文献情報
文献番号
202206010A
報告書区分
総括
研究課題名
将来の医療需要への効果的効率的な対応に向けた、DPCデータ等を用いた回復期・地域密着型医療の確保のための研究
課題番号
22CA2010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小林 大介(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 大介(千葉大学 医学部附属病院)
- 佐藤 菊枝(名古屋大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域医療構想の推進に関して、特に地域包括ケア病棟の実際の入院患者の状況について、各医療機関のDPCデータから明らかにし、本来の地域包括ケア病棟の目的に沿った利用がされているかについて明らかにするとともに、地域包括ケア病棟の実際の状況や急性期医療機関との連携状況について、地域包括ケア病棟を持つ医療機関や、地域包括ケア病棟を持つ医療機関と連携体制を取る急性期医療機関を対象に、現状の病棟利用状況から明らかとなった課題とその取り組みについて事例検討を行う。
研究方法
本研究はDPCデータ分析と現地ヒアリング調査に分けて実施する。
DPCデータ分析については、愛知県DPCデータを利用し、地域医療構想調整区域ごとに、地域包括ケア病棟に入院した患者の多い疾病(最も資源を投入した傷病名)の上位5疾患を集計する。また、患者数と平均年齢を比較する。さらには退院先を調査し、家庭への退院割合と院内死亡割合を比較する。
ヒアリング調査においては、対象を北海道、岐阜県、愛媛県、大分県、長崎県、鹿児島県、沖縄県の地域包括ケア病棟を持つ医療機関(公立・民間)または地域包括ケア病棟を持つ医療機関へ逆紹介を行う急性期医療機関(大学病院・民間)の合わせて9医療機関の病院長、事務部長、地域連携部門担当者などとし、実際の地域包括ケア病棟の活用状況や地域での連携状況について調査した。
DPCデータ分析については、愛知県DPCデータを利用し、地域医療構想調整区域ごとに、地域包括ケア病棟に入院した患者の多い疾病(最も資源を投入した傷病名)の上位5疾患を集計する。また、患者数と平均年齢を比較する。さらには退院先を調査し、家庭への退院割合と院内死亡割合を比較する。
ヒアリング調査においては、対象を北海道、岐阜県、愛媛県、大分県、長崎県、鹿児島県、沖縄県の地域包括ケア病棟を持つ医療機関(公立・民間)または地域包括ケア病棟を持つ医療機関へ逆紹介を行う急性期医療機関(大学病院・民間)の合わせて9医療機関の病院長、事務部長、地域連携部門担当者などとし、実際の地域包括ケア病棟の活用状況や地域での連携状況について調査した。
結果と考察
愛知県内151病院のDPCデータから、地域包括ケア病棟に入院している患者の疾病構造の分析を地域医療構想区域ごとに行った。その結果、多くの圏域で「肺炎等」、「誤嚥性肺炎」、「心不全」、「股関節・大腿近位の骨折」、「胸椎、腰椎以下骨折損傷」などが多くなっている中で、西三河南部西および東三河南部においては「白内障、水晶体の疾患」が最多疾患となっており、他圏域との差が明らかになった。また、退院先については、県全体の家庭への退院割合(65.2%)より低く、死亡割合(7.5%)が高くなったのが、尾張東部(57.4%、9.6%)、尾張北部(54.8%、8.9%)、西三河南部東(60.1%、16.6%)、東三河北部(54.1%、16.5%)であった。ここに年齢差が一部可能性としては考えられたが、明確な関係性は見られなかった。死亡症例については「肺炎等」「誤嚥性肺炎」「脳梗塞」が多くなっているが、これはどの圏域にも共通する疾患であった。
7都道府県9医療機関へのヒアリング調査から、自院の役割については地域医療構想調整会議で配布の資料やオープンデータ等の分析から多くの病院では把握している中で、地域包括ケア病棟の利用状況については、他院からの転院患者よりも自院内での転棟患者が多い場合や術後患者が慢性期や特養への「待ち」での利用があるなど、本来の使い方ではないようなパターンも見受けられた。しかしこれは地域特性(地域にほかの医療機関が少ない場合や、人員不足の関係、患者流入の関係で地域の医療機関がすぐにふさがる状況)などが影響する場合も多く、そもそも診療報酬面を含め地域完結型医療を確保することが難しい状況に陥っているパターンもあることが示唆された。
7都道府県9医療機関へのヒアリング調査から、自院の役割については地域医療構想調整会議で配布の資料やオープンデータ等の分析から多くの病院では把握している中で、地域包括ケア病棟の利用状況については、他院からの転院患者よりも自院内での転棟患者が多い場合や術後患者が慢性期や特養への「待ち」での利用があるなど、本来の使い方ではないようなパターンも見受けられた。しかしこれは地域特性(地域にほかの医療機関が少ない場合や、人員不足の関係、患者流入の関係で地域の医療機関がすぐにふさがる状況)などが影響する場合も多く、そもそも診療報酬面を含め地域完結型医療を確保することが難しい状況に陥っているパターンもあることが示唆された。
結論
本研究では、地域医療構想の推進に関して、特に地域包括ケア病棟の実際の入院患者の状況について、各医療機関のDPCデータから明らかにし、本来の地域包括ケア病棟の目的に沿った利用がされているかについて明らかにした。
また、特に地方と呼ばれる都道府県にある医療機関を対象に、地域包括ケア病棟の利用状況とその課題について、インタビュー調査によって整理した。
今後、地域密着型医療の重要性が高まる中で、地域包括ケア病棟の活用についての地域差をなくし、どの地域に住んでいる患者も在宅復帰に向けたケアを受けられるようにするためにも、更なるデータ分析を元に、地域の需要に合った供給を検討する体制が必要と思われるとともに、全国一律での在り方を合わせる方法は、本当の意味での地域密着型医療の提供に繋がるかを慎重に検討する必要があることが示唆された。
また、特に地方と呼ばれる都道府県にある医療機関を対象に、地域包括ケア病棟の利用状況とその課題について、インタビュー調査によって整理した。
今後、地域密着型医療の重要性が高まる中で、地域包括ケア病棟の活用についての地域差をなくし、どの地域に住んでいる患者も在宅復帰に向けたケアを受けられるようにするためにも、更なるデータ分析を元に、地域の需要に合った供給を検討する体制が必要と思われるとともに、全国一律での在り方を合わせる方法は、本当の意味での地域密着型医療の提供に繋がるかを慎重に検討する必要があることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2024-05-24
更新日
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