健康分野でのデータブリッジングシステムの国際標準化

文献情報

文献番号
202203022A
報告書区分
総括
研究課題名
健康分野でのデータブリッジングシステムの国際標準化
課題番号
22AC5004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 純(医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所)
  • 水口 賢司(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト)
  • 南里 妃名子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 身体活動研究部)
  • 寺内 淳(一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアム 運営委員会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
92,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、統合イノベーション戦略2022に記載の「知のフロンティアを開拓し価値創造の源泉となる研究力の強化」にある「(2)新たな研究システムの構築(オープンサイエンスとデータ駆動型研究等の推進)」について、マイクロバイオームのデータを例に、収集したデータを共有し、最大限利活用するためのデータ連係の基盤を構築するものであり、データ駆動型研究の加速化に貢献すると期待される。さらに、本事業で構築するシステムが「戦略的に取り組むべき基盤技術(1)AI技術」においても活用可能となると予想され、同時に「戦略的に取り組むべき応用分野(5)健康・医療」への展開も可能となる。
研究方法
健康に対する意識が高まる中、腸内細菌に代表されるマイクロバイオームは健康に影響を与える重要な因子として注目されている。腸内細菌のゲノムデータの取得においては、便の回収から遺伝子の抽出、増幅、解読などゲノム情報を得るまでの手法がそれぞれ複数あり、また手法の違いが得られるデータに影響を与えることが分かっている。本事業では、健康との関連が注目されている腸内細菌を例に、異なる手法で取得したデータを同じデータリソースとして有効活用できるようデータ変換によりブリッジングするシステムを開発し、標準化する。
結果と考察
研究体制の構築について、医薬基盤・健康・栄養研究所と日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC)に加えて、倫理計画の策定など、すでに腸内細菌研究を実施している他研究機関(早稲田大学、北海道大学、九州大学)を含めた研究体制を構築した。その中で、データ連携のための研究体制の構築において、研究機関間の研究倫理の審査体制や認識の違いが大きな課題となる可能性が明らかになった。
ブリッジングデータの取得について、20名の被験者から異なる4つの手法にて糞便サンプルを複数の機関において収集・分析し、データ連携の検証と最適化のためのブリッジングデータを取得した。
本プロジェクト専任のデータブリッジングシステム開発チームを中心とした知財・標準化検討委員会において、データブリッジングの標準化に向けた検討会を開催し、アプリケーションの開発コンセプトを「すべてのコホートがデータ連携したデータベースではなく、個々のコホートのユーザーが任意に連携先を選択できるシステムとする」と決定し、本方針に基づきユーザーフレキシビリティの高いアプリケーション開発を進めた。初版システムとして、複数拠点のデータ受け入れる環境として、Webページで作図、統計解析、クラスタリング、ブリッジング等の機能を選択してボタンを押すと各処理が実行される「初心者向け環境」と、Jupyter notebookで高い自由度でデータの前処理とブラッシュアップを行える「アドバンスド環境」の二つを構築した。異なる分析手法で取得した菌叢データを用いた検証において、いずれかの被験者において0.1%以上の存在比がある菌を全て用いてお互いの菌数相互予測モデルをXGBoost(default status)にて作成したところ、良好な検証結果を得た(RMSE値≦1.0)。
結論
本研究においてブリッジングシステムを開発し、標準化することで、異なる手法で取得したマイクロバイオームデータの相互利用が可能となり、データ連携や最大限の有効活用、強固なエビデンスの創出、各種製品開発・産業創出の促進へつながると期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202203022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
データブリッジングシステムの開発・標準化のため、各手法による解析結果への影響を把握し、実行可能性を検証するとともに、ユーザーフレキシビリティの高いアプリケーション開発に着手し、初心者向け環境とアドバンスド環境を構築、初版システムを開発した。本システムにより、データ連携・有効活用が可能となり、データ駆動型研究の加速化に貢献できると期待する。
臨床的観点からの成果
腸内細菌などのマイクロバイオームは健康に影響を与える重要因子として注目されていることから、マイクロバイオーム領域をはじめとする健康・医療関連データのビッグデータ化ならびに健康に良い食の解明・開発とオーダーメイドな提供システムの開発などを通じて、ヘルスケア産業の発展、市場拡大へつながると期待できる。
ガイドライン等の開発
知財・標準化検討委員会におけるデータブリッジングの標準化に向けた検討会やフィージビリティスタディを実施し、研究倫理などデータ連携を進める上での課題が明らかになっており、将来的に医療・ヘルスケア領域におけるビッグデータの利活用や統合解析に関するガイドライン作成などにおいて、有用な情報になると予想される。
その他行政的観点からの成果
本事業でデータ連携システムが開発・標準化されることで、健康・医療関連データのビッグデータ化、健康に良い食の解明・開発とオーダーメイドな提供システムの開発、ヘルスケア産業の発展などを通じて、国民の健康増進へとつながると期待される。
その他のインパクト
本事業ではマイクロバイオームに主眼をおいて標準化を進めているが、本システムは他の領域でも、測定方法の統一化が困難なデータ間の比較やすでに複数の手法にて取得されているデータ連携に資する可能性等が期待されることから、今後、幅広い研究領域へ波及することが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sawane K, Hosomi K, Park J, et al
Identification of human gut microbiome associated with enterolignan production.
Microorganisms , 10 (11) , 2169-2169  (2022)
10.3390/microorganisms10112169
原著論文2
Mohsen A, Chen YA, Osorio RSA, et al
Snaq: a dynamic snakemake pipeline for microbiome data analysis with QIIME2
Front Bioinform , 2 (-) , 893933-893933  (2022)
10.3389/fbinf.2022.893933
原著論文3
Hosomi K, Saito M, Park J,et al
Oral administration of Blautia wexlerae ameliorates obesity and type 2 diabetes via metabolic remodeling of the gut microbiota.
Nat Commun , 13 (1) , 4477-4477  (2022)
10.1038/s41467-022-32015-7
原著論文4
Park J, Hosomi K, Kawashima H,et al
Dietary vitamin B1 intake influences gut microbial community and the consequent production of short-chain fatty acids.
Nutrients , 14 (10) , 2078-2078  (2022)
10.3390/nu14102078
原著論文5
Otoshi T, Nagano T, Park J,et al
The gut microbiome as a biomarker of cancer progression among female never-smokers with lung adenocarcinoma
AnticancerRes , 42 (3) , 1589-1598  (2022)
10.21873/anticanres.15633
原著論文6
Ikubo Y, Sanada T, Hosomi K,ei al
Altered gut microbiota and its association with inflammation in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension: a single-center observational study in Japan.
BMC Pulmonary Medicine , 22 (1) , 138-138  (2022)
10.1186/s12890-022-01932-0
原著論文7
Yoshimura E, Hamada Y, Hatanaka M,et al
Relationship between intra-individual variability in nutrition-related lifestyle behaviors and blood glucose outcomes under free-living conditions in adults without type 2 diabetes.
Diabetes Research and Clinical Practice , 196 (-) , 110231-110231  (2023)
10.1016/j.diabres.2022.110231

公開日・更新日

公開日
2023-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
202203022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
120,000,000円
(2)補助金確定額
118,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,000,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 72,308,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 18,000,000円
間接経費 27,692,000円
合計 118,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-02-29
更新日
-