文献情報
文献番号
202206023A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子改変を行った異種臓器の移植に関する課題や論点等の整理のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22CA2023
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(金沢工業大学 加齢医工学先端技術研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小澤 敬也(自治医科大学 医学部)
- 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部)
- 松山 晃文(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 次世代創薬創生センター)
- 真下 知士(東京大学 医科学研究所)
- 後藤 弘子(千葉大学大学院社会科学研究院)
- 宮川 周士(大阪大学微生物病研究所附属遺伝子情報解析センター)
- 丸山 良亮(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 再生医療製品等審査部)
- 小林 孝彰(愛知医科大学 医学部)
- 塚田 敬義(岐阜大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,646,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究の目的:2022年遺伝子改変された異種臓器をヒトに移植する研究が米国で実施され、世界に大きな衝撃を与えた。わが国ではドナー不足から異種移植に期待する声も大きい。一方でこれまでの人の移植医療とはまったく異なるリスクが想定され、どのような評価が必要なのかについても明確な答えがない状況である。このために遺伝子改変された異種臓器移植におけるリスクを整理し、どのような制度的枠組みを設けるべきか検討を行った。
研究方法
専門家へのヒアリングや文献調査等
まず、異種移植の専門家として、研究に参加いただいた小林班員に異種移植における課題を、真下班員にはゲノム改変についての課題を、米国マイアミ大学で異種移植の専門家である名取先生に異種移植における感染症対策及び米国FDAの異種移植に対するスタンスについてもご紹介いただいた。
メリーランド大学において実施された遺伝子改変ブタ由来の心臓の移植に関する文献をはじめとして、多くの動物由来臓器の非ヒト霊長類や脳死患者への移植への移植研究に関する報告などについて調査を行った。海外規制動向としてFDAは専門家会への諮問を公開しており、その情報についても参考にした。
まず、異種移植の専門家として、研究に参加いただいた小林班員に異種移植における課題を、真下班員にはゲノム改変についての課題を、米国マイアミ大学で異種移植の専門家である名取先生に異種移植における感染症対策及び米国FDAの異種移植に対するスタンスについてもご紹介いただいた。
メリーランド大学において実施された遺伝子改変ブタ由来の心臓の移植に関する文献をはじめとして、多くの動物由来臓器の非ヒト霊長類や脳死患者への移植への移植研究に関する報告などについて調査を行った。海外規制動向としてFDAは専門家会への諮問を公開しており、その情報についても参考にした。
結果と考察
人獣共通感染症リスクについて、ウイルス安全性対策、及び他の感染症リスクの対応を議論し、すでに出されている「 異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」について、この新しい状況への対応の十分性を議論し、改定の必要性をまとめた。異種移植臓器の機能維持へのリスク、免疫抑制剤の使用に関するリスク要因、遺伝子改変に付随するリスクの検出可能性、異種移植の倫理的問題について議論を行った。異種移植の実装化においては様々なリスクを整理し、それらのリスクを国民が共有できる形で開発を進める必要性が議論された。
結論
1)異種移植の開発で人獣共通感染症リスクについて、議論を行いその安全性の確保は患者ばかりでなく公衆衛生の視点も含めるべきとされた。2)ヒト体内に投与された移植臓器の機能維持について十分な評価が必要なこと、3)移植された臓器が産生する因子や生理活性物質のヒトへの適合性の評価の必要性、4)免疫抑制剤の使用とそれに付随するリスクからその使用について十分な解析の必要性があること、 5)遺伝子改変操作に付随するリスクなどの整理を行い、6)ブタ純系統の作出の困難性とクローン技術による遺伝子改変ブタの創生に関連する技術要因について議論した。また7)倫理面の課題として、動物愛護と移植を受けた患者やその近親者を含めた倫理面の課題についても議論が必要とされた。
公開日・更新日
公開日
2023-11-06
更新日
-