文献情報
文献番号
202206004A
報告書区分
総括
研究課題名
特定臨床研究で得られた情報の薬事申請における活用のための研究
課題番号
22CA2004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 正志(愛知県がんセンター 臨床試験部)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 浩也(愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品に関する特定臨床研究により得られた研究結果の薬事申請の資料としての活用可能性について検討した。
研究方法
以下の1)から3)について検討を行った。
1) 臨床研究法施行規則と医薬品の臨床試験の実施の規準に関する省令(GCP省令)の比較検討
2) 乳癌に対するS-1の術後薬物療法の臨床試験(POTENT試験)結果の薬事申請の資料としての活用に関する検討
3) 特定臨床研究、および先進医療Bにおける臨床試験の対象疾患に関する検討
1) 臨床研究法施行規則と医薬品の臨床試験の実施の規準に関する省令(GCP省令)の比較検討
2) 乳癌に対するS-1の術後薬物療法の臨床試験(POTENT試験)結果の薬事申請の資料としての活用に関する検討
3) 特定臨床研究、および先進医療Bにおける臨床試験の対象疾患に関する検討
結果と考察
検討結果は、以下の通りであった。
1) 試験治療薬の管理について、臨床研究法では、既承認の薬剤を用いる場合には、試験治療薬等の管理について、GCP省令と比較して、詳細な規定は存在しなかった。試験の実施に必要な検査の精度管理等を保証する記録等の確認・保存に関する規定は、GCP省令と異なり、臨床研究法では規定が存在しなかった。モニタリング・監査に関する規定について、臨床研究法では、GCP省令ほど、詳細な規定は存在しなかった。
2) POTENT試験は、既承認薬である抗悪性腫瘍薬S-1を用いて実施され、再審査期間終了後に先進医療Bの評価がなされ、その後、特定臨床研究として実施された。POTENT試験の試験成績を薬事申請の資料として活用できるか、入手可能な資料により検討した。その結果、試験成績の信頼性の水準、および論文化の状況を満たしていると考えられた。このため、当該試験結果を薬事申請の資料として活用可能と考えられた。
3) 公開中の情報から、特定臨床研究および先進医療Bで実施される試験について対象疾患等を調査した。特定臨床研究が実施された疾患領域としては悪性腫瘍、神経疾患、循環器疾患の順に多く認められたが、その多くが、治験につなげるための探索的な試験に留まった。1)で述べたように治験と特定臨床試験の間には信頼性担保の観点で大きな違いがあるため、承認申請に必要な臨床試験は本邦において治験に限られる一方で、非常に希少な疾患を対象とした試験や治験の実施が困難な疾患(脳梗塞の急性期や救急医療など)については、さらに追加の試験を実施することが困難である可能性もあり、良い結果がえられた場合には薬事申請に利活用できるようにすることが望ましいと考えられた。
1) 試験治療薬の管理について、臨床研究法では、既承認の薬剤を用いる場合には、試験治療薬等の管理について、GCP省令と比較して、詳細な規定は存在しなかった。試験の実施に必要な検査の精度管理等を保証する記録等の確認・保存に関する規定は、GCP省令と異なり、臨床研究法では規定が存在しなかった。モニタリング・監査に関する規定について、臨床研究法では、GCP省令ほど、詳細な規定は存在しなかった。
2) POTENT試験は、既承認薬である抗悪性腫瘍薬S-1を用いて実施され、再審査期間終了後に先進医療Bの評価がなされ、その後、特定臨床研究として実施された。POTENT試験の試験成績を薬事申請の資料として活用できるか、入手可能な資料により検討した。その結果、試験成績の信頼性の水準、および論文化の状況を満たしていると考えられた。このため、当該試験結果を薬事申請の資料として活用可能と考えられた。
3) 公開中の情報から、特定臨床研究および先進医療Bで実施される試験について対象疾患等を調査した。特定臨床研究が実施された疾患領域としては悪性腫瘍、神経疾患、循環器疾患の順に多く認められたが、その多くが、治験につなげるための探索的な試験に留まった。1)で述べたように治験と特定臨床試験の間には信頼性担保の観点で大きな違いがあるため、承認申請に必要な臨床試験は本邦において治験に限られる一方で、非常に希少な疾患を対象とした試験や治験の実施が困難な疾患(脳梗塞の急性期や救急医療など)については、さらに追加の試験を実施することが困難である可能性もあり、良い結果がえられた場合には薬事申請に利活用できるようにすることが望ましいと考えられた。
