新日
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