国際会議で効果的な介入を行うための戦略的・効果的な介入手法の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202205001A
報告書区分
総括
研究課題名
国際会議で効果的な介入を行うための戦略的・効果的な介入手法の確立に資する研究
課題番号
20BA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
磯 博康(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際医療協力局)
研究分担者(所属機関)
  • 中谷 比呂樹(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートAPRU高齢化研究ハブ)
  • 明石 秀親(国立国際医療研究センター 国際医療協力局)
  • 坂元 晴香(東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学講座)
  • 梅田 珠実(国立国際医療研究センター 国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター)
  • 勝間 靖(早稲田大学 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科)
  • 細澤 麻里子(国立国際医療研究センター 国際医療協力局 グローバルヘルス政策研究センター)
  • 齋藤 英子(国立国際医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、World Health Organization (世界保健機関)主要会合並びに総会を中心に、グローバルヘルスの今日的課題に関する経緯や、日本及び各国政府の動向を分析したうえで、国際的会議に戦略的に介入し、日本の立場を主張し意思決定に反映させるための手法開発と効果的な教育プログラムの確立を目的とする。
 具体的には、WHO主要会合並びに総会における討議内容や決議から、日本の介入が効果的な分野(強み)と介入しにくい分野(課題)を実証的に分析するとともに、各国のアプローチとの比較を行う(初年度)。その結果を踏まえ、WHO会議において各国の対立が不可避なテーマ等についてケーススタディを行い、日本の立場を効果的に主張するための手法を開発する(2年目)。さらに、諸外国のグローバルヘルス外交にかかる政策研究機関の動向や、それらが有する研修プログラムの情報を収集・分析し、国際保健人材育成のためのグローバルヘルス外交教材を開発し、研修プログラムを確立する(3年目)。本研究の特色・独創的な点は、長年にわたり公衆衛生分野で国内外の人材育成をリードし、我が国の国際保健の政策研究拠点を担う研究代表者が、WHO執行理事会議長の経験者をはじめ、実際に国際会議での交渉経験をもつ分担研究者をそろえ、国際会議のリアルワールドで現実に行われている様々な介入や交渉の情報を入手し活用しつつ、戦略的な分析と実践的な手法開発を行うことである。
研究方法
 本研究は3年計画で、WHO主要会合並びに総会を中心に、グローバルヘルスの今日的課題に関する経緯や、日本及び各国政府の動向を分析し、我が国が国際的な議論に戦略的に介入し、日本の立場を主張し意思決定に反映させるための介入手法、グローバルヘルス外交教材、効果的な教育プログラムを開発する。
結果と考察
 本年度は、ジュネーブ国際・開発研究大学院が出版した「A GUIDE TO GLOBAL HEALTH DIPLOMACY: Better health – improved global solidarity – more equity」を教材化するため、2022年6月から全14回に渡り輪読会を開催し、翻訳監修を行う他、各章のテーマ毎に、背景となった外交交渉の裏事情について、該当する決議文や報告書などから資料提供しながら参加者による議論を行った。
 本年度はさらに、輪読会で抽出された国際保健用語集及び翻訳チェックをベースとして、本研究班の分担研究者が文体や専門用語の解釈を含む全体監修を行い、教材を作成した。本教材は、グローバルヘルス外交がパンデミック条約をはじめとする様々な国際場裏での交渉が活発化している中、最新の動向と国際保健外交用語を統一した上で、グローバルヘルス外交のハンドブックとなるような日本語の実践的教材となることが期待され、さらに今後のグローバルヘルス外交ワークショップにおいても必須教材として活用される予定である。
 国際保健外交ワークショップには、行政(厚生労働省、外務省)、国際協力機構、シンクタンクなどから、国際会議の経験を有する、あるいは参加予定であるが国際会議の経験に乏しい官民の中堅・若手実務者14名が参加した。
 国際保健外交やガバナンスを理解するために、日本とタイの国際保健外交史の講義の後、世界保健総会(WHA)や主要関連会合における決議作成プロセスに関する講義を行った。また、国益の主張と国際益との調和の難しさを理解するために、交渉術に関するノウハウの講義、過去の主要保健議題に基づくケーススタディに関する対面およびオンライン講義を実施した。
