糖尿病個別化予防を加速するマイクロバイオーム解析AIの開発

文献情報

文献番号
202203020A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病個別化予防を加速するマイクロバイオーム解析AIの開発
課題番号
22AC5002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 純(医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所)
  • 水口 賢司(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト)
  • 小野 玲(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部)
  • 南里 妃名子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 身体活動研究部)
  • 竹山 春子(早稲田大学 先進理工学部生命医科学科)
  • 小川 順(京都大学 農学研究科)
  • 宮地 元彦(早稲田大学 スポーツ科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
262,780,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合イノベーション戦略2021【戦略的に取り組むべき応用分野「(5)健康・医療」】に示された「<新産業創出及び国際展開>公的保険外のヘルスケア産業の促進等のための健康経営の推進、地域・職域連携の推進、個人の健康づくりへの取組促進などを行う。」について「マイクロバイオームと健康」という観点からアプローチするものである。また、本研究において構築するシステムが、【戦略的に取り組むべき基盤技術「(1)AI技術」「(2) バイオテクノロジー」】においても活用可能となると期待される。
研究方法
日本人マイクロバイオームデータベースや統合解析プラットフォームなどの研究基盤を活用し、新規サンプルの収集、高機能なシングルセルメタゲノム解析、超臨界質量分析やラマン分析などによる新規メタボローム解析といったより深化した解析を進める。同時に、得られた情報のデータベースへの格納と解析プラットフォームの高度化を進めることにより、糖尿病の予防・改善につながる有用菌や代謝物の解析やそれらに関連する食事や生活習慣などの解明を進める。さらに有用菌や有用代謝物の生産システムを確立し、動物モデルでのメカニズム解明を進める。これら一連の研究により、糖尿病の個別化/層別化予防のための公開データベースならびに人工知能の機能強化を図ると共に、機能性食品や診断システムの開発などを通じ、ヘルスケア産業の発展に貢献する。
結果と考察
有用微生物と代謝物の探索と作用メカニズム解明について、健常人と糖尿病患者の腸内細菌データから見出した抗肥満や糖尿病改善が期待できるブラウティア菌について、動物モデルなどを用いた検証とメタボローム解析などによる実効物質の同定とメカニズムの解明を行った。シングルセルゲノム解析から、個人間・個人内におけるブラウティア菌のゲノム多様性を確認した。ブラウティア菌を増やす食材として、横断データの解析から、βグルカンなどの食物繊維を豊富に含む大麦の摂取とブラウティア菌の関連を明らかにした。
1個人を対象とした1年間の縦断データの解析から、たんぱく質や野菜の追加摂取介入が腸内細菌叢の多様性や糞便の性状を、再現性を持って変化させることが明らかとなり、肥満や糖尿病の発症や改善に関連する複数の菌の有意な改善も観察され、腸内細菌叢をターゲットとした個別介入の有効性を示す重要なエビデンスを得た。
健康効果が期待される食材の有効性を予測するAIシステムの開発について、大麦と脂質異常症との関連について、レスポンダーとノン・レスポンダーを予測する機械学習AIシステムを構築した。同様に、腸内細菌データによりアマニポリフェノールの代謝能を予測・判別可能な機械学習AIシステムを構築した
ポストバイオティクスの生産システムについて、これまで微生物生産が難しかった有用脂肪酸(本事業により同定したαKetoAなど)生産に関わる微生物を見出し、本反応に関わる酵素の特定、異種発現に成功した。これにより複数の有用代謝物の生産が可能となった。脂肪酸代謝物(ポストバイオティクス)を標品として分析システムを構築し、Noster株式会社と共同でメタボローム解析サービスを開発した。有用脂肪酸を納豆菌が生産することを見いだし、本菌を活用する機能性代謝物代替食品の開発を行った。
新規サンプル・情報の収集ならびに人工知能開発に向けたデータとシステムの強化について、生活習慣などのメタデータの付随したマイクロバイオームデータを約2,200名分追加し、データベースを9千人規模に拡充した(うち約8,000検体のショットガンシーケンスデータを取得済み)。統合解析プラットフォームMANTAなどの情報解析基盤を高度化し、AI開発に用いるデータセットを容易に作成できるようデータ検索機能を強化、多数の共同研究先からアクセスできるようユーザー管理機能を搭載した。
民間研究開発投資のさらなる誘発ならびにコホート・データ連携について、マイクロバイオームをNIBIOHN JMDデータベースへ格納し、約1,000名の腸内細菌データと約1,600のデータ項目をフリー公開し、データベースの利活用やデータ連携を促進した。有用代謝物を産生する発酵食品等を見出し、効果的に利用するためのレシピを検討し、実用化に向けた取組みを加速させた。
結論
本事業で構築した研究基盤は、学術的なエビデンスに基づいた高機能食品やヘルスケア製品の開発において重要な研究基盤であり、さらには糖尿病だけではなく、他の健康状態も対象にした研究基盤へ拡張が期待できる。このように本研究プラットフォームは民間の機能性食品・ヘルスケア関連産業の開発・投資につながる研究基盤として進展が期待できると考えられ、実際に53社と共同研究を実施し、製品開発も進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202203020C

収支報告書

文献番号
202203020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
341,614,000円
(2)補助金確定額
340,989,000円
差引額 [(1)-(2)]
625,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 98,671,094円
人件費・謝金 32,684,119円
旅費 978,464円
その他 129,821,692円
間接経費 78,834,000円
合計 340,989,369円

備考

備考
自己資金 369円

公開日・更新日

公開日
2024-02-29
更新日
-