新型コロナウイルス感染症の流行も考慮に入れた、脳卒中急性期に対するリハビリテーションの標準化・適正化の研究

文献情報

文献番号
202206005A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症の流行も考慮に入れた、脳卒中急性期に対するリハビリテーションの標準化・適正化の研究
課題番号
22CA2005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小笠原 邦昭(学校法人岩手医科大学 医学部 脳神経外科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 井口 保之(東京慈恵会医科大学 内科学講座 神経内科 )
  • 中島 誠(熊本大学医学部附属病院脳血管先端医療寄附講座)
  • 藤本 茂(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門)
  • 古賀 政利(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 板橋 亮(岩手医科大学 脳神経内科・老年科)
  • 橋本 洋一郎(熊本市立熊本市民病院 神経内科)
  • 阿志賀 大和(国際医療福祉大学 成田保健医療学部言語聴覚学科)
  • 大木 宏一(東京都済生会中央病院 脳神経内科)
  • 小山 哲男(兵庫医科大学 医学部)
  • 太田 剛史(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
  • 新見 昌央(日本大学 医学部)
  • 大山 直紀(川崎医科大学 脳卒中医学教室)
  • 後藤 和也(国際医療福祉大学成田病院 リハビリテーション技術部)
  • 角田 亘(国際医療福祉大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における脳卒中急性期リハビリテーション(以下、リハ)の現状をアンケート調査で明らかにしたうえで、COVID-19の流行を考慮に入れて、脳卒中急性期リハの標準化・適正化を促進していくための「脳卒中急性期リハの指針」を本邦で初めて作成する。
研究方法
・全国の一次脳卒中センター959施設を対象として、脳卒中急性期リハの現状についてのWebを用いたアンケート調査を行い、その結果を解析した。
・Pubmedと医中誌を通じて論文を渉猟することで、脳卒中急性期リハに関する文献レビューを行い、脳卒中急性期リハのエビデンスを確認した(最終的に、648編の論文の内容を吟味した)。
・文献レビューから得られたエビデンス、アンケート調査の結果(本邦の脳卒中急性期リハの現状)、研究分担者によるエキスパートオピニオンに基づいて、「脳卒中急性期リハの指針」を作成した。
・完成した「脳卒中急性期リハの指針」の草稿を日本脳卒中学会と日本リハビリテーション医学会の代議員複数名が査読、それに基づいた修正を行い指針の最終版を完成した。
結果と考察
・「脳卒中急性期リハの現状」に関するアンケート調査(回答率が66.6%)の結果として、本邦のPSCにおいてはリハ科療法士の配置が十分ではない可能性、急性期脳卒中に対する訓練提供量が決して多くはないこと、休診/休院日における急性期リハの提供体制に施設間較差があることが確認された。
・脳卒中急性期リハについての文献レビューの結果として、648編の論文についてその内容を吟味、急性期脳卒中に対する早期離床が有害ではないことなどをエビデンスとして確認した。
・文献レビューから得られたエビデンスを整理したうえで、アンケート調査の結果(本邦の脳卒中急性期リハの現状)と研究分担者によるエキスパートオピニオンを加味して、「脳卒中急性期リハの指針」を作成した。
結論
本邦のPSCにおける脳卒中急性期リハの現状を、アンケート調査で明らかにすることができた。調査の結果として、言語聴覚士の配置が十分でないこと、休診/休院日におけるリハ訓練の提供体制に施設間較差があることなどが明らかとなった。一方で、文献レビューの結果として、急性期脳卒中に対するリハ訓練の早期開始を有害とするエビデンスは確認されなかった。これより、リハ訓練の早期開始を推奨してもよいものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2023-10-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-10-18
更新日
2024-01-11