 対面式演習では、世界保健総会(WHA)や主要関連会合における決議作成プロセスに関する概要説明の後、実践的なスキル習得のために、本ロールプレイ演習のために用意したWHO執行理事会における架空の議題をテーマに模擬WHA方式で介入の演習を実施した。
 今年度は対面講義・演習を原則としながらも、遠方の講師やオブザーバーも参加できるというオンラインのメリットも活かしたハイブリッド形式によるワークショップを実施した。今年度新たに作成した「医薬品アクセスと価格透明性」をテーマとした演習シナリオは、地政学的変化が顕在化したポストコロナ時代におけるグローバルヘルス外交の実際を体験するにあたり有用な教材となった。本ワークショップのような対面でのロールプレイ演習は、国際会議での暗黙知を共有するために効果的な方法であり、今後も継続して実施していく予定である。

結論
 今年度実施した研究から得られた知見は、今後の教材開発や教育プログラム策定に活かし、国際会議に戦略的に介入して日本の立場を主張し意思決定に反映させる、国益及び国際的な平和を守る人材の育成の一助となるものである。

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202205001B
報告書区分
総合
研究課題名
国際会議で効果的な介入を行うための戦略的・効果的な介入手法の確立に資する研究
課題番号
20BA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
磯 博康(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際医療協力局)
研究分担者(所属機関)
  • 中谷 比呂樹(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートAPRU高齢化研究ハブ)
  • 明石 秀親(国立研究開発法人国際医療研究センター 国際医療協力局)
  • 坂元 晴香(東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学講座 )
  • 梅田 珠実(国立国際医療研究センター 国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター)
  • 勝間 靖(早稲田大学 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科)
  • 細澤 麻里子(国立国際医療研究センター 国際医療協力局 グローバルヘルス政策研究センター)
  • 石塚 彩(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター)
  • 齋藤 英子(国立国際医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の保健分野の国際協力は、G8洞爺湖サミット以来、一貫して保健システム強化やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの主流化を先導してきたことが国際的に高い評価を得ており、我が国の国際保健外交を牽引する国内関係者や専門家の経験が積み重ねられてきている。しかしながら、それらの土台となる知見や国際会議の経験は、必ずしも系統的に分析されて共有可能な形で、若手・中堅の国際保健人材育成に活用されたりするには至っていない。本研究は、国際保健外交及び実務にて経験豊富な研究者及び実務者との連携を取りながら、世界保健機関(WHO)主要会合並びに総会を中心に、グローバルヘルスの今日的課題に関する経緯や、日本及び各国政府の動向を分析したうえで、国際会議に戦略的に介入し、日本の立場を主張し意思決定に反映させるための手法開発と若手・中堅実務者向けの効果的な教育プログラムを確立することを目的とした。
研究方法
<グローバルヘルスの今日的課題の検討及び日本・各国政府の動向分析>
 初年度は、複雑化するグローバルヘルス外交の歴史的経緯を踏まえた上で、WHO主要会合並びに総会における討議内容や決議に関する情報を収集し、日本のグローバルヘルス外交の特徴、課題、将来の展望を抽出した。次年度に実施されたケーススタディ輪読会では、今後日本が保有する技術や政策実績を国際保健課題の解決に活用するにあたり、1)相手国の需要や文化的背景を踏まえた持続可能な形での支援提供、2)民間企業への国際保健市場への参入プロセスの支援を通じた官民連携の促進、3)国際機関での規範設定の場への戦略的な人材拠出、4)政策モニタリングを通した国内外の関係者や国民の共通理解の醸成の必要性が挙げられた。3年度の「グローバルヘルス外交の手引き」の和文翻訳においては、最新のグローバルヘルス外交の動向と国際保健外交用語を反映した実務者必携の書となるよう、日本語での実践的教材を作成した。

