国内外の治験をとりまく環境に係る最新の動向調査研究

文献情報

文献番号
202206017A
報告書区分
総括
研究課題名
国内外の治験をとりまく環境に係る最新の動向調査研究
課題番号
22CA2017
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 暁洋(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 臨床研究支援部門 / 臨床研究推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 布施 望(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 近藤 直樹(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究・治験推進室)
  • 齋藤 翔(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
  • 中谷 大作(大阪大学 医学部)
  • 中村 健一(国立がん研究センター中央病院 国際開発部門)
  • 井上 悠輔(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,318,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の治験実施環境については「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」 等に基づき、省庁一体となりその改善に取り組んで来た。また、厚生科学審議会臨床研究部会にて「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について2019年版とりまとめ」が作成され、臨床研究・治験の推進に係る基本的な考え方が示された。
一方、ワクチン開発・生産体制強化戦略(R3/6/1閣議決定) にて、「我が国においてワクチン開発・生産を滞らせたすべての要因を明らかにし、解決に向けて国を挙げて取り組む必要がある」とされているように、COVID-19に関連する薬剤開発では、日本は新規薬剤、既存薬のリポジショニングなど有望なシーズを保有していたにもかかわらず、諸外国の早期開発に成功した事例に比して、日本発の成功事例は極めて少ない現状があり、より一層の臨床研究・治験の推進が求められる。
そこで、本研究班では、日本の治験環境に関して、現状調査及び諸外国との比較を行うことによって、日本の治験環境の問題点を明らかにすることを目的とした。
研究方法
本研究では医薬品等開発プロセスのうち治験環境に焦点をあて、治験依頼者、参加医療機関、治験参加者のそれぞれの視点から日本と諸外国との差異を比較検討することによって、日本において治験を滞らせた要因を明らかにすることを目的とし、以下の分担研究課題を設定して研究を行った。
分担研究課題1.
Covid-19関連等治験に関するインタビューによる定性的調査(研究分担者:斎藤翔/中谷大作/布施望/佐藤暁洋)
分担研究課題2.
治験依頼者側としての課題抽出・調査(研究分担者:布施望/佐藤暁洋/近藤直樹、 協力者:製薬協)
分担研究課題3.
治験実施機関側としての課題抽出・調査(研究分担者:近藤直樹)
分担研究課題4.
治験審査委員会側としての課題抽出・調査(研究分担者:井上悠輔)
分担研究課題5.
治験参加者側としての課題抽出・調査(研究分担者:布施望/佐藤暁洋)
分担研究課題6.
製薬企業等への定量的調査の実施(研究分担者:布施望/中村健一/佐藤暁

上記の分担研究課題1~5に関しては、医療機関・治験依頼者および関連団体、治験参加者に対してインタビューを行い、治験環境の国内外の実態調査および課題を抽出するとともに、既に実施されている調査結果や関連する文献を用いた調査を追加した。
その調査結果を元に班会議にて、調査方針(課題の選定およびインタビュー、文献調査では得られない情報に関する医療機関・治験依頼者向けに実施するアンケート項目、さらに追加すべき文献調査項目)を決定した。
洋 協力者:製薬協)
結果と考察
治験のCost, Speed, Qualityについては、Qualityは従前から問題なく、Speedは改善傾向にあるが、Costについてはいくつかの課題が残っていることが示唆された。
Costの問題としては、CRA費用等に関しては、Central IRBが普及していないことや医療機関側の電子化が遅れていることに起因する治験依頼者側の事務作業量の増加がcostを海外に比べて押し上げていると考えられた。また、一部には ICH-GCPとJ-GCPとの違いに起因する制度上の違いもあると考えられる。
医療機関費用に関しては、海外では一般的に用いられているFMV/BMCが日本ではまだテスト導入段階にあることがわかった。FMV/BMCは透明性確保の観点も含めて、今後は日本でも外資系企業を中心に導入が進んでいくことが予想されるが、導入には施設側にも大きな負担がかかることが予想される。
Costを改善するKey Factorとしては、Central IRBの導入によって、集約化と治験の電子化を同時に進めることが、事務作業量の低減と電子化システムの導入コストの低減には有効である可能性がある。ただし、医療機関側と治験依頼者側のインセンティブに不均衡があり、医療機関側にどのようにインセンティブを付与するかが一つの課題ではないかと考えられた。
その他、COVID-19の影響、感染症領域での治験、治験情報へのアクセス、海外治験ネットワーク事例、治験DXなどについても検討・考察している。
結論
以前のドラックラグ解消には、日本の施設が国際共同治験に参加できるまでにレベルアップさせていくことに重点が置かれ成果を上げたと考えられるが、ドラックロスではレベルを維持したままより効率性を高めることが国際競争力の観点では重要であると考えられた。
その方策としては、Central IRBやFMV/BMC、治験の電子化/DXなどが重要であると考えられる。また、治験の電子化/DXなどは、COVID-19パンデミック下のような状況での治験環境のレジリエンス向上にも重要である。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202206017C

収支報告書

文献番号
202206017Z