小児がん及び小児稀少難治性疾患に係る医薬品開発の推進制度に資する調査研究

文献情報

文献番号
202206035A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん及び小児稀少難治性疾患に係る医薬品開発の推進制度に資する調査研究
課題番号
22CA2035
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
鹿野 真弓(東京理科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,186,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児用医薬品は、日本だけでなく国際的にも市場規模が小さいことや治験実施の煩雑さ等の理由から一般的に開発が進みにくく、産官学を交えた議論が進められてきた。
欧米では、小児医薬品開発計画の義務化とインセンティブ付与の仕組み作られ、一定の強制力を持った行政主導の取組みにより、小児医薬品開発が進んできた。
本邦でも希少疾病用医薬品指定制度を通した支援や特定用途医薬品の指定制度等のインセンティブが整備されてきたが、未だ小児対象医薬品開発支援は十分とは言えない状況である。
そこで本研究においては、今後の本邦における小児医薬品、特に小児がんや小児の希少難治性疾患に対する治療薬開発推進の参考となる情報を収集し、取り得る方策の案を検討することとした。
研究方法
① 欧米における小児用医薬品開発促進のための法制度の調査(林憲一)
公表情報に基づき、米国、欧州、英国における小児用医薬品開発促進に係る法制度の情報を収集し、整理した。また、文献調査では十分にカバーできない点は、米国食品医薬品庁(Food and Drug Administration、以下FDA)および欧州医薬品庁(European Medicines Agency、以下EMA)の各担当者に対して対面またはオンラインによるヒアリングを行った。
② 小児用医薬品開発に係るアンケート調査(鹿野真弓)
新薬開発を行う製薬業界団体及び小児の診療・治験に携わるアカデミアを対象として、小児用医薬品開発関連制度に関するアンケート調査を実施した。
結果と考察
① 欧米における小児用医薬品開発促進のための法制度の調査(林憲一)
米国、欧州、英国を対象として小児用医薬品開発促進のための法制度の変遷及び現状に関する情報が得られた。欧米における小児用医薬品開発促進のための法制度の調査から、いずれの国、地域においても、小児用医薬品の試験を企業に義務付けることにより一定の成果を挙げている様子がうかがわれた。欧米のそのような取組みは、日本の小児用医薬品の開発を一層推進する観点からも参考となるものである。ただし実際の運用では、小児試験の実施の困難さや小児における安全性の問題などから、近年、開発が免除あるいは猶予されるケースが増加傾向にあり、欧米の方式をわが国にそのまま導入しても機能するかについては、慎重な検討が必要であろう。また、欧米が共通して課題に挙げている新生児用医薬品と小児用製剤の開発については、日本も加わった国際協力による解決への取組が効果的と考えられる。
② 小児用医薬品開発に係るアンケート調査(鹿野真弓)
製薬企業対象アンケート調査結果から、小児用医薬品開発が進まない理由として開発コストをカバーする収益が期待できないこと、小児対象治験が実施しにくいこと等が示唆された。小児用医薬品開発に効果的な制度として、薬価加算、特許期間の延長、再審査期間の延長拡大等の要望が多かったが、薬価加算については、小児加算は上限20%にもかかわらず5%程度が多い、他の加算との重複が認められない等、制度の運用上の問題の指摘も複数あり、小児用医薬品開発の十分なインセンティブ確立の必要性が示唆された。小児対象治験については、施設選定や症例確保に困難さを感じている意見があった。効率的な小児対象治験のための基盤整備が望まれる。欧米のような小児用医薬品開発を義務化する制度の導入については、対象の限定や課題解決等の条件付きを含めて小児用医薬品開発促進に効果的との回答が2/3を占めた。一方、義務化に否定的な意見は10%程度だが、欧米では規制当局との免除の議論に多大な労力が費やされているとの指摘、現在でも米国と欧州の規制当局の意見が異なる場合の調整の負荷が大きく、さらに日本の規制当局の意見が異なる場合を懸念する意見が見られることから、規制当局間の連携(共同治験相談、共同審査 等)の必要性が考えられる。また、義務化されても小児対象治験の課題はすぐには解決されないとの意見も見られ、国内での小児用医薬品開発に関する課題の解決は義務化にかかわらず必要である。
医療機関対象のアンケート調査でも、小児医薬品の開発が進まない理由として製薬企業の採算性を挙げた回答が最も多く、小児対象治験の困難さ、特に国際共同治験実施のための体制整備不足も課題として挙げられていた。
結論
本邦への義務化制度の導入の可能性については、海外の制度運用上の課題及び国内での小児用医薬品開発に関する課題への対応策も踏まえた慎重な検討が必要であろう。今後、産官学それぞれについて、これらの課題への対応が進むことを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2023-06-23
更新日
2024-05-31

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-23
更新日
2024-05-31

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202206035C

収支報告書

文献番号
202206035Z