文献情報
文献番号
202206008A
報告書区分
総括
研究課題名
地域フォーミュラリ事例および質問票調査に基づいた実施ガイドラインの開発
課題番号
22CA2008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(帝京大学 大学院公衆衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域フォーミュラリの普及促進に向け、現状の実施状況を把握し、ステークホルダーや関係者の地域フォーミュラリに関する考え方や意見等を明らかにしつつ、適切な地域フォーミュラリの推進を行い、質の高い安全な薬物治療の普及を図ることを研究の理念とした。本研究の目的は、主に全国で実施されている地域の医師、薬剤師を対象にした意識調査や実態調査などを行って現状分析および普及促進の課題を把握し、これらの調査結果を踏まえつつ、先行研究の「地域フォーミュラリの実施ガイドライン」「病院におけるフォーミュラリの実施マニュアル:標準的な実施手法」等を基盤内容に位置付けて、全国のどのような地域でも実施できるための、より一層の実践的な地域フォーミュラリ作成および運営が可能となるような「実践ガイドライン」を作成することとした。
研究方法
地域フォーミュラリ実施への発展プロセスが比較的行いやすいと考えられる病院フォーミュラリにおける実施状況や病院薬剤師の考え方などを把握するために大規模な全国調査を行った。
また、地域の診療所医師および病院医師に対して地域フォーミュラリに関する意識調査を実施した。
薬剤師については、地域フォーミュラリ実施済みの山形県酒田地区および大阪府八尾市、具体的な取り組みが始まっていなかった横浜市金沢区の3地域を対象とした意識調査を行った。
また、地域の診療所医師および病院医師に対して地域フォーミュラリに関する意識調査を実施した。
薬剤師については、地域フォーミュラリ実施済みの山形県酒田地区および大阪府八尾市、具体的な取り組みが始まっていなかった横浜市金沢区の3地域を対象とした意識調査を行った。
結果と考察
●全国調査では、538施設から回答があり、その中でフォーミュラリがあると回答した施設は205施設(42.6%)であった。その内訳として八割程度の施設がフォーミュラリは自院内だけの運用に留まり、地域フォーミュラリへの拡がりがあると回答は残念ながら二割程度であった。病院内だけに留まらずに地域全体に地域フォーミュラリを普及拡大するための方策としては「何が必要か」という質問では、「処方医のフォーミュラリに対する理解」、「診療報酬上の評価」、「標準的な治療の推進」、「診療所と病院との間での使用薬剤の一致」などが上位を占めた。地域全体への拡がりこそが地域フォーミュラリ実施の意義や有用性があるため、調査結果は今後の普及促進に向けた施策展開に多くの示唆を与えるものとなった。
●意識調査における医師については、地域フォーミュラリ実施により、薬物療法の標準化、安全性の確保といった医療の質向上、さらに薬剤費用の削減など経済的負担の軽減効果への期待、等々がもたらされると考えていることが明らかとなった。導入前に懸念されていた処方権に関しては、対象の3地区ともに影響はなかったとの意見が大半であったが、影響という観点では、地域フォーミュラリが薬剤選択に有用であったとする肯定的な意見が多かった。一方、地域フォーミュラリへの理解不足から、導入の推進には反対する意見も少なからずあり、今後広く導入を進めるためには周知活動の重要性が示された。
●薬剤師については、地域フォーミュラリ実施済みの山形県酒田地区および大阪府八尾市、具体的な取り組みが始まっていなかった横浜市金沢区の3地域を対象とした意識調査を行った。フォーミュラリの定義・内容に関する認知度において八尾市が最も多く90%を越えるなど薬局薬剤師に広く浸透していた。地域フォーミュラリを実践することで得られたメリットについては「標準的な薬物治療の推進」が最も多かったが、「薬局の過剰在庫軽減」が次いで多く、地域フォーミュラリが進展することで薬局の経営的負担が軽減できることが示唆された。
●意識調査における医師については、地域フォーミュラリ実施により、薬物療法の標準化、安全性の確保といった医療の質向上、さらに薬剤費用の削減など経済的負担の軽減効果への期待、等々がもたらされると考えていることが明らかとなった。導入前に懸念されていた処方権に関しては、対象の3地区ともに影響はなかったとの意見が大半であったが、影響という観点では、地域フォーミュラリが薬剤選択に有用であったとする肯定的な意見が多かった。一方、地域フォーミュラリへの理解不足から、導入の推進には反対する意見も少なからずあり、今後広く導入を進めるためには周知活動の重要性が示された。
●薬剤師については、地域フォーミュラリ実施済みの山形県酒田地区および大阪府八尾市、具体的な取り組みが始まっていなかった横浜市金沢区の3地域を対象とした意識調査を行った。フォーミュラリの定義・内容に関する認知度において八尾市が最も多く90%を越えるなど薬局薬剤師に広く浸透していた。地域フォーミュラリを実践することで得られたメリットについては「標準的な薬物治療の推進」が最も多かったが、「薬局の過剰在庫軽減」が次いで多く、地域フォーミュラリが進展することで薬局の経営的負担が軽減できることが示唆された。
結論
これらの現状の実態調査の結果を踏まえて「実施ガイドライン(フォーミュラリの運用について)」を作成した。内容としては、わが国における定義から始まり、実施の目的、作成方法、対象の医薬品選考、導入と運用、COI管理、更新、実施の評価に至るまでの幅広い範囲を網羅し、より実践的な実施ガイドラインとなった。
公開日・更新日
公開日
2024-06-13
更新日
-