生着率の向上を目指した膵ランゲルハンス島の表面改質

文献情報

文献番号
200906012A
報告書区分
総括
研究課題名
生着率の向上を目指した膵ランゲルハンス島の表面改質
課題番号
H20-再生・若手-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
寺村 裕治(京都大学 放射性同位元素総合センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、臨床応用可能なバイオ人工膵臓を世界に先駆けて開発し、臨床での早期利用を目指すものである。これまでに開発されたバイオ人工膵臓の大きな問題点としては、(1)カプセル化に伴う体積が著しく増加すること、(2)移植後に副作用(血栓症や炎症反応)が起き、細胞障害へと繋がることである。これらの問題点は、臨床試験への大きな足かせとなっていた。この問題を解決するために、本研究では細胞表面にナノからマイクロレベルでの高分子薄膜を形成させ、表面修飾後の膵島の体積増加が起こらないようにした。また、高分子膜に線用系活性酵素であるウロキナーゼを担持させ、抗血栓能を有するものであり、移植後の生着率の向上を試みるものである。
研究方法
同一分子内に親水性高分子と長鎖疎水部を有する両親媒性高分子(ポリエチレングリコール(PEG)脂質)を利用してウロキナーゼを固定した。表面修飾後の膵島の体積増加が殆ど起こらないため、臨床での膵島移植術がそのまま適用でき、移植した膵島の生着率が向上することが期待できる。in vivo評価として、糖尿病マウスの肝臓内へバイオ人工膵臓の移植を行った。
結果と考察
PEG脂質とウロキナーゼで表面修飾した膵島を糖尿病マウスの肝臓内へ移植し、生着率の評価を行った。未処理の膵島の移植群と比較し、正常血糖値期間、移植直後に細胞障害を受けた膵島から放出されるインスリン量、組織化学的評価から、PEGによる表面修飾が生着率に与える影響を詳細に調べた。膵島の表面をPEG修飾あるいはウロキナーゼで修飾することで、移植直後に生じる膵島への細胞障害が著しく軽減できることが分かった。このことは、膵島表面でのみ生じる反応を抑制することで、生着率を向上できることを示す結果である。
結論
膵島表面にPEG修飾あるいはウロキナーゼを固定化することで、移植直後に生じる生体適合性を向上でき、膵島への細胞障害が著しく軽減できた。このことは、生着率を向上できることを示す結果である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200906012B
報告書区分
総合
研究課題名
生着率の向上を目指した膵ランゲルハンス島の表面改質
課題番号
H20-再生・若手-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
寺村 裕治(京都大学 放射性同位元素総合センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、臨床応用可能なバイオ人工膵臓を世界に先駆けて開発し、臨床での早期利用を目指すものである。これまでに開発されたバイオ人工膵臓の大きな問題点としては、(1)カプセル化に伴う体積が著しく増加すること、(2)移植後に副作用(血栓症や炎症反応)が起き、細胞障害へと繋がることである。これらの問題点は、臨床試験への大きな足かせとなっていた。この問題を解決するために、本研究では細胞表面にナノからマイクロレベルでの高分子薄膜を形成させ、表面修飾後の膵島の体積増加が起こらないようにした。また、高分子膜に線用系活性酵素であるウロキナーゼを担持させ、抗血栓能を有するものであり、移植後の生着率の向上を試みるものである。本研究では、高分子薄膜により表面修飾した膵島の開発と移植後の炎症反応を抑制できる機能性素材の開発と機能評価に取り組む。
研究方法
同一分子内に親水性高分子と長鎖疎水部を有する両親媒性高分子(ポリエチレングリコール(PEG)脂質)と積層膜を利用した薄膜に生理活性物質を固定した。in vivo評価として、糖尿病マウスの肝臓内へバイオ人工膵臓の移植を行った。評価モデル実験系としては、異種移植と同種移植を用いた。ストレプトゾトシンにて糖尿病を誘発したマウスへ、PEG脂質を用いて膵島表面をPEG層によりカプセル化したバイオ人工膵臓を移植した。未処理の膵島群として、比較して実験を行った。移植後の血糖値測定、血中インスリン測定、肝臓のHE染色像から評価を行った。
結果と考察
PEG脂質とウロキナーゼで表面修飾した膵島を糖尿病マウスの肝臓内へ移植し、生着率の評価を行った。未処理の膵島の移植群と比較し、正常血糖値期間、移植直後に細胞障害を受けた膵島から放出されるインスリン量、組織化学的評価から、PEGによる表面修飾が生着率に与える影響を詳細に調べた。膵島の表面をPEG修飾あるいはウロキナーゼで修飾することで、同種移植ならびに異種移植において、移植直後に生じる膵島への細胞障害が著しく軽減できることが分かった。
結論