結論
特定臨床研究の試験成績を薬事承認の資料として活用する際に考慮する事項は、以下のとおりであると考えられた。
(1) 薬剤について、
(a) 既承認の薬剤を用いた臨床試験(効能・効果、あるいは用法・用量の追加)であること
(b) 既承認の薬剤の再審査期間について
① 再審査期間中のもの
先進医療Bで評価された特定臨床研究の結果、当該薬の有用性が示され、かつその試験結果がpeer review制度を有する国際的に評価の高い医学誌に掲載されていること
② 再審査期間終了後のもの
・医学薬学上、公知であり、医療上の必要性が高いと考えられるもの
特定臨床研究の資料のみで活用可能、ただし、先進医療Bで評価されていることが望ましい
・医学薬学上、公知でないもの
先進医療Bで評価された特定臨床研究の結果、当該薬の有用性が示され、かつその試験結果がpeer review制度を有する国際的に評価の高い医学誌に掲載されていること
(2) 特定臨床研究について
①試験の実施体制について、研究事務局、データセンター、監査・モニタリング部門、および独立データモニタリング委員会がそれぞれ、独立して指名され、機能していると確認できること、
②データセンターやモニタリング・監査業務を担う部門は、それ相当の実績を有していること、
③試験の主要評価項目に関わる臨床検査は、臨床現場で汎用されているものであること、
④試験成績を薬事承認の資料として活用する可能性について、予め、説明し、同意を取得していること
また、試験計画の立案段階で、得られる結果を薬事申請に利活用することを前提とする場合は、治験として実施することが原則であるものの、悪性腫瘍、神経疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、小児疾患、およびそれらの疾患で希少なもの、さらに、企業主導の治験の実施が困難な疾患(小児疾患全般や急性期疾患、救急医療など)については、特定臨床研究で得られた試験成績の薬事申請への利活用を考慮することが望ましいと考えられた。
(1) 薬剤について、
(a) 既承認の薬剤を用いた臨床試験(効能・効果、あるいは用法・用量の追加)であること
(b) 既承認の薬剤の再審査期間について
① 再審査期間中のもの
先進医療Bで評価された特定臨床研究の結果、当該薬の有用性が示され、かつその試験結果がpeer review制度を有する国際的に評価の高い医学誌に掲載されていること
② 再審査期間終了後のもの
・医学薬学上、公知であり、医療上の必要性が高いと考えられるもの
特定臨床研究の資料のみで活用可能、ただし、先進医療Bで評価されていることが望ましい
・医学薬学上、公知でないもの
先進医療Bで評価された特定臨床研究の結果、当該薬の有用性が示され、かつその試験結果がpeer review制度を有する国際的に評価の高い医学誌に掲載されていること
(2) 特定臨床研究について
①試験の実施体制について、研究事務局、データセンター、監査・モニタリング部門、および独立データモニタリング委員会がそれぞれ、独立して指名され、機能していると確認できること、
②データセンターやモニタリング・監査業務を担う部門は、それ相当の実績を有していること、
③試験の主要評価項目に関わる臨床検査は、臨床現場で汎用されているものであること、
④試験成績を薬事承認の資料として活用する可能性について、予め、説明し、同意を取得していること
また、試験計画の立案段階で、得られる結果を薬事申請に利活用することを前提とする場合は、治験として実施することが原則であるものの、悪性腫瘍、神経疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、小児疾患、およびそれらの疾患で希少なもの、さらに、企業主導の治験の実施が困難な疾患(小児疾患全般や急性期疾患、救急医療など)については、特定臨床研究で得られた試験成績の薬事申請への利活用を考慮することが望ましいと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-04-26
更新日
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