国民が安心してゲノム医療を受けるための社会実現に向けた倫理社会的課題抽出と社会環境整備

文献情報

文献番号
202204001A
報告書区分
総括
研究課題名
国民が安心してゲノム医療を受けるための社会実現に向けた倫理社会的課題抽出と社会環境整備
課題番号
20AD1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小杉 眞司(国立大学法人京都大学 大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 篤(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 井本 逸勢(愛知県がんセンター(研究所)分子遺伝学分野)
  • 金井 雅史(京都大学医学部附属病院 腫瘍内科)
  • 川目 裕(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 児玉 聡(京都大学 大学院文学研究科)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経医療研究センター メディカル・ゲノムセンター)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
  • 竹之内(坂本) 沙弥香(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 太宰 牧子(一般社団法人ゲノム医療当事者団体連合会)
  • 難波 栄二(国立大学法人鳥取大学 研究推進機構)
  • 西垣 昌和(国際医療福祉大学大学院 遺伝カウンセリング分野)
  • 服部 高宏(京都大学 法学系(大学院法学研究科))
  • 平沢 晃(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科  )
  • 三宅 秀彦(お茶の水女子大学 基幹研究院)
  • 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
  • 武藤 学(京都大学 医学研究科)
  • 山田 崇弘(北海道大学大学院医学研究科総合女性医療システム学講座)
  • 吉田 雅幸(国立大学法人東京医科歯科大学 統合研究機構)
  • 渡邉 淳(国立大学法人 金沢大学附属病院)
  • 横野 恵(早稲田大学 社会科学総合学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年度発表したELSIガイドライン後の継続的な検討のための基盤整備として、患者・医療者関係の課題以外に、一般市民の遺伝・ゲノムに関する知識の普及啓発や教育の充実などの在り方や具体的な方策について検討する
研究方法
A:がん遺伝子パネル検査・二次的所見(SF)開示について
1)がん遺伝子パネル検査のSF開示プロセスに関する現状調査
2)Actionability Summary Report(ASR)日本版の継続的作成
3)リキッドバイオプシーにおけるSF評価妥当性の検討
B:遺伝性難病診療・網羅的解析 
・遺伝性難病網羅的解析に伴うSFの取り扱いに関する現状調査
・網羅的解析解説動画作成
C:双方向遺伝リテラシー・ゲノム医療の現場で重要な患者・市民参画(PPI)体制の整備
1)遺伝リテラシー教材の評価基準の検討
2)ゲノム交流会の実施
3)PPI研究の実施
D:遺伝子例外主義からの脱却―診療録における遺伝情報の扱いに関する検討:医学会ガイドライン改定前後での遺伝情報取り扱いの変化
E:遺伝差別・法整備:遺伝情報差別の実態および法制度等のあり方についての調査
結果と考察
A:がん遺伝子パネル検査・SF開示について
1) がん遺伝子パネル検査のSF開示に関する現状調査を実施。2020年調査に比べSF開示率、確認検査実施率、GPV確定率いずれも増加していた。
2) SFを患者に開示するかの意思決定には、該当疾患のActionabilityが重要となる。 ASR日本版を継続的に作成し、これまでに91遺伝子41疾患についてを作成した。
3) Guardant360® を受けた106例の患者を対象に検討を行い、リキッドバイオプシー検査実施時における SF 対応のフローチャートの妥当性を検証した。
B:遺伝性難病診療・網羅的解析 
難病領域におけるSF開示について、出検施設を対象とした実態調査を行った。開示対象決定の困難感あり群では有意に他施設とのカンファレンスで検討し、小杉班のガイドラインを参考にしていた。
網羅的解析動画作成を継続して実施した。第5回のゲノム交流会で「ゲノム情報から診断を目指す:全エクソーム検査とは」というタイトルで5月に実施、β版を参加者に視聴してもらいテーマの理解に繋げた。
C:双方向遺伝リテラシー・ゲノム医療の現場で重要なPPI体制の整備
1)遺伝教育のコンテンツ評価指標案を作成した。コンテンツ作成者が記載する「基本情報」と明確かつ公正な評価をめざした「コンテンツ確認シート」で2部構成とした。
