脱細胞化生体組織による再生医療技術の臨床応用

文献情報

文献番号
200906002A
報告書区分
総括
研究課題名
脱細胞化生体組織による再生医療技術の臨床応用
課題番号
H19-再生・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岸田 晶夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(大阪工業大学 工学部)
  • 山岡 哲二(国立循環器病センター 生体工学部)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病センター)
  • 湊谷 謙司(国立循環器病センター)
  • 白数 昭雄(ニプロ(株))
  • 小林 尚俊(物質・材料研究機構 生体材料センター)
  • 佐々木 秀次(東京都立広尾病院)
  • 木村 剛(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,002,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工角膜や人工血管の開発が十分でないため、角膜や心臓弁などの組織移植は治療に欠かせない技術となっている。しかし、臓器移植と同様に提供数が少ないことが問題である。この問題を解決するため、動物組織を用いた異種組織移植の開発が各国で試みられている。本研究では、脱細胞化を実現する新しい技術である超高圧印加法を用い、近い将来に臨床応用が期待できる循環器系組織(血管、心臓弁)および角膜組織に対象を絞り、有効性・安全性の評価とともに製品化のための基礎研究を含めた検討を行う。
研究方法
超高圧印加法を用いた脱細胞化技術により、脱細胞化血管および脱細胞化角膜を調製する。臨床応用を想定し、脱細胞化組織の強度、物理特性、および品質安定性を担保する方法について検討する。循環器系については、ミニブタ置換移植実験にて基材の有効性を確認する。長期移植を行い、内膜肥厚、石灰化などについて組織学的に摘出組織を評価する。小口径血管への応用を想定し、小口径血管のための脱細胞化法およびヘパリン等の機能性分子の複合化について検討する。角膜実質部の脱細胞化法の確立と透明性を確保できる条件を探索する。脱細胞化角膜上での角膜上皮・内皮細胞の培養について検討し、角膜置換実験にて有効性を確認する。
結果と考察
循環器系組織については、脱細胞化法の改良により石灰化を抑制できることをブタ移植実験によって確認できた。また、小口径血管の脱細胞化法を確立し、小実験動物を用いた置換移植にて有効性を確認した。角膜系の研究については、角膜の脱細胞化法を確定した。脱細胞化角膜の移植実験では、角膜内部移植での透明性の早期回復と維持および移植角膜の良好な維持が確認できた。上皮欠損部下への移植では、早期の透明性回復および角膜上皮の再生、生着を確認できた。
結論
循環器系組織については、石灰化や強度低下の少ない脱細胞化組織が脱細胞化法の改良により得られた。大口径血管とは異なる脱細胞化法により小口径脱細胞化血管が作製でき、有用性がin vivo実験にて確認できた。角膜については、脱細胞化角膜移植にて角膜上皮の再生と生着が示され、臨床応用の上で非常に有用であると考えられた。長期埋め込み試験と臨床応用に必要な移植法ならびに術後管理法の検討を継続して行う。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200906002B
報告書区分
総合
研究課題名
脱細胞化生体組織による再生医療技術の臨床応用
課題番号
H19-再生・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岸田 晶夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤里 俊哉(大阪工業大学 工学部)
  • 山岡 哲二(国立循環器病センター 生体工学部)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病センター)
  • 湊谷 謙司(国立循環器病センター)
  • 白数 昭雄(ニプロ(株))
  • 小林 尚俊(物質・材料研究機構 生体材料センター)
  • 佐々木 秀次(東京都立広尾病院)
  • 木村 剛(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工角膜や人工血管の開発が十分でないため、角膜や心臓弁などの組織移植は治療に欠かせない技術となっている。しかし、臓器移植と同様に提供数が少ないことが問題である。この問題を解決するため、動物組織を用いた異種組織移植の開発が各国で試みられている。本研究では、脱細胞化を実現する新しい技術である超高圧印加法を用い、近い将来に臨床応用が期待できる循環器系組織(血管、心臓弁)および角膜組織に対象を絞り、有効性・安全性の評価とともに製品化のための基礎研究を含めた検討を行う。
研究方法
血管、心臓弁、角膜を対象組織として、超高圧印加法を用いた脱細胞化技術により脱細胞化組織を調製する。各組織の最適脱細胞化法を探索するとともに、脱細胞化臨床応用を想定し、脱細胞化組織の強度、物理特性、および品質安定性を担保する方法について検討する。循環器系については、ミニブタ置換移植実験にて基材の有効性を確認する。長期移植を行い、内膜肥厚、石灰化などについて組織学的に摘出組織を評価する。小口径血管への応用を想定し、ヘパリン等の機能性分子の複合化について検討する。脱細胞化角膜上での角膜上皮・内皮細胞の培養について検討し、角膜置換実験にて基材の有効性を確認する。
結果と考察
循環器系組織については、超高圧脱細胞化法の改良およびエラスチン除去法により石灰化を抑制できることをブタ移植実験によって確認できた。また、小口径血管の脱細胞化法を確立し、小実験動物を用いた置換移植にて有効性を確認した。さらに、ヘパリンとの複合化も可能であった。角膜については、心臓弁・血管系とは若干異なる方法であるが、脱細胞化法を確定した。移植実験では、角膜内部移植での透明性の早期回復と維持および移植角膜の良好な維持が確認できた。上皮欠損部下への移植では、早期の透明性回復および角膜上皮の再生、生着を確認できた。
結論
血管、心臓弁の循環器系組織については、石灰化や強度低下の少ない脱細胞化法と保存に関する基礎的知見が得られ、また、脱細胞化組織の有効性がin vivo実験にて示された。角膜については、長期の移植成績が優れていたことから、早期の臨床応用が可能になると考えられた。臨床応用に必要な移植法ならびに術後管理法の検討を継続して行う。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200906002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
