文献情報
文献番号
202206012A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期医療施設への妊産婦のアクセスの確保に向けた調査研究
課題番号
22CA2012
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 隆(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 増山 寿(岡山大学 学術研究院医歯薬学域 産科・婦人科学)
- 三浦 清徳(長崎大学 医学部・歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、周産期医療体制が十分とは言えない地域における妊産婦の医療機関までのアクセスの確保に対する自治体や医療機関の取組、妊産婦への啓発や地域における搬送システムを含む連携体制等について好事例の収集を行い、第8次医療計画の策定に向け、都道府県が安心・安全な周産期医療体制を構築するために参考とできるような資料を提供することを目的とした。
研究方法
地域における妊産婦の医療機関へのアクセスについての現状・課題や取組を把握するために調査票を作成し、各圏域における分娩数、周産期医療機関までの距離、交通手段、移動所要時間、地理的・天候的なアクセスを阻害する要因、妊産婦の医療機関へのアクセスを確保するための自治体や医療機関の取組を調査項目とした。周産期医療体制においてアクセス等に課題があると考えられる29道県(北海道、青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、新潟、石川、福井、茨城、千葉、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、奈良、和歌山、岡山、鳥取、島根、愛媛、高知、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄)を調査対象とし、これらの地域の自治体と調査拠点施設(大学病院産婦人科)に対して、アンケート調査を実施した。
結果と考察
29道県に調査を依頼した結果、28道県より回答を得た。その結果、28道県すべてにおいてアクセス支援を行っていることが明らかとなった。しかしながら、支援の方法は地域により異なり、天候もアクセスに大きく影響を及ぼすことも改めて知ることができた。調査した道県における離島や陸の孤島といった周産期医療の基幹施設から離れた場所に住む妊婦は約2.6 %存在し、ほぼすべての妊婦に何らかの形で支援を受けられる状況にあると考えられた。
具体的には、陸の孤島、離島、冬季では天候により道路が遮断、公共交通網の不十分さ等により分娩施設まで60分以上かかる地域が存在することが改めて確認された。調査の結果、何らかの対策がとられている地域も存在したが、依然、解決に至っていない地域も存在することも判明した。さらに、出生数が年間100~300人と少ないにもかかわらず、地域周産期母子医療センターを含む基幹施設を維持している医療圏域が存在することが判明した。この状況は働き方改革を進める上での重要な課題と考えられる。すなわち、現時点で出生数がとても少ない地域や、出生数が激減することが明らかな地域では、分娩を取り扱う施設の重点化や集約化を各地域の周産期医療協議会において十分に検討する必要があると考えられる。
また今回、好取り組みとして紹介した3事例(千葉県、岡山県、長崎県)については、ICTを駆使した周産期医療現場における搬送体制等の改革や工夫であり、常時のみならず非常時でも有用であると考えられた。今後、これらの取り組みを各地域に応じた横展開ができれば、タスクシフティングの視点からも有用であると考えられた。ただし、これらの方策も医師を含む医療従事者のマンパワーが確保されていることが前提である。
超少子高齢化が進む中、人口構造変化や地域の実情に応じた産婦人科医療提供体制を構築するためには、地域医療構想や働き方改革との整合性を図りつつ、医療従事者の確保策や地域偏在対策等について総合的に検討していく必要があろう。今後、周産期医療従事者が各地域の周産期医療協議会等を介し、さらに積極的に行政との関わりを持つことが肝要であり、現場の意見を地域医療計画へ反映することが必要であると思われる。また、体制の変化は住民に不安を煽る可能性がある。したがって、体制変化を迫られる地方圏域等では、当事者である妊産婦や地域住民に丁寧に説明し、意見を聴取するための意見交換会を行政が主導して開催することを考慮すべきであろう。
具体的には、陸の孤島、離島、冬季では天候により道路が遮断、公共交通網の不十分さ等により分娩施設まで60分以上かかる地域が存在することが改めて確認された。調査の結果、何らかの対策がとられている地域も存在したが、依然、解決に至っていない地域も存在することも判明した。さらに、出生数が年間100~300人と少ないにもかかわらず、地域周産期母子医療センターを含む基幹施設を維持している医療圏域が存在することが判明した。この状況は働き方改革を進める上での重要な課題と考えられる。すなわち、現時点で出生数がとても少ない地域や、出生数が激減することが明らかな地域では、分娩を取り扱う施設の重点化や集約化を各地域の周産期医療協議会において十分に検討する必要があると考えられる。
また今回、好取り組みとして紹介した3事例(千葉県、岡山県、長崎県)については、ICTを駆使した周産期医療現場における搬送体制等の改革や工夫であり、常時のみならず非常時でも有用であると考えられた。今後、これらの取り組みを各地域に応じた横展開ができれば、タスクシフティングの視点からも有用であると考えられた。ただし、これらの方策も医師を含む医療従事者のマンパワーが確保されていることが前提である。
超少子高齢化が進む中、人口構造変化や地域の実情に応じた産婦人科医療提供体制を構築するためには、地域医療構想や働き方改革との整合性を図りつつ、医療従事者の確保策や地域偏在対策等について総合的に検討していく必要があろう。今後、周産期医療従事者が各地域の周産期医療協議会等を介し、さらに積極的に行政との関わりを持つことが肝要であり、現場の意見を地域医療計画へ反映することが必要であると思われる。また、体制の変化は住民に不安を煽る可能性がある。したがって、体制変化を迫られる地方圏域等では、当事者である妊産婦や地域住民に丁寧に説明し、意見を聴取するための意見交換会を行政が主導して開催することを考慮すべきであろう。
結論
わが国における周産期医療事情が地域により異なることが改めてわかった。妊産婦が安心に過ごせる環境を維持すると共に医師の働き方改革を進めるには、無産科二次医療圏をなくすこと、言い換えれば、アクセスの悪い地域での分娩を維持するよりも、周産期医療圏を柔軟に設定の上、重点化や集約化(他医療圏における基幹施設等での分娩体制を構築すること)を考慮すべきかもしれない。その際、アクセス確保のための物理的支援(交通整備、移動・宿泊費用の支援等)やICTを利用した体制強化を図ることが重要であり、各地域において方策を講じる必要があろう。
公開日・更新日
公開日
2024-05-13
更新日
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