パーキンソン病に対する細胞移植治療確立のための霊長類を用いた前臨床研究

文献情報

文献番号
200906020A
報告書区分
総括
研究課題名
パーキンソン病に対する細胞移植治療確立のための霊長類を用いた前臨床研究
課題番号
H21-再生・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 淳(京都大学 再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 尾上 浩隆(理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題ではパーキンソン病に対するiPS細胞移植治療実現化のための前臨床試験を最終目標としている。平成21年度は分化誘導条件を変えてヒトiPS細胞から神経前駆細胞を誘導し、それらの細胞をパーキンソン病モデルカニクイザル脳に移植することによって移植条件を至適化することを目的とした。
研究方法
すでに樹立されているヒトiPS細胞(253G4, Takahashi et al. Cell 2007)を用いて、フィーダー細胞を用いない浮遊培養系によるドーパミン神経細胞分化誘導を試みた。さらに神経分化誘導日数を28日と42日に分け、分化状態の違うそれぞれの細胞をMPTP全身投与で作製したパーキンソン病モデルカニクイザルの線条体に移植した。移植1カ月前および移植後1、3、6カ月にMRIおよびPET撮像を行ない、その直後に脳切片を作製して免疫組織学的解析を行った。
結果と考察
1)無血清培地を用いた浮遊細胞系でBMPおよびTGFβ/Activin阻害剤を加えたところ、神経誘導効率と神経前駆細胞の生存が有意に向上した。さらにこの細胞をラミニン/ポリオルニチン上で接着培養するとドーパミン神経細胞のマーカー(TH)陽性細胞が多数出現し、HPLCでドーパミンの産生も確認することができた。2)MRIによる計測で、移植6ヶ月後において、分化誘導28日目細胞の移植片は42日目細胞のものよりも有意にサイズが大きいことが明らかになった。また、移植細胞が脳内でドーパミン神経細胞として機能していることをPETにて確認しえた。3)移植6ヶ月目の脳切片の組織学的解析では、いずれの移植片でも悪性所見はみられず、奇形腫の病理所見もみられなかった。免疫染色ではドーパミン神経細胞が移植片の周囲に生着していることが確認されたが、神経前駆細胞がまだ移植片の内部に存在した。これらの結果は安全かつ効果的な細胞移植を目指す上で重要なデータである。
結論
無血清培地を用いた浮遊細胞系にBMPおよびTGFβ, Activin阻害剤を加えることで、ヒトiPS細胞から効率良くドーパミン神経細胞を誘導することができた。この方法でヒトiPS細胞から誘導した神経前駆細胞は霊長類モデルの線条体に生着・分化し、6ヶ月後の免疫組織学的解析でドーパミン神経細胞として生着していることが明らかとなった。この結果は安全かつ効果的な細胞移植を目指す上で重要なデータである。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-12-01
更新日
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