文献情報
文献番号
200905013A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-Ⅰの母子感染予防に関する研究
課題番号
H21-特別・指定-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 滋(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 増崎 英明(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 吉永 光裕(鹿児島大学 医学部)
- 神奈木 真理(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 嶽崎 俊郎(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
- 大場 隆(熊本大学 大学院医学薬学研究部)
- 松田 秀雄(防衛医科大学校 病院産科婦人科)
- 久保 隆彦(国立成育医療センター 周産期診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-I関連脊髄症(HAM)の起因ウイルスとされるHTLV-Iについては、キャリアの率が高い一部の地域等において、母乳感染を防止するため、キャリアの母親から出生した児に対し、断乳、短期間母乳育児などの対策が実施されてきたが、最近になって、全国的に広くキャリアが分布する可能性が報告され、HTLV-I対策として、国内の全ての妊婦に対してHTLV-I抗体検査を実施し、母子感染予防を講じることを検討すべきといった意見も出されている。しかし、HTLV-Iの母子感染対策の在り方について専門家間でコンセンサスが形成されている状況にないため、本研究においては、これまでの科学的知見を踏まえ、費用対効果や地域の実情等も考慮した、適切なHTLV-I母子保健対策システムを構築することを目的とした。
研究方法
全国での母子感染対策の現状と、予防対策について後方視的に調査し、母子感染防止事業の有効性について、現在と20年前で比較し検討した。併せて、全国の一次産科医療機関を対象にアンケートを実施し、これらの知見を踏まえ、今後の母子感染対策のスキームを確立した。
結果と考察
重松班以降のHTLV-I母子感染の成績をまとめると、4ヶ月以上の長期母乳哺育では17.7%の母子感染が生じ、人工哺育では3.3%の母子感染率に留まった。症例数は十分ではないが、3ヶ月以下の母乳哺育や凍結母乳哺育での母子感染率は人工哺乳と同等であった。一次スクリーニングを行なった後、陽性者にWestern blot法を行ない確認検査をした結果を集計するとnon-endemic areaでは偽陽性率が高いことが判明した。また判定保留者も15-20%程度存在した。そこで妊婦に対するHTLV-Iスクリーニング法の進め方をフローチャートにした。HTLV-Iキャリアと診断した妊婦に対する結果の説明についても実例を提示し、HTLV-Iキャリア指導のための手引きも作成した。さらにHTLV-I検査を全妊婦に行なった際の費用対効果についても算定した。産科診療施設でHTLV-Iスクリーニングがスムーズに運用できるようにパンフレットも作成し、臨床現場で活用してもらえるようにした。
結論
HTLV-Iの母子感染予防策につき提言をまとめ、今後の日本全国におけるHTLV-I母子感染を可能な限り減少させるための方向性をとりまとめた。
公開日・更新日
公開日
2010-05-26
更新日
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