マイクロ・ナノテクノロジーを用いた細胞組織構築のための培養皿の開発

文献情報

文献番号
200906015A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロ・ナノテクノロジーを用いた細胞組織構築のための培養皿の開発
課題番号
H20-再生・若手-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福田 淳二(国立大学法人 筑波大学 数理物質科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 﨑山 亮一(東京女子医大医工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
電気化学的に回収した細胞シートを多層積層化して、生体外で生体類似構造を形成させるためには、実用的なサイズのシート回収が求められる。サイズが大きくなれば、細胞シート全体への均一な電位印加が細胞層の電気抵抗により妨げられることや、細胞へ栄養が充分供給されないことが予想される。そこで、培養皿表面にナノ孔を有する多孔質メンブレンを用いることによって、厚みのある細胞シートの形成とともに細胞シートのサイズに依らない脱離技術を目指す。また本研究では、この技術を金ワイヤに応用して血管構造を有する細胞組織を構築する。以上により、本技術が再生医療の実用化に向けた有望な技術シーズであることを示すとともに、再生医療用の製品として実施例を示す。
研究方法
ナノ孔メンブランに金薄膜を形成し、ここへオリゴペプチドを修飾して細胞を接着させた。厚みのある細胞シートを形成させた後に、電位を印加して細胞シートを脱離させた。そして脱離した細胞シートを別の細胞シートに接着させ、再び電気化学的に脱離させた。この操作を繰り返すことで、厚みのある細胞シートを作製した。
また、金ワイヤに本細胞脱離技術を応用し、コラーゲンゲル内で内表面が血管内皮細胞に覆われた微小流路構造を作製した。そして、送液培養を行い、その後の管腔構造の伸長を評価した。
結果と考察
ナノ孔メンブラン上においても、メンブラン上に金薄膜を形成することで、電気化学的に細胞を脱離出来ることを示した。メンブラン上では、酸素や栄養素の供給が改善されるため厚みのある細胞シートが形成され、これを電気化学的に回収し3枚積層化したところ、300µm以上の細胞シートを得ることができた。
また、本細胞脱離技術を金ワイヤに応用することで、コラーゲンゲル内において内面が血管内皮細胞に覆われた微小流路構造を作製した。血管内皮細胞はその後の送液培養において、コラーゲンゲル側へ管腔構造を伸長し、隣り合う微小流路同士を接続することが示された。この技術を利用することで、血管網が張り巡らされた送液が可能な組織を構築することが可能であると考えている。
結論
電気化学細胞脱離技術がナノ孔メンブランや金ワイヤに応用可能であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200906015B
報告書区分
総合
研究課題名
マイクロ・ナノテクノロジーを用いた細胞組織構築のための培養皿の開発
課題番号
H20-再生・若手-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福田 淳二(国立大学法人 筑波大学 数理物質科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 﨑山 亮一(東京女子医大 医工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、電気化学的原理に基づき培養皿から細胞を素早く脱離する技術を確立する。本新規技術を、積層化細胞シート、肝細胞スフェロイド、血管網組織の構築へと応用することで、本技術が再生医療分野において有用な細胞培養器具となりうることを示す。
研究方法
両末端にシステイン、中央にRGD配列を持つオリゴペプチドを合成した。そして、両末端のシステインのチオール基を介して金と結合した。このオリゴペプチドで修飾した金表面上へ細胞を播種し、負の電位を印加するとともに、表面から脱離した細胞数を計数した。またこの手法を細胞シートの作製にも応用した。
結果と考察
オリゴペプチド修飾金基板上に播種した細胞は、容易に表面に接着・伸展した。そして、電位印加によって接着細胞の脱離が可能か評価したところ、電位印加5分後には90%以上の細胞が表面から脱離可能であることが明らかとなった。この結果を温度応答性ポリマー上における細胞脱離の報告と比べると、5分の1から10分の1の脱離時間であった。細胞シートなどを細胞への影響を抑えながら素早く積層化していく場合に、この事実は重要であると考えている。次に、ペプチド結合基板上で細胞を培養し、二次元的に結合した心筋や繊維芽細胞の単層細胞シートを作製し、さらにそのシートを別の基板上で形成した細胞シートに重ね、2層を結合させた後、基板に電位を印加し、2層の積層シートを回収した。この操作を繰り返すことにより多層化細胞シートを作製可能であることが示された。ただし、細胞シートのサイズが大きくなるほど、シートの脱離に要する時間が長くなったことから、電位を均一に印加する工夫が必要であることも明らかとなった。
結論
オリゴペプチドを用いた細胞脱離技術を確立した。本手法は、心筋細胞や繊維芽細胞シートの積層化に利用可能であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200906015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
オリゴペプチドを修飾した培養皿表面から、電気化学的に細胞を脱離出来ることを示し、血管類似構造の作製に利用できることを示した。この技術は、ティッシュ・エンジニアリングの分野において基盤技術として利用できる。
臨床的観点からの成果
再生医療用培養皿としての実用化を目指しており、また医学部の研究者と共同研究を始めている。将来的に、臨床において再生医療用培養皿として使用する培養器具となるうる。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
R. Inaba, A. Khademhosseini, H. Suzuki, et al.
Electrochemical Desorption of Self-Assembled Monolayers for Engineering Cellular Tissues
Biomaterials , 30 (21) , 3573-3579  (2009)
原著論文2
S. Takahashi, H. Yamazoe, F. Sassa, et al.
Preparation of Coculture System with Three Extracellular Matrices Using Capillary Force Lithography and Layer-by-layer Deposition
Journal of Bioscience and Bioengineering , 108 (6) , 544-550  (2009)
原著論文3
Y. Seto, R. Inaba, T. Okuyama, et al.
Engineering of Capillary-Like Structures in Tissue Constructs by Electrochemical Detachment of Cells
Biomaterials , 31 , 2209-2215  (2010)
原著論文4
T. Okuyama, H. Yamazoe, Y. Seto, et al.
Cell Micropatterning inside a Microchannel and Assays under a Stable Concentration Gradient
Journal of Bioscience and Bioengineering  (2010)
原著論文5
T. Okuyama, H. Yamazoe, N. Mochizuki, et al.
Preparation of arrays of cell spheroids and spheroid-monolayer cocultures within a microfluidic device
Journal of Bioscience and Bioengineering  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2015-06-16