結核蔓延防止のためのサルにおける検査方法および診断手法の見直しに資する研究

文献情報

文献番号
202206027A
報告書区分
総括
研究課題名
結核蔓延防止のためのサルにおける検査方法および診断手法の見直しに資する研究
課題番号
22CA2027
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山海 直(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智崇(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 辻村 祐佑(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
  • 藤田 志歩(鹿児島大学 総合教育機構 共通教育センター)
  • 山田 一憲(大阪大学大学院 人間科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,384,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染することで引き起こされる人獣共通感染症であり、現代社会においても油断できない重要視すべき感染症である。サル類は結核菌に対する感受性を有しており、現在もサルの結核防疫をとるべき状況は続いているが、サルでのスクリーニング検査として使用されてきたツベルクリン検査薬が入手できなくなり、サルの結核防疫状況が一変した。そこで本研究では、アンケートによる実態調査と今後の結核防疫のための検査手法候補薬に対する動物の反応性について検索した。
研究方法
本研究は、サル類の結核に関する認識の度合いを確認するためのアンケート調査と今後の結核防疫の主流となり得る候補手法の検証実験から成り立っている。前者では、様々な分野のサルに関わる研究者等が所属している日本霊長類学会の保全・福祉委員会のメンバーで班員を構成した。日本霊長類学会会員および日本動物園水族館協会加盟施設を対象にアンケートを実施し、個人名や施設名がわからない状態で解析を行った。後者の動物実験は、実際にサルを用いた結核研究を実施しているメンバーで班員を構成した。結核に感染したサル、感染後症状がなくなった結核潜伏感染ザルを用いて、動物用ツベルクリン(MOT: Mammalian old tuberculin)の反応を解析した。また、同様の結核感染ザルを用いて、結核特異的な免疫応答を利用したインターフェロン-γ遊離検査を実施した。この検査では、Primagam™とクォンティフェロンTBゴールド™を使用した。
(倫理面への配慮)
 本研究のアンケート調査は、大学院人間科学研究科行動学系研究倫理委員会の審査、承認を得て実施した。アンケートを実施する前に調査協力者に対して本研究の目的、このアンケートや集計結果の扱い、個人情報の扱い等について説明し、同意を得たのちアンケートへの回答を依頼した。また、カニクイザルを用いた実験は医薬基盤・健康・栄養研究所の動物実験委員会の審査、承認を得て実施した。動物実験や動物の扱いは医薬基盤・健康・栄養研究所のルール、動物倫理とくに3Rsについて承知したうえで実施した。
結果と考察
日本霊長類学会会員および日本動物園水族館協会加盟施設を対象に実態調査した結果、サルに関わる人や飼育されているサル種、施設の規模などが多岐にわたることが判明し、結核防疫についても各施設、環境に合わせた対応が必要であると考えられた。また、まずできることとして講習会等により情報発信していくことがあげられる。
スクリーニング検査の候補としてはZoetis社のMOTがあげられる。簡便な方法であり有用ではあるが、結核感染ザルであっても擬陽性判定となることがあるなど、その反応性について知ったうえで使用する必要があることを示した。ただし、結核陰性ザルの確認を目的とすればきわめて有用であると考えられた。また、インターフェロン-γ遊離検査については、Primagam™、クォンティフェロンTBゴールド™ともに、結核感染ザルおよび潜伏結核感染ザルにおいて陽性判定になることが確認されたことから、信頼できる検査方法であると結論づけた。ただし、インターフェロン-γ遊離検査はサルの血液を使い操作が煩雑なため、それぞれの環境にあわせてMOTと併用するのが現実的な結核感染対策の方法かもしれない。
結論
1)サル類に関わっている人の専門や目的が多岐にわたっている。施設ごとに飼育しているサルの種類や数が異なる。2)結核を含む人獣共通感染症対策やバイオセーフティについて考えるときは、それぞれの環境や状況にあわせた具体的な方策を見出すことが必要である。3)情報は多いほどよい。講習会等を通じて情報発信の機会を増やす必要がある。4)MOT皮内投与試験は簡便であり、陰性ザルを確認するという目的ではきわめて有用である。5)MOTを結核感染ザルの摘出を目的に使用する場合は、「明らかな結核感染ザルにおいても擬陽性判定となることがある」「結核潜伏感染ザルでは擬陽性となることが多い」といったことを意識しているべきである。6)インターフェロン-γ遊離検査は、今回の試験においては感染ザル、潜伏感染ザルともにすべて陽性判定となっていることから、信頼できる結核診断法として有用であるといえる。7)入手が容易なヒト用ツベルクリンはサルでは反応しない可能性が高い。本研究では、サルを用いた実験は実施していないが、過去の経験を考察で触れており関連性ある内容であるため記載した。

公開日・更新日

公開日
2023-08-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202206027C

収支報告書

文献番号
202206027Z