漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生のための調査研究

文献情報

文献番号
200905022A
報告書区分
総括
研究課題名
漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生のための調査研究
課題番号
H21-特別・指定-026
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
黒岩 祐治(国際医療福祉大学 大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 石野 尚吾(昭和大学医学部)
  • 合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)
  • 宮野 悟(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)
  • 北村 聖(東京大学医学部医学教育国際協力センター)
  • 木内 文之(慶應義塾大学薬学部天然医薬資源学講座)
  • 西本 寛(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部院内がん登録室)
  • 渡辺 賢治(慶應義塾大学医学部漢方医学センター)
  • 塚田 信吾(日本伝統医療科学大学院大学)
  • 関 隆志(東北大学医学部先進漢方治療医学講座)
  • 阿相 皓晃(慶應義塾大学医学部漢方医学センター)
  • 天野暁(東京大学食の安全センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
漢方・鍼灸を国内でどのような扱いとし、そのためにどのような事項が緊急課題として必要なのかを調査・検討し、国際化に向けての準備とする。
研究方法
1.班会議での検討:漢方・鍼灸を国内でどのような扱いとし、そのためにどのような事項が緊急課題として必要なのかを調査・検討した。2.シュミレーション:1)インフルエンザ対策に漢方薬を活用した場合、どの程度の医療経済効果が期待できるか。2)生薬の国内栽培自給率を上げるためには、何が必要か。
結果と考察
1.班会議での検討:日本の伝統医療である漢方・鍼灸を見直し、東西医学双方が協力し、互いの長所を活かした「新たな時代にふさわしい日本の医療」を作るべく検討を重ね、提言をまとめた。2.シュミレーション:1)インフルエンザ治療薬として漢方薬を積極的に利用した場合の医療費節減効果は数十億円になる。2)葉たばこ農家の転作により、生薬原料の国内生産を増やすための条件は生薬により満たしている。
結論
【提言1】体質にあった「オーダーメイド医療」実現のための基盤整備(A)科学的分析の推進(データの収集と解析)1)漢方・鍼灸にかかる医療データの収集2)統計解析手法を活用した分析上記データについて、統計解析手法を用いて分析し、これまでの経験則を裏付けるような科学的なエビデンスを確立する。3)エビデンス創出・研究用に使う生薬・漢方製剤についての品質の標準化を検討するために産官学(臨床医を含む)が一体となった場を作ること。(B)漢方・鍼灸に精通した専門家の層を厚くする。【提言2】漢方薬を活用した医療を推進するため、生薬の安定確保(種苗の確保を含む)を図るとともに、漢方製剤の安全性を更に高める。1)大半を輸入に頼っている生薬の国内栽培の促進2)輸入品の安定確保2)中国における生薬の栽培支援等を含め、輸入品についても引き続き安定確保を実現する。【提言3】国家戦略的見地から政府主導で対応すること。1)WHOにおいて改訂作業中の国際疾病分類(ICD-11)2)ISOにおける伝統医学の標準化にかかる技術委員会(TC249)3)生物多様性条約交渉(生薬資源の保護等にかかる国際ルール作り)【提言4】国民への知識普及:漢方・鍼灸にかかる正しい情報提供・知識普及につとめる。【提言5】以上の施策を推進していくためには、産官学が継続的・戦略的に対処しうるように組織的整備を行う。

公開日・更新日

公開日
2010-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200905022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
漢方・鍼灸が抱える問題をあぶり出した点で成果があった。特に2009年末の事業仕分けの際に3週間で924808名から署名が集まったように、漢方に対する国民の期待は大きい。しかしながら、生薬の確保や国際的な圧力などによって持続可能かどうかが不確かな医学である。こうした漢方・鍼灸の抱える問題点を明らかにし、今後の発展に向けた課題が整理された点は成果であった。
臨床的観点からの成果
漢方・鍼灸が現場で十分使われていない理由として、臨床エビデンスが少ないことが問題となった。西洋医学と同じ手法でなく、個別化全人医療である特質を生かした臨床研究デザインが求められる。慶應義塾大学で行われている問診システムを用いたデータマイニングは一つのモデルとなり得る。また、インフルエンザに対してエビデンスがあるにも関わらず、漢方が用いられなかった理由の一つに医師の教育が挙げられた。鍼灸に関しては、鍼灸単独の治療となっており、医療現場で用いられていないことが問題となった。
ガイドライン等の開発
平成22年2月25日付けで長妻昭厚生労働大臣宛に提言書を提出した。【提言1】体質にあった「オーダーメイド医療」実現のための基盤整備(A)科学的分析の推進(データの収集と解析)(B)人材の育成【提言2】生薬資源の安定的確保生薬原料の国内栽培の促進2)輸入品の安定確保【提言3】国際ルール作りへの迅速・積極的な対応【提言4】漢方・鍼灸にかかる正しい情報提供・知識普及につとめること。【提言5】産官学が継続的・戦略的に対処しうるように組織的整備を行うこと。
その他行政的観点からの成果
政府内に統合医療プロジェクトチームが立ち上がった。WHO ICD-11の改訂に向けて政府の協力の元、東アジア伝統医学を入れる方向で検討が始まった。WHO-FIC協力センターの中にも日本東洋医学会が入る予定で進められている。
その他のインパクト
班会議に付随して2回の公開フォーラムを行った。1)第5回21世紀漢方フォーラム「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生」黒岩祐治 鈴木寛 梅村聡 足立信也など 2)第6回21世紀漢方フォーラム「漢方・鍼灸を活用した日本型医療の実現に向けた具体的対応」1)インフルエンザ治療薬として漢方薬を積極的に利用した場合の医療費節減効果の試算 2)葉たばこ農家の転作により、生薬原料の国内生産を増やすための条件の検討 パネル 黒岩祐治 鈴木寛 井元清哉 梅村聡など 班会議の模様は複数のメディアで紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
21世紀漢方フォーラム開催2回

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato N, Asou H, Watanabe K, et.al.
Administration of Chinpi, a component of the Herbal Medicine Ninjin-Youei-To, Reverses Age-induced Demyelination
eCAM(ePub ahead)  (2010)
原著論文2
渡辺賢治
ICD-11への改訂に向けての東アジア伝統医学分類作成
医学のあゆみ , 231 (4) , 311-312  (2009)
原著論文3
渡辺賢治
漢方医学をめぐる国際的諸問題
医学のあゆみ , 231 (3) , 243-246  (2009)
原著論文4
渡辺賢治
伝統医学国際化の潮流
医学のあゆみ , 231 (2) , 169-170  (2009)
原著論文5
黑岩祐治
中国政府が仕掛けた「中医学戦争」で日本の漢方薬が消える
サピオ3月10日号 , 19-21  (2010)
原著論文6
渡辺賢治
今こそ日本型医療の創生を
日本医事新報 , 4468 , 1-  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-