文献情報
文献番号
202205002A
報告書区分
総括
研究課題名
保健分野における、新型コロナウイルス感染症や、三大感染症等に関する国際機関への我が国からの戦略的・効果的な資金拠出と関与に資する研究
課題番号
21BA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
蜂矢 正彦(国立国際医療研究センター 国際医療協力局 連携協力部)
研究分担者(所属機関)
- 駒田 謙一(国立国際医療研究センター 国際医療協力局 運営企画部)
- 若林 真美(国立国際医療研究センター グローバルヘルス政策研究センター)
- 藤田 則子(国立国際医療研究センター 国際医療協力局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、日本が国際社会の一員として「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向けて貢献していくために、新型コロナウイルス感染症や三大感染症(エイズ、結核、マラリア)を含む感染症対策に焦点を当て、グローバルファンド(GF)や世界保健機関(WHO)等の国際機関・団体に対する、日本の戦略的・効果的な国際保健分野における関わり方について研究する。
研究方法
駒田班においては、それまでの情報収集・分析に加え、2022年に行われたGFの第7次増資の結果が想定を下回ったことを踏まえ、限られた予算を保健システム強化にどう振り向けるべきか、案件形成プロセスや実施上の観点から、厚生労働省や外務省にフィードバックを行った。
若林班においては、感染症関連の国際機関・団体に対する効果的・戦略的な拠出と関与方法の提案を行うため、政府開発援助(ODA)をはじめとする援助資金の流れを定量化した。感染症関連で我が国が21世紀に入ってから国際機関・団体を通じてどのような援助形態(二国間援助・多国間援助・その他民間等)・経由組織・目的・地域および国へ援助資金を提供していたかの情報を収集し、そのデータ分析により傾向を定量化し、研究ウェブサイトで情報発信を行った。同時に、他ドナー国(G7やOECD加盟国等)や民間慈善活動団体の援助資金の流れを比較した。
藤田班においては、令和3年度の相関図を精緻化し、分析フレームワークについて学術論文を発表した。関係者の役割・実績についての分析を継続し、保健医療製品の研究開発から導入・使用までのステージ全体を俯瞰した上で、日本製品を低中所得国で展開する上でのボトルネックの分析を行った。また、特定されたボトルネックを克服するために必要な、新たに関与を検討すべき国際および国内の機関・団体を検討し、有力な候補とのパートナーシップを通じて、ボトルネックに対する改善策の試行を検討した。
若林班においては、感染症関連の国際機関・団体に対する効果的・戦略的な拠出と関与方法の提案を行うため、政府開発援助(ODA)をはじめとする援助資金の流れを定量化した。感染症関連で我が国が21世紀に入ってから国際機関・団体を通じてどのような援助形態(二国間援助・多国間援助・その他民間等)・経由組織・目的・地域および国へ援助資金を提供していたかの情報を収集し、そのデータ分析により傾向を定量化し、研究ウェブサイトで情報発信を行った。同時に、他ドナー国(G7やOECD加盟国等)や民間慈善活動団体の援助資金の流れを比較した。
藤田班においては、令和3年度の相関図を精緻化し、分析フレームワークについて学術論文を発表した。関係者の役割・実績についての分析を継続し、保健医療製品の研究開発から導入・使用までのステージ全体を俯瞰した上で、日本製品を低中所得国で展開する上でのボトルネックの分析を行った。また、特定されたボトルネックを克服するために必要な、新たに関与を検討すべき国際および国内の機関・団体を検討し、有力な候補とのパートナーシップを通じて、ボトルネックに対する改善策の試行を検討した。
結果と考察