<国際会議における戦略的・効果的な介入のための教育プログラム開発>
 本研究の目的を達成するため、本研究班ではロールプレイ演習に向けて、WHO執行理事会における架空の決議案(砂糖税および医薬品のアクセスと価格透明性)や事務局文書、各国対処方針などのバックグラウンド文書を作成した。さらに、決議案を含む会議文書の読解、対処方針の検討、他国との交渉、会議での発言などを、一連のロールプレイを通じて、各国の意見が対立する中、どのように自国の主張を行うかという実践的な演習が可能となるような研修カリキュラムを開発した。そして、本研修プログラムによるグローバルヘルス外交ワークショップに、初年度から3年度まで、行政(厚生労働省、外務省)、国際協力機構、アカデミア、シンクタンク、非政府団体(NGO)、産業界などから、国際会議の経験が少ない官民の中堅・若手実務者が参加した。
結果と考察
 初年度は、WHO主要会合や総会の情報を収集し、日本の介入が効果的な分野と介入しにくい分野を実証的に分析し、分析結果を取り込んだグローバルヘルス外交ワークショップを実施し、その効果を測定した。次年度は、ジョージタウン大学外交ケーススタディ教材の中からグローバルヘルス外交の主要課題に関わる7つのケースを用いた輪読会を行い、日本の強みと課題を分析した。さらに、国際会議で効果的な介入を行うための実践的なスキル習得のために、より実践的なワークショップを開催し、新規に開発した砂糖税についての演習教材を用い、模擬WHO執行理事会方式での介入演習を実施した。3年度は、「A GUIDE TO GLOBAL HEALTH DIPLOMACY」(イローナ・キックブッシュ他)を和文翻訳し、翻訳監修プロセスそのものが国際保健外交を担う若手・中堅の人材育成の機会となるよう、国際保健外交の専門家による解説を交えながら、最新のグローバルヘルス外交についての知見・経験を共有するため、輪読会を開催した。さらにグローバルヘルス外交ワークショップでは、グローバルヘルス外交の概要や外交技術に関する講義に加えて、新規に開発した「医薬品アクセスと価格透明性」についての事例教材を用い、模擬WHO執行理事会の演習を行った。
結論
 本研究期間3年間を通じて開発された教材と研修プログラムを通じ、国際会議に戦略的に介入して日本の立場を主張し意思決定に反映させ、国益及び国際的な平和を守る人材の育成に貢献した。

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202205001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 グローバルヘルス外交ワークショップで作成された研修カリキュラムは、公衆衛生大学院を含むグローバルヘルス人材養成機関においても活用可能であり、令和5年度は、長崎大学大学院プラネタリーヘルス学環の博士課程学生を対象とした「Governance in Global Health」コースにおいて、本研修プログラムと事例教材を用いた授業が開講され、研究班の活動はアカデミアにおいても着実に活用が進んでいる。
臨床的観点からの成果
 グローバルヘルス外交ワークショップで作成された研修カリキュラム及び事例教材一式は、臨床研究に携わる医療従事者にとっても国際的な文脈での意思決定プロセスを学習する貴重なカリキュラムであり、今後国立国際医療研究センター等において臨床研修コースの一環として実施する予定である。
ガイドライン等の開発
 本研究班が和文翻訳を行った「グローバルヘルス外交の手引」は、グローバルヘルス関係者の教材として広く役立てることを目的に開発された。令和5年度以降のより発展したワークショップでは必須教材として用いる他、関連する学会やウェブサイトを通じて広く啓発を行っていく予定である。
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
 本研究班が和文翻訳を行った「グローバルヘルス外交の手引」は、2023年7月に開催予定の日本国際保健医療学会東日本会及び10月の日本国際保健医療学会において書籍出展し、広く国際保健関係者への研究広報を行う予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
2023年日本国際保健医療学会東日本会および日本国際保健医療学会において啓発活動を行う予定。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202205001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,555円
人件費・謝金 586,000円
旅費 650円
その他 2,481,795円
間接経費 923,000円
合計 4,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-12-26
更新日
-