文献情報
文献番号
202206025A
報告書区分
総括
研究課題名
エボラウイルス等特定一種病原体に対する核酸アナログの培養細胞における抗ウイルス効果の検証
研究課題名(英字)
-
課題番号
22CA2025
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
海老原 秀喜(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
- 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 黒須 剛(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 吉河 智城(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
エボラウイルス等のウイルス性出血熱の原因となる特定一種病原体は、主要感染標的細胞であるマクロファージ(炎症性応答を司る免疫担当細胞)と肝臓細胞に感染・増殖をして病原性を発現していると考えられている。しかしながらこれまで核酸アナログ製剤を含む多くの薬剤の抗ウイルス活性は、ヒトの標的細胞を用いられず評価されてきた。本研究課題では、核酸アナログ製剤で中でも新型コロナウイルスに対する既承認治療薬(レムデシビル、モルヌピラビル)及び新型インフルエンザの流行に備えて備蓄されているファビピラビルが、主要標的細胞であるマクロファージと肝臓細胞においても、特定一種病原体に対して抗ウイルス活性を示すかを科学的に再検証することを目的とした。しかしながらアフリカのエボラ出血熱のアウトブレイク発生時の患者に対する臨床治験において、これらの核酸アナログ製剤は、未治療群に比べて治療効果は認められたものの、他の中和抗体製剤に比べて致死率の低減効果が低いことが示された。このような背景から、本課題において「抗ウイルス薬として汎用性の高い核酸アナログ製剤が、臨床治験においても、ウイルス性出血熱に対してより優れた致死率低減効果を発揮する」ための課題点を、各種手法を用いて再検証し科学的エビデンスを蓄積することに主眼を置く事とした。
研究方法
各分担課題の研究方法の詳細は分担研究報告書を参照のこと。
1)研究代表者は、研究の総括及び調整を行った。また国立感染症研究所内の関係部署各位と情報共有と連携を図り、BSL-4施設内の設備機器の整備や感染性特定一種病原体を用いた感染実験を行う環境の整備を行った。
2)抗ウイルス薬の毒性評価等に関する体制つくり:
エボラウイルス等の特定一種病原体の主要感染標的である肝臓や単球系の培養細胞に対する毒性を、細胞増殖測定試薬を用いて測定し、核酸アナログ製剤の病原性に関わる標的細胞における細胞毒性と抗ウイルス活性を示す有効濃度の指針を示す結果を算出した。
3)核酸アナログ処理による宿主細胞因子産生への影響の検証:
ヒト単球由来細胞であるTHP-1をマクロファージに分化後、各種薬剤存在下で細胞のLPS(リポサッカライド)処理を行い、24時間後に培養上清中の炎症性サイトカイン・ケモカインなど30種類の宿主因子濃度を測定した。LPSはエボラウイルスの表面糖タンパク質(GP)と同様のメカニズムでToll-Likeレセプター4(TLR4)と結合し、マクロファージに炎症性応答を誘導することから、マクロファージにLPS処理を行ってから、核酸アナログによる炎症性メディエーターの産生を測定した。
4)核酸アナログの抗ウイルス効果をBSL4で検証する実験系の確立と検証:
3種類の核酸アナログ製剤のrVSV-ZaireGP(エボラウイルスのサロゲートウイルス)に対する抗ウイルス効果を、フィロウイルス(エボラウイルス、マールブルグウイルス)感染の主要な感染標的細胞である肝細胞由来Huh-7細胞と単球/マクロファージ由来THP-1の2種類の細胞を用いて評価を行った。
1)研究代表者は、研究の総括及び調整を行った。また国立感染症研究所内の関係部署各位と情報共有と連携を図り、BSL-4施設内の設備機器の整備や感染性特定一種病原体を用いた感染実験を行う環境の整備を行った。
2)抗ウイルス薬の毒性評価等に関する体制つくり:
エボラウイルス等の特定一種病原体の主要感染標的である肝臓や単球系の培養細胞に対する毒性を、細胞増殖測定試薬を用いて測定し、核酸アナログ製剤の病原性に関わる標的細胞における細胞毒性と抗ウイルス活性を示す有効濃度の指針を示す結果を算出した。
3)核酸アナログ処理による宿主細胞因子産生への影響の検証:
ヒト単球由来細胞であるTHP-1をマクロファージに分化後、各種薬剤存在下で細胞のLPS(リポサッカライド)処理を行い、24時間後に培養上清中の炎症性サイトカイン・ケモカインなど30種類の宿主因子濃度を測定した。LPSはエボラウイルスの表面糖タンパク質(GP)と同様のメカニズムでToll-Likeレセプター4(TLR4)と結合し、マクロファージに炎症性応答を誘導することから、マクロファージにLPS処理を行ってから、核酸アナログによる炎症性メディエーターの産生を測定した。
4)核酸アナログの抗ウイルス効果をBSL4で検証する実験系の確立と検証:
3種類の核酸アナログ製剤のrVSV-ZaireGP(エボラウイルスのサロゲートウイルス)に対する抗ウイルス効果を、フィロウイルス(エボラウイルス、マールブルグウイルス)感染の主要な感染標的細胞である肝細胞由来Huh-7細胞と単球/マクロファージ由来THP-1の2種類の細胞を用いて評価を行った。
結果と考察
本課題の実施により(1)エボラウイルスの主要感染標的細胞であるマクロファージにおいて、3種類の核酸アナログ製剤が、エボラウイルスの表面糖タンパク質を有するサロゲートウイルスに対して顕著な抗ウイルス活性を示さなかったこと;(2) LPSによって活性化したマクロファージへのファビピラビルの接種が、エボラ出血熱症例で検出される炎症性サイトカインの産生を誘導すること等、核酸アナログによる抗ウイルス薬治療に関して、新たなる知見が得られた。本結果は、今後、実際のウイルスを用いて、さらなる確認・評価が必要である。一方、これらの詳細な薬剤性状は、これまでに報告されていない。本課題の遂行は、今後実施されるBSL-4施設における感染性エボラウイルスを用いた核酸アナログの抗ウイルス活性の評価、臨床治験の実施、さらに核酸アナログによる抗ウイルス治療の開発と有効的な活用等に貢献する非常に重要な知見を与えるものである。
結論
総じて、本成果は、BSL-4施設内の抗ウイルス薬の前臨床評価体制の整備に加えて、国内における特定一種病原体に対する治療体制の強化を始めとした厚生労働省が推進する新興・再興感染症等の感染拡大時における医療提供体制及び健康危機管理体制の確立・確保に活用に大きく貢献するものである。本課題の実施は、BSL-4施設を用いた特定一種病原体に対する治療法の研究開発を日本国内で完結可能とするスキームの確立と共に、AMED等によるBSL-4を用いた新興・再興感染症の対策に資する実装性の高い研究開発支援事業の創出にも貢献すると考えられる。特定一種病原体によるウイルス性出血熱に対する治療法の研究開発体制の継続的な強化が必要である。
公開日・更新日
公開日
2025-07-22
更新日
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