欧米で開発が進んでいる脱細胞化組織について、我が国独自技術開発とその有効性を示すことができた。高機能な足場材料としての応用が期待され、他の技術(幹細胞や細胞シート)との組み合わせにより再生医療の発展に寄与できると期待される。
臨床的観点からの成果
特に角膜において、長期の移植成績が優れていたことから、早期の臨床応用が可能になると考えられる。血管系においても、小口径血管および大口径血管の脱細胞化および保存についての基礎的知見が得られ、冠動脈バイパス術や血管パッチなど実用的な応用への道が拓けた。
ガイドライン等の開発
研究代表者が参加するISO/TC194/SC1において、生物素材の安全性についての標準化が図られている。欧米の委員との協議において、脱細胞化生体組織を排除しない基準の作製をはかり、これが認められた。議論の際には、本研究において得られた成果を基盤として意見を述べた。
その他行政的観点からの成果
我が国には脱細胞化組織を用いた医療デバイスは存在していない。一方、組織バンクが充実している米国においては、ヒト組織やブタ組織を用いた脱細胞化組織が既に臨床応用され、新興企業が参加して今後ますます発展が見込まれている。本研究で得られた成果は、これらのデバイスが我が国に輸入された際に、PMDA審査等の基盤的知見として役立つことが考えられる。
その他のインパクト
日経産業新聞2007年4月12日版に「ブタ角膜で視力回復」のタイトルで取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
75件
学会発表(国際学会等)
52件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T Kimura,T Fujisato, A Kishida et al
Preparation of PVA/DNA hydrogels via hydrogen bonds by ultra high pressure treatment and controlled release of DNA from hydrogels for gene delivery
Journal of Artificial Organs , 10 (2) , 104-108  (2007)
原著論文2
K Nam, T Kimura, A Kishida
Physical and biological properties of collagen-phospholipid polymer hybrid gels
Biomaterials , 28 (20) , 3153-3162  (2007)
原著論文3
T Fujisato, A Kishida, S Kitamura et al
Reduction of Antigenicity and Risk of Infection in Regenerative Tissue Transplantation by Cold Isostatic Pressing
High Press Biosci Biotech , 1 (1) , 161-165  (2007)
原著論文4
舩本誠一、小林尚俊、岸田晶夫 他
超高圧処理技術を応用した人工角膜の作成と評価
高圧バイオサイエンスとバイオテクノロジー , 2 (1) , 138-144  (2008)
原著論文5
寺田堂彦、岸田晶夫、藤里俊哉 他
バイオスカフォールド
バイオマテリアル , 26 (4) , 309-319  (2008)
原著論文6
S Sasaki, H Kobayashi, A Kishida et al
In vivo evaluation of a novel scaffold for artificial corneas prepared by using ultrahigh hydrostatic pressure to decellularize porcine corneas
Molecular Vision , 15 , 2022-2028  (2009)
原著論文7
藤里俊哉
Tissue Engineeringによる心臓弁
Circulation Up-to-Date , 4 (4) , 470-478  (2009)
原著論文8
藤里俊哉
バイオメカニクス
人工臓器 , 38 (3) , 1406-1411  (2009)
原著論文9
K Nam, T Kimura, A Kishida et al
Preparation of a collagen/polymer hybrid gel designed for tissue membranes. Part I: Controlling the polymer–collagen cross-linking process using an ethanol/water co-solvent
Acta Biomaterialia , 6 (2) , 403-408  (2010)
原著論文10
K Nam, T Kimura, A Kishida et al
Preparation of a collagen/polymer hybrid gel for tissue membranes. Part II: In vitro and in vivo biological properties of the collagen gels
Acta Biomaterialia , 6 (2) , 409-417  (2010)
原著論文11
S Funamoto,T Fujisato, A Kishida et al
The use of high-hydrostatic pressure treatment to decellularize blood vessels
Biomaterials , 31 (13) , 3590-3995  (2010)
原著論文12
Y Hashimoto, H Kobayashi, A Kishida et al
Preparation and characterization of decellularized cornea using high-hydrostatic pressurization for corneal tissue engineering
Biomaterials , 31 (14) , 3941-3948  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-