2009年度第一四半期の新型インフルエンザ対策実施を踏まえた情報提供のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200905018A
報告書区分
総括
研究課題名
2009年度第一四半期の新型インフルエンザ対策実施を踏まえた情報提供のあり方に関する研究
課題番号
H21-特別・指定-020
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
安井 良則(国立感染症研究所感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 秀雄(東京都福祉保健局健康安全部)
  • 白井 千香(神戸市保健所予防衛生課)
  • 岩田 真美(横浜市健康福祉局健康安全部)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科 健康情報学・疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①ハイリスクとされている対象者が提供する情報の選択・作成に参画し、実際に求められている情報の探求と提供を行う。
②流行に直面した自治体の側から、情報共有と提供をキーワードにした厚生労働省、医療機関との連携、市民への情報提供、メディア対応の実態をあげ、情報提供のありかたを検証する。
③医療提供の最前線の医師が流行に際してどのような情報を取得し、認識していたかを確認し、適切な情報提供に向けての課題をあげる。
研究方法
①それぞれの疾患の患者委員の公募を行い、他に当該分野を専門とする医師やその他の専門家によって作成グループを構成してパンフレットの作成にあたった。
②3自治体で新型インフルエンザ対策の中心となった医師と研究グループを結成し、各自治体で行われた新型インフルエンザ対策について、情報提供と共有をテーマとして検証し、まとめを行った。
③医療現場の医師を対象とし、開業医を中心に直接インタビューすることとした。
結果と考察
①「ぜんそくなどの呼吸器疾患のある人へ」、「糖尿病または血糖値が高い人へ」、「がんで治療中の人へ」、「妊娠中の人や授乳中の人へ」の4種類のパンフレットが作成され、完成順に2009年9月から12月にかけて厚生労働省のホームページに公開された。
②国と当該自治体間では連携がとれておらず、緊急時の情報発信の鉄則である「ワンボイス」とは程遠い状態であり、特に自治体においては対策に支障をきたしかねない状況であったことが明らかとなった。。
③国や自治体からの情報提供がマスコミ先行となることが多く、特に医療現場からは不満の声がきかれた。今後マスコミを積極的に活用していくとともに、新たな情報伝達手段についても検討していく必要があると思われる。
結論
・公衆衛生上緊急性が高い情報ほど速やかに発信・公表されるべきであるが、その情報が正確性を欠き、また国と自治体間等で見解が統一されていなかったたら、信頼性は大きく揺らいでしまい、かえって大きなマイナス要因となってしまう可能性が高い。
・行政機関から医療現場や市民への情報配信はより迅速性を高めていく必要性があり可能であればマスコミも積極的に活用しながら、インターネットやメーリングリスト等の迅速な情報伝達手段をも情報配信システム取り入れていく必要があると思われる。
・わが国においても高度の専門的知識を要するスポークスパーソンを養成し、情報の一元化と窓口の一本化を図ることは、特に厚生労働省およびその関連施設において急ぎ解決していくべき課題であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200905018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「ハイリスク者への情報提供」では、ハイリスク者として情報を受け取る側が中心となってパンフレットが作成され、これによってハイリスク群に該当する人たちにおける適切な予防行動の定着に寄与できたものと考えられる。「自治体からの情報共有と提供」では、行政機関のリスクコミュニケーションの課題について検証し、改善すべきポイントについて示した。今後国と自治体との連携がとれた情報発信機能の向上や、類似の感染症の発生時において公衆衛生対策上適切な行動のとれる国民が増加することに繋がっていくことが期待される。
臨床的観点からの成果
「自治体からの情報共有と提供」研究グループおよび「医療現場の医師の新型インフルエンザの認知と実態把握」研究グループにより、行政機関から医療機関への情報伝達の課題について明らかとし、今後改善していくべき点についても示した。これによって、新型インフルエンザに関する正しい理解を得た医療従事者による診療体制の充実に繋がっていくものと期待される。
ガイドライン等の開発
本研究班では、「自治体からの情報共有と提供」研究グループの成果として、《感染症危機管理発生時における報道対応ガイドライン》を作成した。本ガイドラインは特に公衆衛生機関が感染症危機発生時にどのようにマスコミに対応すべきかを明らかにしたものであり。今後広く全国の公衆衛生機関に活用され、感染症危機管理に寄与すべきものとして、発信していく予定である。
その他行政的観点からの成果
「ハイリスク者への情報提供」研究グループが作成した「ぜんそくなどの呼吸器疾患のある人へ」、「糖尿病または血糖値が高い人へ」、「がんで治療中の人へ」、「妊娠中の人や授乳中の人へ」の4種類のパンフレットは、2009年12月までに全て厚生労働省のホームページに掲載され、多数のアクセスがあった。また、それぞれの各患者団体関係者により、情報誌、ホームページ、講演会等を通じて情報を届けたい人に向かっての広報が行われた。
その他のインパクト
本研究班の報告書が作成された直後から複数のメディアからの取材があり、「自治体からの情報共有と提供」研究グループの報告内容をもとに、2010年5月25日付の毎日新聞記事《新型インフルエンザ:「自治体と情報一元化」 厚労省研究班、昨年の混乱巡り提言》や2010年5月26日付読売新聞《厚労省と自治体「連携が不十分」…新型インフルで報告書》等の記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-