2)ゲノム交流会: 今年度は、市民のゲノム医療に関わる正しい理解と、情報交換、共有の場、研究事業への積極的なPPIを目指し、過年度より継続してゲノム交流会を開催した。第6回目は9月に「遺伝情報・ゲノム情報による社会的不利益や差別の防止」〜不安に感じることを一緒に考えてみませんか〜をテーマに実施した。第7回は12月に実施した。「がんゲノム医療」〜バーチャルファミリーロールプレイングに参加しませんか?〜と題し、過去にない形式で交流会を実施した。
D:遺伝子例外主義からの脱却―診療録における遺伝情報の扱いに関する検討
日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン(2022年)」が改訂された。本調査は、2021年3月、2023年3月の計2回、同ガイドライン前後での比較を行った。2021年の調査では、遺伝カウンセリング記録について、約60%がアクセス制限を設ける等、情報共有が妨げられていた。2023年の調査では、アクセス制限を設けている施設が25%に減少していた。遺伝情報を共有することによるデメリットに関するコメントはほとんどなく、アクセス制限や匿名化が取違えや検査の2重オーダーなどのインシデントにつながるリスクについてのコメントがあり、遺伝情報を共有しないことによるデメリットを感じている医療機関が増加していた。
E:遺伝差別・法整備
昨年度に引き続き、遺伝情報差別の実態および法制度等のあり方について調査を行い最新動向の把握に努めた。
結論
A.昨年度策定した、がん遺伝子パネル検査・SF開示推奨度に関する研究とB.遺伝性難病の診療・網羅的解析に関する研究を進めることにより、「ゲノム医療におけるコミュニケーションプロセスに関するガイドライン」について、現場での状況を明らかとした。
また、それを支える社会システムの整備として、D.遺伝子例外主義からの脱却に関する研究とE.遺伝差別・法整備に関する研究を進めた。
さらに、市民の積極的な参加と正しい理解のために、双方向遺伝リテラシーとPPI体制整備に関する研究を実施した。特に「ゲノム交流会」が有意義であった。これらは、ガイドライン作成後の継続的な議論が行える体制の構築に繋がっている。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202204001B
報告書区分
総合
研究課題名
国民が安心してゲノム医療を受けるための社会実現に向けた倫理社会的課題抽出と社会環境整備
課題番号
20AD1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小杉 眞司(国立大学法人京都大学 大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 篤(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 井本 逸勢(愛知県がんセンター(研究所)分子遺伝学分野)
  • 金井 雅史(国立大学法人京都大学医学部附属病院 腫瘍内科)
  • 川目 裕(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 児玉 聡(京都大学 大学院文学研究科)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経医療研究センター・メディカルゲノムセンター)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
  • 竹之内(坂本) 沙弥香(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 太宰 牧子(一般社団法人ゲノム医療当事者団体連合会)
  • 難波 栄二(国立大学法人鳥取大学 研究推進機構)
  • 西垣 昌和(国際医療福祉大学大学院 遺伝カウンセリング分野)
  • 服部 高宏(京都大学 法学系(大学院法学研究科))
  • 平沢 晃(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科  )
  • 三宅 秀彦(お茶の水女子大学 基幹研究院)
  • 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
  • 武藤 学(京都大学 医学研究科)
  • 山田 崇弘(北海道大学大学院医学研究科総合女性医療システム学講座)
  • 吉田 雅幸(国立大学法人東京医科歯科大学 統合研究機構)
  • 渡邉 淳(国立大学法人 金沢大学附属病院)
  • 横野 恵(早稲田大学 社会科学総合学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
検査として網羅的遺伝子解析を実施する場合、医療者が患者・家族に情報伝達をする際の留意事項や説明事項を明確化する提言として、「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」(AMED小杉班、2017-19年度)で「ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言―その1:がん遺伝子パネル検査を中心に。その2:次世代シークエンサーを用いた生殖細胞系列網羅的遺伝学的検査における具体的方針」をまとめた。この提言は、適切なゲノム情報の取扱い、二次的所見(SF)へ対応や遺伝カウンセリング体制の強化なども含むものである。
