災害時や新興感染症拡大時等における在宅医療を提供する医療機関等への支援体制についての調査研究

文献情報

文献番号
202206011A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時や新興感染症拡大時等における在宅医療を提供する医療機関等への支援体制についての調査研究
課題番号
22CA2011
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山中 崇(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 久幸(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部)
  • 山岸 暁美(一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 コミュニティヘルス研究部)
  • 石垣 泰則(医療法人社団仁生堂 大村病院)
  • 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 小早川 義貴(独立行政法人 国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 畑 吉節未(岐阜保健大学大学院 看護学研究科 災害看護学領域)
  • 太田 凡(京都府立医科大学 救急災害医療システム学講座)
  • 三浦 靖彦(東京慈恵会医科大学附属柏病院 総合診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,313,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害時や新興感染症拡大時等において、在宅医療提供体制が縮小せざるを得なくなった場合の対策、ならびに在宅医療における医療従事者の患者や家族等からのハラスメントの実態や安全確保対策について実態調査や好事例分析を行い、行政の支援体制の構築について明確化することを本研究の目的とした。
研究方法
Ⅰ.災害時や新興感染症拡大時等における在宅医療を提供する医療機関等への支援体制について
行政及び在宅医療機関等に対して以下の3項目について、アンケート調査及びヒアリング調査を実施して分析した。
1.災害時における在宅医療を提供する医療機関等(特に診療所)の被災状況の確認体制
2.在宅医療分野に対する市町村と都道府県における情報共有及び連携
3.災害時及び新興感染症拡大時等における在宅医療を提供する医療機関等の事業縮小への支援体制
Ⅱ.患者・家族による在宅医療提供者に対する暴力・ハラスメントの事例や対策について
患者・家族による在宅医療関係者に対する暴力・ハラスメントの実態、および安全確保対策について、在宅医療を提供する医療機関等のスタッフに対してインタビュー調査を行い、検討した。
結果と考察
Ⅰ.災害時や新興感染症拡大時等における在宅医療を提供する医療機関等への支援体制について
1.災害時における在宅医療を提供する医療機関等(特に診療所)の被災状況の確認体制
自然災害発災時に、無床診療所の被災状況の情報収集について、都道府県が主体となって行っている割合は33.3%、市区町村は17.5%であった。現状では、既存の情報システムの活用、在宅医療分野内での共助体制の確立、既存の災害医療体制との連携のために災害時在宅医療コーディネート機能の開発が必要と考えられた。
2.在宅医療分野に対する市町村と都道府県における情報共有及び連携
自然災害発災時に市区町村、保健所と共有する在宅療養患者の安否確認情報として、都道府県は「在宅療養患者」が最も多く22.2%、次いで「その他の名簿」と「入院が必要な患者」が 16.7%であった。市区町村は「避難行動要支援者名簿」が最も多く 50.6%、次いで「個別支援計画」が19.1%であった。
安否確認情報の部署間での連携状況は、都道府県、市区町村ともに「部署を越えての情報共有は行っていない」が最も多く、それぞれ100.0%、57.4%であった。災害時に在宅療養患者を保護、支援するために、危機管理部局と保健担当部局は連携を図る必要がある。さらに、都道府県と市区町村は密に連携して、災害時の対応に齟齬を生じないように努める必要がある。
3.災害時及び新興感染症拡大時等における在宅医療を提供する医療機関等の事業縮小への支援体制
(機能強化型)在宅療養支援診療所等の事業継続計画(BCP)作成促進のために実施していることがある都道府県は29.6%、BCP作成助言指導を実施している市区町村は0.5%であった。自然災害発災時に在宅療養支援診療所が被災した際の事業継続及び在宅療養患者対応に係る対策について、「支援体制がある」都道府県は33.3%、市区町村は11.0%であった。
Ⅱ.患者・家族による在宅医療提供者に対する暴力・ハラスメントの事例や対策について
総計44名を対象に1回あたり1〜5名を対象として14回、インタビュー調査を実施した。インタビュー項目は、1)患者・家族からの暴力・ハラスメントの事例(緊急重大案件)について、2)在宅医療の現場で実際に行われている暴力・ハラスメント対策について、3)有効と考えられる暴力・ハラスメント対策について、とした。その結果、在宅医療関係者の生命にかかわる事案が発生していたことが明らかとなった。また、有効と考えられる暴力・ハラスメント対策として、(1)行政・地域の支援体制づくり、(2)訪問体制の見直し、(3)暴力・ハラスメント対策を学ぶ機会の提供、(4)患者・家族からの暴力・ハラスメントに対する抑止力となる対策の実施、に関する事項が抽出された。さらに、これまで、訪問看護職を主体とする実態調査をもとに作成された、暴力・ハラスメント対策マニュアルなどの成果物が、十分に普及していないことが明らかとなり、在宅医療関係者に対するこれらの普及と活用の必要性が示唆された。
結論
災害時における在宅医療を提供する医療機関、特に診療所の被災状況の確認体制は不十分であり、整備する必要がある。在宅医療分野について、災害時における、都道府県、市区町村の各部局間の連携強化が望まれる。さらに、都道府県と市区町村は密に連携して、災害時の対応に齟齬を生じないように努める必要がある。
在宅医療の患者・家族のほとんどは暴力と無縁であり、暴力・ハラスメントを行う患者・家族はごく一部であると考えられるが、リスクがあるということを前提にした対策が求められる。

公開日・更新日

公開日
2023-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-26
更新日
2023-08-31

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202206011C

収支報告書

文献番号
202206011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,605,000円
(2)補助金確定額
5,605,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 362,829円
人件費・謝金 505,906円
旅費 265,950円
その他 3,192,795円
間接経費 1,292,000円
合計 5,619,480円

備考

備考
自己資金 14,480円

公開日・更新日

公開日
2023-06-26
更新日
2024-03-29