大規模災害時の保健医療福祉活動における被災者の情報収集・運用方法の標準化に向けた実証研究

文献情報

文献番号
202206019A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害時の保健医療福祉活動における被災者の情報収集・運用方法の標準化に向けた実証研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22CA2019
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 拓(大阪公立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
  • 萩行 正嗣(株式会社ウェザーニューズ AIイノベーションセンター)
  • 松川 杏寧(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
29,190,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 大規模災害発生時に支援が必要な避難所入所者及び在宅避難者(要支援避難者)の情報収集は、保健、医療、福祉、防災等の各分野で独自に実施されているため、分野間での混乱が大きく、情報取得や共有を効率化し、支援者及び被災者双方の負担軽減は急務である。また、研究上も我が国において医療・保健・福祉と防災の連携が重要であることが指摘されている(菅野 2021)。
 本研究の目的は、災害時の福祉資源調整の要となりうるD-VICSや、避難所環境を中心とした災害時公衆衛生の要となりうるD24H(第2期SIPにおいて作成された、災害時保健医療福祉活動支援システム、Disaster/Digital information system for Health and well beingの略)といったシステムを運用して災害時の保健・福祉の調整を円滑に実施するために必要な標準的な体制(災害福祉コーディネーターの要件定義や必要な位置づけ等)や手続き(個別避難計画との連動手法等)を策定し、社会実装につなげることである。
研究方法
 研究は5回(令和4年度3回、令和5年度2回)の全体会議を開催し、研究者、自治体、厚生労働省、社会福祉協議会等で意見交換を実施しながらD-VICSの活用も含めた災害時における保健・福祉調整の在り方を検討した。研究では、平時から災害発生後までのフェーズにおけるD-VICSの運用も含めた災害時の保健・福祉調整における県、市町村、関係団体の各レベルにおける対応手順の課題の抽出を行うために、検証を令和4年度に3回、令和5年度に2回実施した。これらの結果を踏まえ災害時の保健・福祉調整の標準手順を策定した。
結果と考察
 「災害福祉コーディネーター」に求められる要件を当面の活動と将来の活動の2つに区分し明確化した。また、D-VICSについて、鳥取県での検証を通してユースケースの有用性の確認することができた。また、D-VICSと個別避難計画と標準的な連動を確認できた。
 D-VICSを活用した災害時保健・福祉調整の訓練プログラムについては、マイナンバーカードを個人確認に利用する方針変更に対応するため、進化版のD-VICS(D-VICS2.0)の設計を特に、クラウド型被災者支援システムとの連携を意識して行なった。訓練プログラムのバックデータとして利用する福祉情報のデータ収集と分析については、全国のオープンデータを収集し、要介護認定者数の自治体ごと(保険者ごと)のデータベースの作成に加え、通所や訪問などの介護サービス利用状況もデータベースに加えた。
検証はオンライン及び訪問により3回実施(令和4年度2回、令和5年度1回)し、加えて鳥取県内市町村アンケートの結果を踏まえて実災害時の保健・福祉調整における体制・手続き・課題などを確認することができた。平時から災害発生後までのフェーズにおけるD-VICSの運用も含めた災害時の保健・福祉調整における県、市町村、関係団体の各レベルにおける対応手順の課題の抽出を行い、災害時の保健・福祉調整の標準手順を策定した。
結論
 D-VICSの活用も含めた災害時保健・福祉調整の標準手順は、研究段階を脱したと考えられる。今後は、本研究で検討された「災害福祉コーディネーター」の要件定義を行うとともに、都道府県・市町村・保健所などの関係機関が連携して対応するための標準手順等について、これまでの制度である「保健医療福祉調整本部」の運用との関係も含めて実際の運用方法を検討し、ガイドライン等の作成を行うことが必要である。また、本研究で得られた課題や提言を反映させた本番システムの作成・運用が期待される。本番システムに向けては、①検証で明らかになった課題等を要件に反映させる、②フェーズに応じた状況を想定した利用方法や、訓練における利用などを想定した、より細やかなマニュアルを作成する、③本システムの活用について、市町村等自治体では、事前入力と個別避難計画への活用など、地域の実情に応じた具体的な対応について、地域的な特性を踏まえたガイドライン作りやモデル事業などを活用しながら整理・検討していく、といったことが求められる。また、運用体制、法制度上の必要な措置、財源、個人情報に関わる法的整備などの検討など行いながら本番システムの作成・運用を進めていくことが必要である。特に個人情報把握のシステムと体制については、事前に決めておくことが必要である。また、D-VICSは県境を越えた被災者の広域避難移動も含めた情報把握も求められることから特定の都道府県が運用するシステムではなく、国として運用が求められることから運用主体についてもこの点を踏まえて検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2025-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202206019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
東日本大震災以降、災害のたびに充実が期待されてきた、平時の社会保障と防災(被災者支援)の連携、特にその基盤となる情報の収集・共有・活用体制の標準形が導出できた。
臨床的観点からの成果
現場との連携による実証実験を鳥取や長野でで実施した。その際、行政、NPO、生協、福祉専門職など多様な主体が参加した。その結果、大きな混乱がなく、平時から運用していくうえで、構築したシステムや体制の妥当性が確認できた。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
現在進められている被災者支援のあり方の検討や災害ケースマネジメントの実装(社会保障と防災の連携が期待されている)の推進に貢献した。
その他のインパクト
令和6年能登半島地震では研究開発してきたことを基本アイデアとして広域避難者対応のためのデータベースが設置され運用されている。また、令和5年度補正予算のデジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプ(TYPES)事業(石川県実施)として、全国普及のための要件定義が行われ、防災庁設置準備においても議論されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-04-30
更新日
2025-06-04

収支報告書

文献番号
202206019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
37,947,000円
(2)補助金確定額
35,895,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,052,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,299,801円
人件費・謝金 2,339,289円
旅費 1,344,145円
その他 15,155,644円
間接経費 8,757,000円
合計 35,895,879円

備考

備考
確定額および返還額は端数切り捨てで処理されるため。

公開日・更新日

公開日
2024-10-16
更新日
-