本研究では、これらの提言を、患者、市民、倫理社会学者、法律家も含めた検討によってさらにブラッシュアップしたELSIガイドラインに改訂、知識の普及啓発などについて具体的な方策を同時に検討する。
研究方法
・ゲノム医療推進に伴うELSIの整理及びゲノム医療推進のためのELSIガイドラインの作成(2020―21年度)
・ガイドライン作成後の継続的な議論が行える体制の構築(2021―22年度)
結果と考察
A:がん遺伝子パネル検査・SF開示について
AMED小杉班提言その1後1年の2019年には、保険収載されたFoundationOne CDxと NCCオンコパネルシステムの実施状況、SFの開示状況と問題点について、がんゲノム医療実施病院に対しアンケートを実施。それらに基づき、2021年には、提言その1)を改訂、「ゲノム医療におけるコミュニケーションプロセスに関するガイドライン―その1:がんゲノム検査を中心に」を発表(2021年9月)、双方向性を重視した。さらに、「がん遺伝子パネル検査 二次的所見患者開示推奨度別リスト」を改訂、Ver3.1を公開。腫瘍組織のみを用いた検査でのSF疑いの確認検査必要性を解釈するフローチャートついて、運用指針を改定、ガイダンスを作成。「がん遺伝子パネル検査二次的所見検討資料 Ver 1.0」 (2021年8月)として公開。
SF開示の意思決定には、該当疾患のActionabilityが重要となる。 ASR日本版を継続的に作成、91遺伝子41疾患について作成。
「血中循環腫瘍 DNAを対象としたがん遺伝子パネル検査における二次的所見の生殖細胞系列確認検査運用指針 Ver 1」と同ガイダンスを策定、自験例をもとに妥当性を検証。
B:遺伝性難病診療・網羅的解析 
難病領域におけるSF開示について実態調査を実施。開示対象決定困難感あり群では有意に他施設とのカンファレンスで検討し、小杉班ガイドラインを参考にしていた。
網羅的解析動画作成を継続。第5回ゲノム交流会で「ゲノム情報から診断を目指す:全エクソーム検査とは」というタイトルで実施、β版を視聴してもらい理解に繋げた。
C:双方向遺伝リテラシー・ゲノム医療の現場で重要なPPI体制の整備
1)遺伝教育のコンテンツ評価指標案を作成。コンテンツ作成者が記載する「基本情報」と明確かつ公正な評価をめざした「コンテンツ確認シート」で2部構成とした。
2)ゲノム交流会:市民のゲノム医療に関わる正しい理解と、情報交換、共有の場、研究事業への積極的なPPIを目指し、2021年度より継続してゲノム交流会を開催した。
D:遺伝子例外主義からの脱却―診療録における遺伝情報の扱いに関する検討
日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン(2022年)」が改訂された。2021年3月、2023年3月、改定前後での比較を実施。2021年の調査では、遺伝カウンセリング記録について、約60%がアクセス制限を設ける等、情報共有が妨げられていた。2023年の調査では、アクセス制限を設けている施設が25%に減少。遺伝情報を共有することによるデメリットに関するコメントはほとんどなく、アクセス制限や匿名化が取違えや検査の2重オーダーなどのインシデントにつながるリスクについてのコメントがあり、共有しないことによるデメリットを感じている医療機関が増加していた。
E:遺伝差別・法整備
遺伝情報差別の実態および法制度等のあり方について調査を行い最新動向の把握に努めた。
結論
ゲノム医療の現場における体制整備のための提言を改定して、A.がん遺伝子パネル検査・二次的所見開示推奨度に関する研究とB.遺伝性難病の診療・網羅的解析に関する研究を進め、「ゲノム医療におけるコミュニケーションプロセスに関するガイドライン」が策定した。支える社会システムの整備として、D.遺伝子例外主義からの脱却に関する研究とE.遺伝差別・法整備に関する研究を進めた。
市民の積極的な参加のために、C.双方向遺伝リテラシーとPPI体制整備に関する研究を実施。特に「ゲノム交流会」が有意義であった。これらは、ガイドライン作成後の継続的な議論が行える体制の構築に繋がっている。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202204001C

収支報告書

文献番号
202204001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 237,399円
人件費・謝金 642,359円
旅費 743,850円
その他 1,838,392円
間接経費 1,038,000円
合計 4,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-02-29
更新日
-