駒田分担班においては、第47回および第48回GF理事会に関して、日本から提言・発信すべき内容について、外務省・厚労省に提言した。GFに対しては、三大感染症対策に特異的な支援だけなく、その他の感染症の世界的な流行に対する備えや対応や、コミュニティ・人権・ジェンダー問題への対応など、保健システム強化を含め横断的な取り組みに対する期待が年々大きくなっている。これらの課題に取り組むためには、利用可能な資金スキームの効果的な活用(C19RM、触媒投資)、他パートナーの連携やデマケーションが不可欠であり、それらを効率的にモニタリング及び評価する仕組みや体制も必要である。健康安全保障に資するグローバルヘルス・アーキテクチャーを構築するうえでGFがその強みを活かして貢献できるように、我が国からも理事会等で引き続き積極的に提言していくべきである。
若林分担班においては、OECD開発援助委員会加盟国(29か国)における保健分野に関する政府開発資金データベースを用いて、保健分野の国際機関・団体に対する効果的かつ戦略的な拠出と関与方法の提案を行うため、2011年から2019年における保健分野における政府開発援助(ODA)の流れをわかりやすく可視化し、その拠出について検討した。2019年における保健一般に対する拠出おいて、日本は29か国中第3位であり、基礎的保健に対する拠出においては第5位、非感染症疾患に対する拠出に関しては第2位であった。また、民間慈善活動団体(ビルゲイツ財団等)による開発分野への拠出額は、米国の次に大きいことが分かった。日本の「グローバルヘルス戦略」で掲げるUHC達成に向けて日本の存在感を発揮するためには、国際保健分野への拠出金に関して省庁間を超えた集中投資が重要であると考えられた。
藤田分担班において、医療製品の国際展開の7つのステップに基づき日本企業の抱える課題や存在する支援の状況を分析した結果、次の3点が明らかになった。①企業の国際展開戦略づくりに関する支援が不足している、②支援団体と企業の効果的な連携が重要であり、さらに促進すべきである、③国際展開後の保健医療サービス提供体制の整備も必要な人々へ医療製品を届けるためのカギとなるが展開に成功した日本企業は自社の強みを持っており、課題を乗り越えて成功した企業の経験から学ぶことは有益である。
若林分担班においては、OECD開発援助委員会加盟国(29か国)における保健分野に関する政府開発資金データベースを用いて、保健分野の国際機関・団体に対する効果的かつ戦略的な拠出と関与方法の提案を行うため、2011年から2019年における保健分野における政府開発援助(ODA)の流れをわかりやすく可視化し、その拠出について検討した。2019年における保健一般に対する拠出おいて、日本は29か国中第3位であり、基礎的保健に対する拠出においては第5位、非感染症疾患に対する拠出に関しては第2位であった。また、民間慈善活動団体(ビルゲイツ財団等)による開発分野への拠出額は、米国の次に大きいことが分かった。日本の「グローバルヘルス戦略」で掲げるUHC達成に向けて日本の存在感を発揮するためには、国際保健分野への拠出金に関して省庁間を超えた集中投資が重要であると考えられた。
藤田分担班において、医療製品の国際展開の7つのステップに基づき日本企業の抱える課題や存在する支援の状況を分析した結果、次の3点が明らかになった。①企業の国際展開戦略づくりに関する支援が不足している、②支援団体と企業の効果的な連携が重要であり、さらに促進すべきである、③国際展開後の保健医療サービス提供体制の整備も必要な人々へ医療製品を届けるためのカギとなるが展開に成功した日本企業は自社の強みを持っており、課題を乗り越えて成功した企業の経験から学ぶことは有益である。
結論
公衆衛生危機に備えた取り組みの強化が求められる中で、GFやWHO等の国際機関に期待される役割は大きくなっている。これらの機関に資金拠出を行い、ガバナンスに関わる我が国の役割も重要性を増しており、存在感を発揮してグローバルヘルス・アーキテクチャーの構築に貢献するためにも、今後も積極的にコミットしていくべきである。また、日本の製品や技術を国際展開していくうえで解決すべき課題はまだまだ多く、戦略的な介入策について引き続き検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2023-08-02
更新日
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