膵島表面にPEG修飾あるいはウロキナーゼを固定化することで、同種移植ならびに異種移植において、移植直後に生じる生体適合性を向上でき、膵島への細胞障害が著しく軽減できた。このことは、生着率を向上できることを示す結果である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200906012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、臨床応用可能なバイオ人工膵臓を世界に先駆けて開発し、臨床での早期利用を目指すものである。これまでの大きな問題点は、(1)カプセル化に伴う体積が著しく増加すること、(2)移植後に副作用(血栓症や炎症反応)が起き、細胞障害へと繋がることである。これらの問題点は、臨床試験への大きな足かせとなっていた。本研究は、これらの解決策を提案し、マウスを用いた移植実験から、その有効性を実証した。
臨床的観点からの成果
本研究では細胞表面に生体適合性の高い高分子薄膜を形成させ、表面修飾後の膵島の体積増加が起こらないように工夫している。また、高分子膜に線用系活性酵素であるウロキナーゼを担持させ、抗血栓能を有するものであり、移植後の生着率の向上を試みるものである。この膵島の表面修飾は、臨床での肝門脈への移植へと移行することができ、臨床試験へスムーズに移行できる
ガイドライン等の開発
現時点では、小動物を用いた膵島の移植実験を中心に行っているために、ガイドラインなどの開発は検討できていない。本研究は、大動物やヒトでの臨床試験へ移行か可能かどうかを見極める研究と位置付けている。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
本研究の成果が認められ、主任研究者が下記の賞を受賞した。
2009年 第36回膵・膵島移植研究会 優秀演題賞
2010年 京都大学 再生医科学研究所 研究奨励賞(長石賞)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yuji Teramura, Hiroo Iwata
Islets surface modification prevents blood-mediated inflammatory responses
Bioconjugate Chem , 19 (7) , 1389-1395  (2008)
原著論文2
Carlos Agudelo, Yuji Teramura,Hiroo Iwata
Cryopreserved Agarose- Encapsulated Islets as Bioartificial Pancreas: a feasibility study
Transplantation , 87 (1) , 29-34  (2008)
原著論文3
Yuji Teramura, Hiroo Iwata
Islets of Langerhans encapsulated with a layer of living cells for improvement of biocompatibility
Biomaterials , 30 (12) , 2270-2275  (2009)
原著論文4
Yuji Teramura, Hiroo Iwata
Surface modification of islets with PEG-lipid for improvement of graft survival in intraportal transplantation
Transplantation , 88 (5) , 624-630  (2009)
原著論文5
Yuji Teramura, Hao Chen, Takuo Kawamoto, at al
Control of cell attachment through polyDNA hybridization
Biomaterials , 31 (8) , 2229-2235  (2010)
原著論文6
Yuji Teramura, Hiroo Iwata
Cell surface modification with polymers for biomedical studies
Soft Matter , 6 , 1081-1091  (2010)
原著論文7
Yuji Teramura, Hiroo Iwata
Bioartificial pancreas microencapsulation and conformal coating of islet of Langerhans.
Adv Drug Deliv Rev , 62 (8) , 827-840  (2010)
原著論文8
Yuji Teramura, Luan Nguyen Minh. Takuo Kawamoto,at al
Microencapsulation of islets with living cells using amphiphilic PEG-lipid and DNA hybridization
Bioconjugate Chem , 21 (4) , 792-796  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-