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202206005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)アンケート調査の結果として、本邦の休診のリハ訓練の提供体制には施設間較差がある。休診/休院日にもリハ訓練を行っているPSCは、全体の32%に過ぎなかった。COVID-19パンデミックによって、多くの施設がリハ訓練の提供が制限された。(2)本アンケートは本邦の脳卒中センターにおける脳卒中急性期リハビリテーションに関する初めての全国調査であり、世界的にも調査は行われていない。新型コロナウイルスの流行が、本邦の脳卒中急性期リハビリテーションの現場に与えた影響も初めて明らかになった。
臨床的観点からの成果
(1)文献レビューからは、以下の臨床的エビデンスが明らかになった。1)急性期脳卒中に対して入院直後から頭部挙上しておくことは転帰に影響しない。2)くも膜下出血においては、早期離床を行っても脳血管攣縮の頻度が高まることはない。3)休日に訓練を行うことで機能予後が改善する。4)摂食嚥下訓練は、発症後2週間以内に開始したほうが改善に有効である。(2)急性期リハビリテーションにおけるエビデンスをまとめたものは和文でも英文でも存在せず、急性期リハビリテーションの現場にとって有用と思われる。
ガイドライン等の開発
本指針は、「離床と頭部挙上」、「急性期合併症」、「訓練の提供量」、「摂食嚥下リハ」、「COVID-19の影響」の5項目に関して、clinical questionを設定した。以下に、“重要な問い”を要約する。1)急性期脳卒中における頭部挙上の適切な開始時期は?2)脳卒中急性期リハ訓練の適切な訓練時間と訓練回数は?3)休日のリハ訓練は脳卒中患者の転帰を改善するか?4)感染症パンデミック下では、脳卒中急性期リハの提供体制をどのように整えるべきか?
その他行政的観点からの成果
作成された指針は、脳卒中急性期リハに関する指針としては、本邦のみならず世界初のものとなるこの指針が広く浸透することによって、本邦の脳卒中急性期リハが標準化・適正化されることが期待される。すでに日本脳卒中学会の機関誌「脳卒中」に掲載されることになっている。一方、この指針の内容について、的確な検証がなされるべきである。すなわち、この指針に則って脳卒中急性期リハを進めることが、脳卒中患者の機能予後の改善に確かにつながるのか否かを評価しなければならない。
その他のインパクト
作成された指針は、日本脳卒中学会の機関誌「脳卒中」に掲載されることになっている。この学術誌はJ-stageで誰も購読可能である。また、今年の第60回日本リハビリテーション医学会学術集会および来年の第49回日本脳卒中学会学術集会でも発表される予定である。

発表件数

原著論文(和文)
1件
(1) 角田亘, 大木宏一, 中島誠, 小山哲男, 大山  直紀, 古賀政利, 早瀬睦, 太田剛史, 大森智裕, 松本浩一, 井口保之, 藤本茂, 小笠原邦昭. “本邦の一次脳卒中センターにおける脳卒
原著論文(英文等)
1件
(2) Koichi Oki, Makoto Nakajima, Tetsuo Koyama, Naoki Oyama, Masatoshi Koga, Makoto Hayase, Tsuyoshi
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
今年の第60回日本リハビリテーション医学会学術集会および来年の第49回日本脳卒中学会学術集会でも発表される予定
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
2023年6月2日厚労省第12回循環器病対策推進協議会で発表予定
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
角田亘, 大木宏一, 中島誠, 他
“本邦の一次脳卒中センターにおける脳卒中急性期リハビリテーションの現状” に関する多施設アンケート調査結果
脳卒中 , 45 (2) , 111-119  (2023)
https://doi.org/10.3995/jstroke.11058
原著論文2
Oki k, Nakajima M, Koyama T, et al
Timing of initiation of acute stroke rehabilitation and management corresponding to complications at primary stroke centers in Japan: a nationwide cross-sectional web-based questionnaire survey
Cerebrovascular Diseases , In press (In press) , In press-In press  (2023)
In press

公開日・更新日

公開日
2023-10-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
202206005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,552,000円
(2)補助金確定額
6,552,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,782,884円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 3,257,116円
間接経費 1,512,000円
合計 6,552,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-10-18
更新日
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